第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.135お笑い芸人(オアシズ) 大久保佳代子
逃げ道が心の支えに
Heroes File Vol.135
掲載日:2015/7/2
情報番組やバラエティー番組など多くのテレビ番組に出演しているお笑い芸人の大久保佳代子さん。かつてはお笑いコンビ、オアシズの“笑えないほう”と言われ14年間、華やかな芸能界に身を置きつつOLとしても働いていた。そんな彼女がなぜ今、たくさんの人たちに支持されているのか。その魅力をひも解いた。
Profile
おおくぼ・かよこ 1971年愛知県生まれ。千葉大学文学部卒業。92年お笑いコンビ「オアシズ」でデビュー。現在「めちゃ×2イケてるッ!」「旅ずきんちゃん」といった多くのバラエティー番組などに出演中。著書に『美女のたしなみ』など。2015年7月25日(土)・26日(日)に放送予定の「FNS27時間テレビ2015」にて88キロマラソンに挑戦する予定。
誘われて足を踏み入れたお笑いの世界
2015年7月下旬に放送予定のテレビ番組「FNS27時間テレビ2015」(フジテレビ系)。その目玉企画「27時間マラソン」のランナーに選ばれた大久保さんは今、完走を目指し、仕事の合間を縫ってトレーニングを行い、肉体改造に励んでいる。
「普段、本気が見えない私が本気になって走る姿を見たいと言われ、挑戦することに。でも練習は本当につらいです。どこかで楽しくなるような光が見えるかと思いきや、全然ない。大役を仰せつかり20%ぐらいはうれしいのだけれど。いや、やっぱり嫌かな、走りたくない(笑)」
今やテレビの情報番組やバラエティー番組などに引っ張りだこの人気者。そんな大久保さんが、お笑いの世界に足を踏み入れたのは大学時代だった。幼なじみの光浦靖子さんの誘いで、早稲田大学のお笑いサークルへ入ったのがきっかけだ。
「大学に入って華やかなキャンパスライフを夢見ていたのですが、モテるのはあからさまに可愛い子だけ。何かつまらないなと思っていた矢先でした。お笑いコンビを結成し、たまにライブに出たりしていたら、卒業間近に今の事務所に入ることに。テレビ出演も決まったので、就職活動もせず、そのまま芸人の道へ進みました」
そこまでは順風満帆。ところがその後、光浦さんは新番組のレギュラーに抜てきされるものの、大久保さんは外されてしまう。「意識が低かったし、トークも下手。今思えば仕方のないことでした」
OLと芸能活動の二足のわらじ14年
相方の光浦さんがテレビで活躍する一方で、大久保さんは仲間との舞台や単独ライブへ活動をシフト。それでは食べていけないので求人誌で見つけた一般企業へ入社した。
「コールセンターでの顧客対応業務です。シフト制で、お笑いの仕事が入っても誰かと代わってもらえるのが都合良かった。何でも小器用にこなすので重宝がられ、気づいたらスーパーバイザーという役職がつき、新人研修を担当したりして、OLは14年間続けました」
会社も楽しかったし、好きだったが、OLの仕事だけに絞ることはできなかった。「何か私には人前に出る才能みたいなものがある。20代でまだ若かったのもあり、『もう少し頑張ったら何かに引っかかるんじゃないか』。そんな根拠のない自信があったんです」
それに「お笑いがダメでも私にはOLの道がある」と思えることが支えとなり、精神的にも楽だったという。「たまにテレビに出て失敗しても、『半分、素人なんで』とやり過ごせるじゃないですか。OLという逃げ道があったから、お笑いの道をあきらめずに済んだのかもしれません」
与えられた仕事は何でも全力を尽くす
OLとお笑い芸人の二足のわらじを続けていた大久保さん。転機が訪れたのは30歳直前のこと。バラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」のレギュラー出演が決まったのだ。
「この番組のお陰で、OLの大久保として知ってもらえるようになりました。とは言っても週1の収録のみだったので、OLは続けていました」
じわじわと人気が出て、仕事が急増したのは30代後半。「テレビに出られるようになってから、芸人として一つでも笑いをとって帰りたいという欲が芽生え、下ネタや辛口コメントを言ったりするようになりました。30代前半だとそれが妙に生々しくてウケなかったのですが、アラフォーに近づくにつれ、下ネタも笑いとして幅広い世代に受け入れてもらえるようになり、お陰で仕事も増えました。もちろん、経験の積み重ねでこういう言い方をすればウケるというコツがつかめてきたのもあると思います」
がむしゃらに努力してチャンスをつかみにいくタイプではない。どちらかと言えば、基本的に何でも受け身で「流されるままここまできたような人生」と分析する。実際、お笑いの道もコンビの相方・光浦靖子さんの誘いが発端だ。
「でも、どんな仕事も自分なりの一生懸命さで頑張る。OLという逃げ場があった時もお笑いの仕事をおろそかにしなかったし、OLの職場でも手を抜かなかった。そうやってきたことが功を奏し、今につながっているんだと思います」
原点にあるのは働き者の両親の姿
39歳から芸人活動に絞り、40代半ばの現在、多数のレギュラー番組を持つ売れっ子に。相変わらず自分なりの一生懸命さを貫いている。
「どの現場でも自分に与えられた役割に徹します。アイドルにかみついてほしい、イケメン俳優にセクハラっぽくしてと言われれば、深く考えず『分かりました』と言ってやってしまう。そこに使い勝手の良さを感じてもらえているのかもしれませんね」
収録後、スタッフに「面白かったです」「また来てください」と言われたら大久保さんは満足。「その日のビールがおいしく飲めることが私にとっては仕事の喜びかな」
最近、仲のいい芸人が増え、彼らと一緒の現場が楽しくてたまらない。「好きな人が多いほど楽しく仕事ができるんですよね」
働き者の両親を見て育ったせいか、心の奥底に「健康な成人はつべこべ言わずに働くべし」という思いがある。だから、この先も地道にお笑い芸人を続けたい。そのためなら何でもやってのける覚悟。大久保さんの快進撃はまだまだ続く。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
ごく普通に結婚し、子供が2人ぐらいいて、子育てしながら派遣かパートで働いてという人生のような。それを楽しんでいたと思います。
人生に影響を与えた本は何ですか?
レイモンド・カーヴァー(村上春樹訳)の短編集『愛について語るときに我々の語ること』。特に私の人生に影響を与えたというわけではないのですが、何げない日常の出来事がすごくリアルに書かれていて「ああ、分かるなあ」と思える感じが好き。何度も引越ししているのですが、これだけは手放さずにずっと持っていて、時々読み返しています。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
カフェ。大事な仕事やここは勝負だなと思う仕事の前、お気に入りのカフェであれこれ考えてノートに書き留めるようにしています。
Infomation
「FNS27時間テレビ」マラソンランナーに決定! 88キロ走る!
1987年にスタートし、今年で29回目を迎えるテレビ番組「FNS27時間テレビ2015」(フジテレビ系)。今回はナインティナインが総合司会を務め、テーマは「本気」。その番組内で、88キロの距離を走るマラソンランナーに任命されたのが大久保さんだ。5月9日の「めちゃ×2イケてるッ! 2時間SP」で突然指名され、最初は強硬に拒絶したものの、結局は挑戦することに。「走ることになってしまいました。まだ88キロという距離が想像できないのですが、とにかくやると言ってしまったのでやります(笑)」と大久保さん。彼女の「本気」を応援したい。
「FNS27時間テレビ2015」は7月25日(土)・26日(日)放送予定。