チョコレートを練る宇佐美さん。毎日、試作品を食べ、休日もいろいろな商品を試食し、365日がチョコレート漬けだ
チョコレートを楽しみながら、いつでもどこでも乳酸菌を摂(と)ることができる、という商品「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」。2015年10月の発売からシリーズ累計で約2千万個を売り、その勢いはいまだ衰えていないという(16年11月現在)。
研究開発を担った宇佐美さんは、子どもの頃からの大のチョコレート好き。特にロッテの「ガーナチョコレート」のファンで、大学の理工学部に進学後、同社に入りたくてガーナへの愛を語り採用されたという筋金入りだ。入社後は念願だったチョコレートの研究室に配属され、幾つかの担当を経て、現在は主に健康系、女性向けの新機軸商品の開発を行っている。
「入社後すぐ、チョコレートに囲まれて幸せと思うと同時に、原材料や製法については知らないことばかりで未熟さを痛感しました。試作を繰り返して勉強し、今も日々学びながら働いています。ただ、新製品開発は案を百個出して一つものになるかどうかという世界です。毎日、アイデアを絞り出して試作していますが、作っても作ってもうまくいかなかったり、商品化の話がまとまっても工場での生産面で難航したり……。でもその都度、自分のチョコレート好きという原点に戻り、大好きなチョコレートに携わる仕事をしているんだとモチベーションを上げています」
乳酸菌ショコラの研究、その発端は11年春にチョコレートの新市場発掘のために実施した、健康をテーマにしたアンケートだった。現代女性が摂りたい成分の代表として乳酸菌が挙がった。宇佐美さんはその研究を志望。「乳酸菌をチョコレートで摂れたらいいなと考えたんです」。こうして研究はスタートし、乳酸菌のエキスパートである日東薬品工業と組んで、まずは乳酸菌の特性を学び、製品に使える菌を探すことから始めた。そして、幾つもの菌の中から、過酷な環境でも生きていられる植物性乳酸菌をセレクト。試験をした結果、その菌がチョコレートの中で長い間、常温で生き続けられることが分かった。
「求める結果が得られた時は、その画期的な発見に希望が湧きましたね」。乳酸菌はチョコレートの中で長く生きられる。それなら生きた菌を腸まで届けたい。思いは膨らみ、胃酸に弱いと言われる乳酸菌だけど、チョコレートで包めばいいのではないかと仮説を立て、人工胃液を用いた耐酸性の試験を行うことになる。でもそこには、大変さも喜びも待っていた。
「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」は、いつでもどこでも乳酸菌を摂れるようにした、個包装のミニサイズチョコレート
15年10月発売のチョコレート「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」。その研究開発で、乳酸菌をチョコレートに包んで生きたまま腸に届けるための実験が、12年秋に始まった。
「乳酸菌が胃酸に負けずに腸まで届くよう、人工胃液を使い、さまざまな条件で実験を重ねました」。耐酸性試験は乳酸菌のエキスパートである日東薬品工業が担い、宇佐美さんはその実験の条件などを綿密に調整しつつ、味や成分などについて思いを巡らせた。「健康を意識し、ビターがいいかヨーグルト味にするか、食物繊維を入れるか、カカオやミルクの配分は? 形状は?」。その結果、乳酸菌入りだから継続的に摂取してもらいやすいよう、王道のミルクチョコレートにしようと思い至った。
そして14年秋、チョコレートで包んだ乳酸菌が、包まない時よりも100倍も生きて腸まで届くというデータ(※)がまとまる。翌春、社内の会議で発表。会社の上層部が「すぐに製品化しなさい」と半年後の製品化が決定した。
「研究室内で地道に取り組んでいたことが、突然社内のいろいろな部署を一気に大至急動かすことになり、うれしくも大変なことになったなという感じです(笑)」。実際、各部署から多くの質問が寄せられた。工場で生きた菌を扱うのは初めてなので、別の商品や製造ラインに影響しないように製造するにはどうするか、乳酸菌を生きたままチョコレートに包む製法をいかに生み出せばいいか、そしてパッケージの選定など課題は山積み。それを皆で知識を持ち寄り、ゴールに向けて大車輪で進めていった。
発売日を迎えた15年10月、祈るような気持ちでいた宇佐美さんに、大ヒットの兆しが報告される。その好調は続き、アーモンドチョコレートやビター味などバリエーションが次々に登場。「ここまで来られたのは、時間のない中で各部署が一丸となって取り組み、非常にこだわりを持って臨んで、商品が強化されたことが大きいです」。今回は社内外のさまざまな人の交流があった。互いにプロフェッショナルな部分を尊重し、腹を割って話すことで新しい手法や解決策が見つかり、それがヒット商品へと結実した。
研究では、何が大きく化けるか分からない。「だから、目の前にあることをコツコツやっていくことが次につながると信じています。今後はチョコレートやカカオについてさらに精通し、博士のような存在になりたいですね」
※試験管内人工胃液試験にて、乳酸菌原料と比較して1時間から2時間後生存数が100倍以上。同社調べ。
チョコレート試作用のヘラ、そしてカカオの果実「カカオポッド」
チョコレートの試作をする時に欠かせない“マイヘラ”は私にとって神器です。そして「カカオポッド」と呼ばれる大きなカカオの果実は、まさにチョコレートの原点。私は入社10年目で初めて、ベネズエラやメキシコなどのカカオ農園を訪れました。場所によっては、防弾車両に乗り、隣に警備員がついての訪問。いざ農園に入り、実際にカカオを目の当たりにすると「これがあのカカオ農園か!!」と神秘的な何かを感じ、自分がずっとチョコレート好きであることを改めて実感しました。以後、仕事で悩んだり立ち止まることがある度にこの時の感動を思い出し、研究室にあるカカオポッドを眺めて「よし!」と気持ちを入れ直しています。
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