現在、LINEが提供するコミュニケーションアプリの登録者は日本国内だけでも5千万人以上、月間利用者数は世界で2億人超
スマホ時代ならではの「音楽を語る放課後を作りたい」という思いから生まれた「LINE MUSIC」。
メッセージを交換するコミュニケーションアプリを提供するLINEが、大手レコード会社と新会社を作り、2015年6月から始めた音楽の定額配信サービスだ。
手ごろな料金で国内外の新譜も含む約150万曲が聞き放題。友人と音楽のシェアができ、日々のコミュニケーションの中でさまざまな音楽に触れて語れる機会を生み出す。
そんな新しい音楽事業を、立ち上げから担当しているのが高橋さんだ。
そのキャリアは、商社でのコピー機やパソコンを販売する飛び込み営業から始まった。やがて検索サービス会社や情報サービス会社を経て、LINEの前身となる会社へ。新規事業部に配属され、LINEでおなじみの「スタンプ」を軌道に乗せた後、以前からかかわっていた音楽事業に本格的に乗り出した。
現在、LINE MUSICで聞ける楽曲は国内外の約150万曲。今後も拡大予定
「新しいものを受け入れてもらうのは大変です。スタンプ事業もそうでした。キャラクターの版権を持つ会社に説明に行くと、そんなの誰がお金を出すのと冷たい扱いで(笑)。でも、スタンプに感情を乗せてメッセージを送るのは日本人の感性に合う、という自信があったので、めげずに説明して理解を得ていきました。ところが、音楽事業のスタートはそれとは比べものにならないほど悲惨で、5年前にレコード会社を回った時はほぼ門前払いでした」
その背景には日本の音楽業界の事情があった。近年海外では違法ダウンロードの増加によりCDが売れず、安くとも利益が出る定額配信がメジャーとなっている。だが日本では違った。
「右肩下がりとはいえ、まだ世界一CDが売れている国。ダウンロードを含め、その売り上げでビジネスが成り立つレコード会社にとって、定額配信で聞き放題になることには抵抗感があったんですね」
その状況下で、曲の一部を着メロのように送るという企画も持ち上がったが、頓挫。高橋さんは「楽曲を丸ごと聞くことができ、LINEならではの使い方として、コミュニケーションの中に音楽を取り込める新しい音楽文化を作りたい」と定額配信への思いを強めていく。
やがて14年、CD離れが加速するなかで、危機感を持ったレコード会社が旧譜の提供に合意する。そこでついにLINE単独での事業が6月始動で決定。記者会見もセットされた。しかしその会見は急きょ中止とし、仕切り直すことになった。
お気に入りの曲をLINEで友人とシェアできる
14年6月に始まる予定だったLINE単独での音楽定額配信サービス。直前で中止にしたが、それはうれしい誤算が生じたからだった。
「実は、この時点では旧譜の扱いのみだったし、若年層が多いLINEのユーザーには月額1,000円は高いのではないかなど、完全に満足できるものではありませんでした」
一方、呼びかけていたレコード会社の中でソニー・ミュージックエンタテインメントの参加がなかなか決まらずにいて、話し合いが持たれるなかでソニー・ミュージック側から意外な言葉が出たのだった。
「せっかくLINEと組むのならほかと同じようなサービスではなく、もっと踏み込んだものにしたい」と。
この提案は願ったりかなったりだった。そこで思い切って一度、仕切り直そうということになったのだ。そして、更に充実したサービスを作るため、ソニー・ミュージックとエイベックス・デジタルとの3社でジョイントベンチャーを組み、LINE MUSICを設立することになる。
結果、踏み込んだ話し合いが進み、新譜の提供と学割の設定が可能となった。料金は30日間で、学生の聞き放題が600円、20時間の制限を設けたものは社会人500円、学生300円の安価を実現。
「学割や時間制限価格はレコード会社側が難色を示しましたが、立場は違えども新しい音楽文化を作りたいという思いは一緒。CDを購入していなかった若年層を取り込むためにも、価格面での冒険にこだわり、交渉しました」
打ち合わせは社内のカフェテリアでも行う。コミュニケーションアプリ「LINE」の運営で問題が発生した場合はすぐに対処する
その後ユニバーサルミュージックも加わり、15年6月に始動。2カ月間の無料お試し期間には約740万人がアプリをダウンロードした。「毎日膨大な曲の再生やシェアがあり、レコード会社も『近年こんなにいろんな曲が日々話題になったことはなく、再び音楽が生活の中に戻ってきた』と喜んでくれました。素晴らしい音楽があっても、今の時代に合う出合いの場が減っていたんですね」
8月からは課金が始まり、LINE MUSICは本格的にサービスを開始した。
「今回の事業で大事にしたのは、音楽とアーティストを大切にする視点です。破壊者になるのではなく、音楽を守りながらLINEのパワーを使ってユーザーが喜ぶ新たな文化の波を起こす思いでやってきました。そして、立場の異なる企業同士の共同作業だったので、調整役として説明は丁寧に、目指すゴールを共通言語で描き皆の不安を希望に変えるよう心掛けました。定額配信の市場は今後増えていきますが、トップは我々が取りたいですね」
※文中の料金は税込み。
「企画開発中に常に付けていたBOSEのイヤホン」
うちの会社は勤務中にイヤホンで音楽を聞いていてもいいので、LINE MUSICの事業開発をしている間ずっと、これで音楽を聞きながら仕事をしていました。音楽には情熱を鼓舞する力があるので気分が盛り上がるし、音楽に関する仕事をする身としても音楽に触れていようという思いがありました。今も、その時の情熱を確認するため、このイヤホンを付けて音楽を聞きながら仕事をしています。
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