雇用契約書とは? 記載事項や労働条件通知書との違い、もらえない時の対処法
更新日:2024年07月10日
記事まとめ(要約)
- 雇用契約書とは、企業と労働者の間で労働条件に関する重要事項を明らかにし、労使契約を交わす契約書
- 企業側に法的な作成義務はないため、書面を作成せずに口頭のみの場合も
- 一方で労働条件通知書は、企業から労働者に交付することが義務付けられている
- 労働条件通知書には雇用契約書と同様に労働条件が記載されているが、署名や押印は必要ない
就職・転職のタイミングで、企業から「雇用契約書」を渡されたことがある、という人も多いかもしれません。
一方で、「転職したことはあるが、雇用契約書を交わしたことはない」という人もいるのではないでしょうか。
では、雇用契約書の役割とは一体何でしょう? もらえる場合と、もらえない場合があるのは、なぜ? 雇用契約書の内容や重要性を説明すると共に、確認すべき項目や、もらえない場合にはどうしたら良いのか? など解説します。
雇用契約書とは? 何のためにあるの?
雇用契約書とは、企業(雇用主)側と労働者(被雇用者)側の間で、労働条件に関する重要事項を明らかにし、労使契約を取り交わす契約書です。
労働条件の中には給与や就業場所、時間、業務内容、昇給、退職などの事項が含まれ、企業側と労働者側の双方が合意し、署名捺印(または記名押印)をして締結されます。
企業側に法的な作成義務はないため、書面を作成せずに口頭のみの雇用契約とする場合もあります。ただし、口頭だけでは後々「言った・言わない」などのトラブルになる可能性もあり、書面で渡されることのほうが一般的と言えるでしょう。
労働条件通知書と雇用契約書の違いとは?
人によっては、「転職先で雇用契約書は取り交わさなかったが、労働条件通知書は受け取った」という場合もあるかもしれません。これは、雇用契約書と労働条件通知書の性質に違いがあるためです。
法的な作成義務がない「雇用契約書」と、法的な通知義務がある「労働条件通知書」
前述のとおり、雇用契約書には法的な作成義務がありません。
一方で労働条件通知書には、企業(雇用主)側から労働者(被雇用者)側に交付することが法律上義務付けられている、という点が、この2つの大きな違いです。
労働条件通知書には、雇用契約書と同様に労働条件が記載されていますが、あくまで「通知」することが目的の書面のため、署名や押印は必要ありません。また、労働条件通知書における記載内容について、明示すべき項目が定められているのも特徴の一つです。労働条件通知書と雇用契約書の主な違いについては、以下の対応表を参照ください。
■雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
---|---|---|
記載内容 | 労働条件 | |
役割 | 企業(雇用主)側と労働者(被雇用者)側で、記載内容について合意がなされたことを証明する | 企業(雇用主)側から労働者(被雇用者)側へ、記載内容について通知する |
法的義務 | 法的な作成義務はなし | 法的に交付が義務付けられている |
記載事項の決まり | 定められていない | 定められている |
締結・交付方法 | 企業(雇用主)側と労働者(被雇用者)側の双方にて、署名・捺印をして契約を締結 | 企業(雇用主)側から労働者(被雇用者)側へ、一方的に交付 |
もらうタイミング | 一般的には内定日や入社日 | 法律で「雇用契約を結ぶ時」。 一般的には内定日(=雇用契約が確定した日)、または入社日 |
雇用契約書は、労働条件通知書を兼ねることができる
企業は労働者へ労働条件を通知する義務がある一方で、「雇用契約書」という独立した書類の作成義務があるわけではありません。書式についても法的な定めはないため、役割さえ果たしていれば、「雇用契約書 兼 労働条件通知書」として雇用契約書の中に記載して労働条件通知書を兼ねる、という方法も認められています。
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雇用契約書・労働条件通知書は、いつもらう? もらえない場合は?
では、雇用契約書・労働条件通知書はいつ、どういった形で企業から渡されるのでしょう?
多くの場合、企業との雇用契約が開始する際やその前に、労働条件通知書が交付されます。
具体的に、もらうタイミングや、もらえない場合の対処法を解説します。
もらうタイミング、一般的には入社日や内定時
雇用契約書に関しては法的な決まりはないものの、一般的な渡すタイミングは内定日や入社日が多いようです。
労働条件通知書は「労働契約を締結するタイミング」で渡すこと、と法律で決まっています。これは就職や転職により労働契約を新たに結ぶ際や、契約内容が変更となる際が当てはまるため、以下のようなケースが一般的です。
- 新卒および中途の新入社員: 内定日(=雇用契約が確定した日)または入社日
- 有期雇用の労働者: 契約の更新日
- 無期雇用の労働者: 労働条件の変更があった場合、その変更日
内定承諾前に労働条件を確認したいが、労働条件通知書がもらえない場合には?
労働条件通知書の交付が入社日当日になってしまう場合、転職者は事前に労働条件を吟味する時間が取れないですよね。後々、企業との間で認識の相違に気づいてトラブルになった…… といったことがないよう、内定受諾前に労働条件通知書を交付してもらえるよう、依頼してみることをおすすめします。
以下の例文を参考に、内定をもらったタイミングで問い合わせをしてみると良いでしょう。
■聞き方の例文
- 正式な内定承諾のお返事前に、労働条件を確認させていただきたく、労働条件通知書を書面でいただくことは可能でしょうか?
- 労働条件通知書や雇用契約書など、入社手続きの書類を事前に送っていただけますでしょうか?
労働条件通知書や雇用契約書を事前にもらえない場合は、労働条件についてメールなどで提示してもらえないか依頼しましょう。
労働条件の中でも、就業時間や休日、給与については、企業側と労働者の間で認識の相違が生まれやすい部分です。口頭だけの説明では、後で「言った・言わない」のトラブルにも発展しかねないため、必ず書面でもらえるよう依頼しましょう。
労働条件通知書は、メールやSNSなどでの交付も可能
労働条件通知書は2019年4月から、労働者が了承した場合には、メール・SNSやFAXなどでの交付が可能になりました。その場合、印刷などで出力し、書面化できる形であることが労働基準法によって定められています。
また、どういった形式の交付であっても、明示すべき事項に変更はありません。法的に定められている絶対的明示事項は必ず記載が必要です。
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労働条件通知書で明示されるべき記載項目とは
雇用契約書、労働条件通知書のうち、法令によって記載事項が決められているのは労働条件通知書です。
しかし実際には多くの企業で、この2つの役割を兼ね備えた「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の交付をしています。その場合、労働基準法第15条で義務付けられている「絶対的明示事項」を記載しなければなりません。
また、該当する制度に応じて記載義務が発生する「相対的明示事項」があります。以下で、詳しく見ていきましょう。
絶対的明示事項
法令によって労働条件通知書(雇用契約書を兼ねる場合も)に記載が義務付けられている「絶対的記載事項」は、以下のとおりです。
労働契約の期間
雇用開始日。有期雇用契約の場合は契約終了年月日や契約更新の有無も明記
働く場所・仕事内容
事業所や部署など配属場所、また職種と従事する仕事内容
始業・終業時刻
所定の勤務時間、勤務交替時間、休憩時間、所定労働時間を超す勤務の有無
休日・休暇
週休日数や曜日、有給休暇日数、夏季休暇や年末年始休暇
賃金
給与や報酬の仕組み、具体的な金額、締め日や支払日、支払い方法など
退職
退職に関する事項(解雇の事由含む)、定年制の有無や内容、任意退職に関する扱い
※短時間労働者の場合は、昇給・退職手当・賞与の有無も明記
パートやアルバイト労働者の場合には、上記に加えて以下の記載が必須となります。
- 昇給
- 賞与
- 退職金の有無
- 短期間労働者向けの相談窓口の担当部署名・担当者名など
年代別の確認すべきポイントなど詳しくは法律による労働条件の項目へ
相対的明示事項
以下の相対的明示事項は、企業が該当する制度などを設けている場合のみ、労働条件通知書への記載義務があります。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定・計算・支払の方法
- 退職手当の支払時期
- 臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当、奨励加給、能率手当について
- 最低賃金額
- 労働者に負担させる食費、作業用品など
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練制度
- 災害補償・業務外の傷病扶助制度
- 表彰や制裁の制度
- 休職に関する事項
在宅勤務がある場合に確認しておくと良い項目
近年は、在宅勤務やリモートワークを推奨し、制度として取り入れる企業も増えてきています。
そういった場合、事業所以外で認められる就業場所や出社頻度の決まりがあったり、フレックスタイム制やみなし労働時間制など労働時間制が異なったりする場合があるので、必ず確認しましょう。
また、福利厚生の一環として通信費や文房具などの費用負担をしてくれる場合もあるため、事前に調べておくと良いでしょう。
チェック必須! 雇用契約書・労働条件通知書6つの項目
雇用契約書・労働条件通知書に記載されている労働条件の書き方や形式は、企業によって異なります。最低限の項目のみシンプルに記載されている場合もあれば、給与一つとっても詳細に、昇給や賞与の仕組みまで記載されている場合もあります。
いずれにしても最低限確認しておきたいのは、応募時の求人情報や面接時に伝えられた情報と相違がないかどうか、という点。
特にどういった項目をチェックすべきか、具体的な例を6つ挙げて説明します。
契約期間(入社日)
在職中に転職活動をしている人の場合、特にトラブルになりやすいのが入社日です。労働条件通知書の記載を、必ず確認しましょう。
なぜなら、在職中の企業での引き継ぎや退職日の交渉などもあり、必ずしも転職先企業の希望どおりの日程で就業開始ができない可能性があるためです。
提示された入社日が近づけば近づくほど調整は難しくなるうえ、在職中の企業、転職先企業の両方へ迷惑を掛けることにもなりかねません。なるべく早い段階で、現実的な入社日の合意ができるようにしましょう。
就業場所
求人情報や面接の段階で転勤の可能性について言及されている場合には、就業場所も必ず確認したい事項の一つです。入社後すぐに転居が必要で予想外にバタバタしてしまう、といったケースも想定できるため、最短どのくらいで転勤の可能性があるのか、頻度や期間はどのくらいなのか、事前に確認しておくことがおすすめです。
賃金
賃金については、月給制なのか年俸制なのか、基本給はいくらなのか、明示されているはずです。加えて確認しておくと安心なのは、歩合や手当、インセンティブなどの支給条件です。配属部署やポジションによっては手当が満額支給されない場合などもあるため、注意しておくと良いでしょう。
更に賞与については、労働条件通知書への記載義務は「有無」だけです。支給条件についての記載がない場合には、確認してみましょう。
想定残業時間
残業時間に関しても、労働条件通知書に記載が義務付けられているのは「有無」のみです。法律上、時間外労働の上限は「原則として⽉45時間・年360時間」と定められています。ただし、企業側が36協定の締結・届出を行っていて「臨時的な特別の事情がある」と労使が合意する場合には、これを超えることも可能になります。
また「みなし残業代」が給与に含まれている場合などもありますので、残業代の扱いが定かではない場合には、確認したほうが良いでしょう。
休日
休日についても、認識の相違がないよう読み込みましょう。勘違いされやすい例として、「週休2日制」と「完全週休2日制」の記載があります。「週休2日制」は、1年を通じて1カ月に1回以上、週2日の休日が取得できることを意味し、「完全週休2日制」の場合には、毎週2日の休みが約束されることを意味します。
いずれの場合でも、土日や祝日が休日になるかどうかなど含め、休日の扱いはしっかり確かめておくほうが安心でしょう。
退職に関する事項
入社する際に退職について確認するなんて…… と思うかもしれませんが、定年まで働くつもりでも退職のタイミングは必ず全員に訪れます。一通り目を通しておきましょう。
主に着目すべきなのは、定年制度はもちろん、継続雇用制度の有無や自己都合で辞める場合のルール、解雇事由などです。
特に転職などの自己都合で退職する際、調整に手間どりがちなのが、退職日の決定です。法的には「2週間前までの届出」で退職することが認められていますが、後任の手配や採用、業務の引き継ぎを鑑みて「30日前までの届出」などを就業規則で定めているところも多くあります。
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労働条件通知書の内容を変更したい…… 交渉の仕方やタイミングとは
労働条件通知書や雇用契約書に記載された労働条件に納得ができない、変更を申し出たい、という場合には、交渉することも可能です。
ただし、入社し就業を始めてしまった後で条件を変えるのは難しいため、交渉の必要がある場合は労働条件通知書が渡されたタイミングで、速やかに行いましょう。
特に以下のように、もともと提示された条件と一致していない場合は要注意です。なるべく早く、企業側に相談するのがベストです。
- 求人票に記載されていた労働条件と合致していない内容がある
- 応募・面接段階で聞いたり、合意したりした内容と異なる記述がある
- 重要な条件について、曖昧な言葉や分かりにくい表現があり、意味が定かではない(「標準的な範囲で」「……と想定される」など)
応募時に提示されていた条件と労働条件通知書に記載の内容が一致している場合には、自己都合による変更の申し出となります。育児や介護など、相応の理由を企業側にきちんと説明したうえで、変更を依頼してみてください。
勤務日数や時間、休日に関する交渉で、変更によって勤務日数・時間が少なくなる場合は、賃金にも影響する可能性があることにも留意しましょう。
「給与額に納得できない」といった理由の場合でも交渉することはもちろん可能ですが、ただ単に「給与を上げてほしい」と言うだけでは評価を下げてしまうおそれもあります。入社意欲の高さや、即戦力となる知識・経験を持ち事業に貢献できることを伝えたうえで検討を依頼するなど、具体性を持たせることがポイントです。
雇用契約書・労働条件通知書に関する疑問やトラブル、対処方法
雇用契約書・労働条件通知書とは何か、記載事項や見るべきポイントなどが分かったところで、そのほかの疑問や、労働条件に関連したトラブルがあった際の対応方法などを紹介します。
転職先の企業で雇用契約書の作成がない場合には?
雇用契約書に関しては前述のとおり、企業に法的な作成義務はありません。
そのため、転職先の企業から「雇用契約書はない」と言われる可能性もあり得ます。そういった場合には、労働条件は労働条件通知書で確認しましょう。労働条件通知書の交付は法的に義務付けられていますので、企業側に「渡さない」という選択肢は原則的にはありません。
雇用契約書や労働条件通知書が手元にない。契約条件を確認するには?
雇用契約書や労働条件通知書を受け取っていたのに、なくしてしまって確認ができない、という場合には、内定通知書や採用通知書などに労働条件が記載されているケースもあるため、確認してみましょう。該当する内容が見つからない場合には、正直に企業側に打ち明け、相談することをおすすめします。
企業によっては、転職者に適用される労働条件を説明したうえで「就業規則」を渡し、労働条件の通知とする場合もあります。
雇用契約書と就業規則で内容が違う。どちらの効力が強い?
雇用契約書に記載された内容と、就業規則の内容が異なる、という場合もあり得ます。その場合には、雇用契約書よりも就業規則のほうが強い効力を発揮します。これは、労働契約法12条に定められています。
例えば、雇用契約書には「試用期間は3カ月」と記載されているが、就業規則では「試用期間は1カ月」と書かれている場合、「試用期間は1カ月」が有効となります。転勤・残業の有無や手当などの支払い条件についても基本的に同様です。
例外的に、従業員に有利なほうが優先され、就業規則の内容よりも雇用契約書に記載の内容が有効となる場合もあります。例えば時給の表記について、就業規則よりも雇用契約書のほうがより高い金額を記載している場合には、好条件である雇用契約書が優先されます。
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【まとめ】雇用契約書は、企業と転職者間のマッチングを確認するためのもの
雇用契約書とは、転職者と転職者を受け入れる側の企業が働く条件について合意し、言うなればそのマッチングを確認するための契約書です。同じ労働条件に合意することで、お互いにとって気持ちの良いスタートを切ることができるはずです。逆に、疑問や不満を残したまま内定を承諾して働き始めてしまうと、後々「ミスマッチだった」という結果を招きかねません。
不明点があったり、事前に提示されていた条件と異なる、あるいは著しく自分の希望と相違がある場合には、早めに企業側へ相談・交渉するようにしましょう。そのほうが、双方にとって幸せな結果になるはずですよ。
マイナビ転職 編集部
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