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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

Vol.215 シンガー・ソングライター 七尾旅人
音楽の素養がなかったけれど進んでこられた

掲載日:2020/5/8

七尾旅人さんの写真1

七尾旅人さんが立ち上げた「DIY HEARTS 東日本大震災 義援金募集プロジェクト」というサイトがある。
そこでは、福島から北海道へ疎開した6歳の少年が七尾さんと共に作った「スキー」という歌を熱唱している。澄みきった声。ピュアで真っすぐな幼子の心が胸を打つ。七尾さんのシンガー・ソングライターとしての生き方はまるでこの少年の歌声そのものだ。
そんな七尾さんにお話を伺った。その言葉一つひとつをどうぞかみしめていただきたい。

Profile

ななお・たびと/1979年高知県生まれ。98年デビュー。アルバム「911FANTASIA」「リトルメロディ」「兵士A」「Stray Dogs」などをリリース。自身のSNSで新曲「世界中のべニューで(Who's singing)」を2020年4月4日から配信中。

その歌の数々には不思議な力がある。優しくて強い。穏やかなメロディーと優しい言葉、なのに鋭く深く人の心に突き刺さる。七尾さんは、今のトレンドなどとは関係なく曲を紡ぎ出す唯一無二とも言える存在だ。その七尾さんが新型コロナウイルスの渦中にある2020年4月4日、自身のSNSで新曲「今夜、世界中のベニューで(Who's singing)」を配信した。

「世界中が揺さぶられ、音楽の世界でもライブハウスや熟練スタッフ、優れたプレーヤーたちのほとんどが仕事を奪われ、先行きの見えない苦境に立たされました。それでもいつか必ず、どこの街角でも音楽が流れるような日々を取り戻せると信じて作りました」

七尾さんの曲には社会問題を扱ったものが多い。それは作曲を始めたきっかけが影響している。「中学生のころ、祖父が阪神・淡路大震災直後の神戸に僕を連れて行った。荒涼とした光景にぼうぜんとしたのを鮮明に覚えています。あまりにショックだったのか、高知の実家へ帰った途端、なぜか突然曲を作り始めたんです」。音楽の素養などまったくなく、楽器が弾けるわけではなかったので、浮かんでくる鼻歌をひたすらラジカセに吹き込んだ。「当時、不登校で義務教育もまともに終えなかった僕は将来について不安を抱えていました。そういった時期に自己表現をつかみ取ったので、これに懸けて生きていくしかないと思ったんです」

七尾旅人さんの写真2

音楽で食べていこうと上京し、七転八倒の苦労の末、1998年、19歳にしてメジャーデビューを果たす。当時「天才」と注目されたものの、自身はメジャーレーベルのシステムになじめず、2年で所属するレコード会社を離れた。そしてインディーズの世界へ活動の場を移す。そこからまた悪戦苦闘の日々が始まった。

アメリカの同時多発テロに端を発し、再び戦場へ回帰していく日本を批判した3枚組の大作アルバム「911FANTASIA」や、東日本大震災の原発事故について書いた曲「圏内の歌」、更にそのテーマを深化させ、3時間のライブ映像にまとめた「兵士A」など挑戦的で現代に一石を投じる作品を相次いで発表。

「デビューして最初のころは自分の思いを表現する曲が多かったのですが、いつしか自分を取り巻く社会の様相についても書くようになっていきました。特に3・11後、被災者にもかかわらず激しい非難にさらされる立場の人がいたのがショックでした。でもその人たちは何も言えない。歌は、そういうかすかな声をすくい取ることができる媒体なのではないか。あのころは試行錯誤しながら自分のやり方を模索していました」

苦しさの中にあっても何かつかみ取れる

七尾旅人さんの写真3

七尾さんは行動の人だ。特に2011年の東日本大震災以降は私的なことを顧みず、被災地を回って多くの人の声を聞き歌にした。まるで吟遊詩人のように。そんな七尾さんが18年12月、デビュー20周年を記念してアルバム「Stray Dogs」を発表した。楽曲にはそれまで以上にポップでバラエティー豊かなものがそろい、自身の人間的な優しさや温かさが詰まった作品となった。

詞で印象的なのが、七尾さんのパーソナルな部分が以前よりも際立っているところだ。「実は制作したころ、大切な人と死別して、本当に失意のどん底にいました。世の中的にもかなりヘビーな状況でしたが、この時ばかりは社会ではなく自らに目を向け、自身の心にかなうものにしようと思ったんです。素の自分をさらけ出したことですごくラクになりました」

10代から20代、30代と苦しかった。まるで何かと闘うような勢いで曲を作ってきた。だからこそ、30代の終わりにこのアルバムを制作したことで何かが吹っ切れた。そして、よし40代こそ少し肩の力を抜いて何か新しいものを作ろうと期待を膨らませていた矢先、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起きた。思いも寄らない出来事により仕事はほとんどすべてキャンセルとなる。

「少なくとも秋までは無収入確定です」。それでも七尾さんは一つの希望を感じているという。「全世界が同じ脅威に対峙(たいじ)しながら、高度に発達したメディアを通して互いの安否を見守っている。これは有史以来初めてのことでしょう。だから、この暗い時間をただおびえて過ごすのではなく、成熟した世界へとつなげるために使えたらと思う。何かできることがあるはずです。はっきりとは分からないけれど、無数に」

この状況が収まったら、ライブなど音楽活動を再開させたいという。「僕自身、仕事も個人的にも数々の挫折を繰り返してきました。そして社会的にも震災や戦争、今回のパンデミックのような挫折があった。でも、この社会的挫折によって分断や排斥などネガティブなものも派生するだろうけれど、同じ境遇の人がいるということで、逆にかつてない何か強いものも生まれてくるような気がしているんです」

今はみんなが苦しい。ただ、どんなにつらくても、その苦しさの中からしかつかみ取れないような、強い強い価値が見つかるはずだと七尾さんは考えている。「その強い何かは人それぞれバラバラだと思うけれど、この苦しみの向こうにある、新しい宝物を見つけてほしいと願っています」

ヒーローへの3つの質問

七尾旅人さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

小学生のころ、考古学者か漫画家になりたいと思っていた時期があります。ほんの一時期ですが。もしくは当時の父方の家業を手伝って図面を引いたりとか、そんな将来を想像していました。内向的な子供だったし、ミュージシャンになろうという考えはまったくなかったので、現在の仕事には今でも少し違和感がありますね。

人生に影響を与えた本は何ですか?

活字中毒でいろんな本が好きですが、最初に「本ってものすごいものだな」と思ったのは、小学生の時に読んだミヒャエル・エンデの『はてしない物語』かも知れません。書籍というより、異界への扉のような気がしましたね。きしむドアを開くような感覚でページをめくりました。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

特に願掛けなどはしないですね。でもよく考えてみたら、分骨してもらって自宅に置いてある父親の小さな骨壺を、ポンポンと軽くたたく時はあります。何か大事なことがある日の朝などに。

Infomation

アルバム「Stray Dogs」が発売中!

デビュー20周年という節目を迎えた2018年、シンガー・ソングライターの七尾旅人さんはアルバム「Stray Dogs」をリリースした。11年3月11日の東日本大震災直後に作曲されたものをモチーフに、大切な人の自死をきっかけに再構成して録音した「きみはうつくしい」をはじめ、アフリカへの思いを乗せた「Across Africa」、ポップでキュートな「迷子犬を探して」、情感豊かなバラード「スロウ・スロウ・トレイン」などバラエティー豊かな曲がそろっている。キャリア史上最もポップで、愛情の深さが染みる一枚。「自分が歌い続ける理由が詰まっている、大事なアルバムです」と七尾さん。20年間の七尾さんが詰まった傑作をぜひ楽しんでみては。

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5月9日(金)更新

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