第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.119ブロガー/作家 はあちゅう
理想のキャラで人生変える
Heroes File Vol.119
掲載日:2014/8/1
大学時代から「はあちゅう」の愛称で知られるカリスマブロガー。現在はITベンチャー企業に所属し、動画を活用した新事業に携わりながら個人として、ブログだけでなく作家として執筆や講演活動にも精力的に取り組んでいる。でもブログを始めるまでは自分に自信がなく、人と比べては落ち込んでばかり。コンプレックスの塊だったそうだ。
Profile
本名・伊藤春香。1986年神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。在学中、ブログ「はあちゅう主義。」を始める。2009年に(株)電通へ入社し、11年にトレンダーズ(株)へ転職。主な著書「自分の強みをつくる」「恋愛炎上主義。」など。幻冬舎文庫「わたしは、なぜタダで70日間世界一周できたのか?」が14年8月5日(火)に発売予定。
殻を破るため、自ら仕掛けた「大学デビュー」
ブロガーであり作家。現在はITベンチャー企業のトレンダーズに勤める会社員でもある。ブログには美容や美食、旅行、さまざまなジャンルの人との交流など華やかな日常がアップされ、はたから見れば公私共に充実した、まさに「リア充」そのものの28歳だ。
「でも、18歳までの私の人生は真っ黒(笑)。劣等感が強く、目立ちたがり屋なのに周りの評価が気になって何もできなかったり、容姿も成績もトップの子と比べては落ち込んだり悔しがったり。人の輪に入っていくのも怖かった」
内気な自分から脱却したい。輝きのある人生にしたい。「よし、大学進学をきっかけに自分を変えよう」と決め、それまで自分には無理だと思っていたコミュニティへと入っていく。例えば、チアリーディング部や就活サークルなどの学内活動を始め、ファストフード店、新聞社の学生記者、塾講師、結婚式場のウエートレスなど、人と接するアルバイトをいくつも掛け持ちするのである。
「まさに背水の陣で挑んだ大学デビューって感じ(笑)。とにかく高校まで何も挑戦してこなかったので、その分を取り戻そうと必死でした」
「はあちゅう」キャラが人生を変えた
そんな中、大きな転機となったのが、大学1年の夏からスタートさせた個人ブログ「はあちゅう主義。」。毎日更新する度にアクセス数は倍々で増えた。更にその冬、友達と期間限定で始めた恋愛ブログが1日のアクセス数約47万回を記録。メディアにも取り上げられ、カリスマブロガーとして一躍注目される存在になったのである。
「私のブログをまとめた本が出版され、イベントのプロデュースなども頼まれるようになりました。ブログの『はあちゅう』は明るく陽気で行動力のある女の子と思われることが多く、私自身もそのキャラに成り切ることで能動的に何にでも取り組めるようになっていきました」
自分の行動が変わると出会う人も環境も変わり、次々に新たなチャンスが舞い込んできた。「内面には相変わらず人と比べては落ち込んだり、ねたんだりというネチネチした部分は残っているんです。だから、人からの印象と実際の自分とのギャップに戸惑いつつも『はあちゅう』のお陰で自分を出せるようになったのは事実。生きるのがラクになりました」
大学卒業後、憧れの作家・林真理子さんの道をたどるように広告会社の電通へ入社し、1年後にコピーライターとなる。「実は就活の際、客室乗務員と二者択一で悩んだのですが、未来の自分に選択肢が多く残るだろうという考えから電通を選びました」
予測できない未来にワクワクする
人気ブロガー・はあちゅうさんが大手広告会社の電通から女性向けITベンチャーのトレンダーズに転職したのは2011年12月。以前から面識のあった同社社長(現会長)の経沢香保子さんに誘われたのがきっかけだった。
「その時、広告会社での5年後は想像できた。でもトレンダーズでは想像できない。だからこそワクワクした。上場目前の勢いのあるベンチャーに入ることで人生の経験値が広がる予感もありました」
前職の時は、ブロガー活動を続けていることに正直、負い目もあった。非難されたことはなかったが、「ブログで表現欲求を満たしてしまうのはクリエーターとしてよくない気がするよ」とアドバイスしてくれる先輩もいた。だがここでは違う。「ブロガー・はあちゅうとしての発信をうまく会社への貢献につなげることが私のミッション」でもある。
現在取り組んでいる動画プロモーションサービスにも、「はあちゅう」で得た人脈などを活(い)かせることが多い。「はあちゅうと本当の私自身を分断せずに働けるのが心地いい。自分らしい生き方をさせてもらえている実感があります」
目の前の仕事に真摯に取り組む
実は経沢さんが声を掛けてくれた理由の一つに、メールの返信の早さがあったそうだ。
「軽いノリのブログをやっているから中途半端な仕事しかできないと思われても困るので、常に目の前の仕事には全力を注ぎます。メールも真摯(しんし)に書き、かつ素早く返信するよう心掛けている。どんな小さなことでもちゃんとやっていれば必ず誰かの目に留まり、評価してもらえるものだって仕事を通じて学びました」
ブログを続けて10年。最近はウェブや雑誌などへの連載も増えた。本を何冊も出し、作家という肩書も得た。「こうなりたいと思っていた夢は一応かないました。でも、やればやるほど課題は増えていく。夢っていつまでも追い掛けていくものなんでしょうね」
どんなにアクティブになろうと、完全に自分のコンプレックスが消えたわけではない。「ただ、以前はネガティブな自分を批判ばかりしていたけれど、最近はフラットに捉えられる。人には陽と陰の両方があって当たり前なんだなって思えるようになりました」
そんな自分の生き様を有りのまま見せることが、読者の元気ややる気につながればと考えている。
自身の次なる野望は「名実共に認められた作家になる。時々炎上を起こす吹けば飛ぶようなブロガーでは終わらない」だ。果てなき上昇志向が彼女をキラキラ輝かせる。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
食べることが大好きなので、食に関わる仕事のような気がします。
人生に影響を与えた本は何ですか?
林真理子さんの自伝的小説「ワンス・ア・イヤー」。私もこんな風に生きたいと思いました。また、学生時代に高橋歩さんの「WORLD JOURNEY」を読んで世界一周したいと思い、岩本悠さんの「流学日記」で大学生が世界一周して本を出したと知り、後に私自身が世界一周することに結び付きました。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
ジャニーズ(最近はKis-My-Ft2)の音楽を聴くことと、おいしいご飯(特にお肉!)を食べること。それと、ふだんから身に着けているのはアイオライトという石のリング。学生時代の世界一周旅行の際、ムンバイで購入。アイオライトには「行き先を決めてくれる、人生の羅針盤」という意味があると知り、買いました。
Infomation
著書「わたしは、なぜタダで70日間世界一周できたのか?」2014年8月5日発売予定
「大学在学中に世界一周するという夢がある。でも、お金がない」。そこで卒業旅行の際、さまざまな企業にプレゼンし、25社から出資・タイアップを獲得! 果たして一人の大学生がどうやって協賛を得たのか。そして、旅先では100を超えるスポンサーからのミッションをどう成し遂げたのか。その一部始終をまとめ、09年に単行本で出版。大好評だったため、幻冬舎文庫として新たに今回出版することに! 壮大な夢を描きにくいこの時代に「夢は必ずかなう」ことを示してくれる一冊だ。
定価:650円+税
出版社:幻冬舎