正社員の約4割が年収が「低過ぎる」。理想と現実のギャップは100万円
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最低賃金は毎年上がっていますが、物価の上昇もなかなか止まらない昨今。正社員の賃金事情や、賃金に対する意識には、どのような変化が生まれているのでしょうか。
そこで、マイナビ転職では、20~59歳の正社員に現在の賃金(年収)や、5年前からの変化、生活不安や年収を上げるための行動など、気になる実態を調べました。
※調査対象は、20~59歳の正社員。WEB調査で2022年9月30日(金)~10月2日(日)までに行ったアンケート調査結果を基にしています。
正社員の年収の中央値は450万円。管理職と一般層で300万円の差
初めに、正社員の賃金を年収で聞いてみたところ、全体の中央値は450万円でした。内訳を見ると、中央値付近の「300~500万円未満」は全体の4割を占めています。年代別に見ると、20代が350万円で、そこから年代が上がるにつれて、75~100万円ずつ上昇していく結果に。
婚姻別では、未婚者(380万円)は20代が多いこともあり、既婚者(550万円)より年収が低い数字となっています。階層別では、一般社員(400万円)に対し、管理職(700万円)が大きく上回り、300万円の差が。管理職手当が年収に及ぼす影響は、一定数あるのかもしれません。 職種別では、経営企画(800万円)、研究・開発(600万円)、情報システム(550万円)が上位にあがります。特に経営企画は経営者・役員が多いこともあり、1,100万円以上がボリュームゾーンとなり2割超えという結果になりました。
年収と勤続年数は比例関係。900万円以上では、勤続年数21年以上が半数を超える
また、年収が高くなるごとに勤続年数も増える傾向があります。内訳を見ると、300万円未満では勤続年数「1~5年」が半数を超え、500~900万円未満では「11年以上」が、900万円以上のクラスになると「21年以上」が半数を超えています。賃金(年収)と勤続年数は比例関係にあると言えるでしょう。
5年前と比べて年収が「上がった」人は4割にとどまる
続いて、5年前と賃金(年収)がどう変化したかを聞いたところ、年収が「上がった」と回答したのは全体の4割程度にとどまっています。
年収が「上がった」人たちの上がった金額中央値は、5年前で50万円(月額4.2万円)。おおよそ1年間に10万円ずつ増えている様子です。ただし、物価高や増税、円安などの影響を考えると、家計の好転を感じることは難しいかもしれません。年代別の中央値では、20代、40代が低めの結果となりました。
賃金の査定には「貢献度」「スキル」「経験」を考慮してほしい。40代は貢献度が賃金に見合っていない?
次に、賃金に影響すると思うものを聞いてみたところ、「会社の業績」が最も高く、次いで「勤続年数」「役職」が続きます。年代別では、20代で「勤続年数」が、50代で「会社の業績」がほかの年代よりやや高いのが特徴的。20代は比較的社会人経験が浅く、それが自身の賃金にも影響していると考えているようです。
階層別で見ると、管理職で「役職」が高く、全体値で高かった「会社の業績」を上回っています。管理職のなかには、管理職手当の額面の大きさを実感している人が多いのかもしれません。
続いて、賃金が上がるために必要だと思うものを聞いたところ、「会社の業績」「貢献度」「スキル」が上位の結果に。前問では「勤続年数」や「役職」など環境的項目が上位だったのに対し、ここでは個人の努力を伴う項目が上位にランクインしています。年功序列の風潮は薄れつつあり、これからは自己研さんが必要になると感じている人が一定数いるのかもしれません。
続いて、賃金を決めるのに考慮してほしいものを聞いたところ、「貢献度」が最も高く、次いで「スキル」「経験」が続きます。「勤続年数」や「年齢」など年功序列的な項目は、ここでも少数意見となりました。
年代別では、40代で「貢献度」「スキル」がほかの年代より高くなっています。自身の貢献度に賃金が見合っていない、成果を賃金で評価してほしいと感じているとも推察できます。
職種別では、以下の項目が高いのが特徴的です。- 情報システムの「貢献度」「スキル」
- 建築・土木の「資格」
- 配送・物流・交通の「労働時間の長さ」
現在の賃金は「低過ぎる」が4割。理想と現実のギャップは100万円
次に、現在の賃金(年収)が見合っているかを確認したところ、「低過ぎる」が4割で最も高く、次いで「妥当」「どちらとも言えない」が続きました。職種別では、配送・物流・交通で「低過ぎる」が6割に上り、満足していない人が多いことが分かります。
年収別では、賃金(年収)の高さと「妥当」の割合は比例しており、500万円未満にでは2人に1人が「低過ぎる」と感じています。
続いて、賃金が「低過ぎる」と感じている人に対して見合うと思う賃金(年収)を確認したところ、全体の中央値は500万円。「低過ぎる」人の現在の年収と比較すると、理想と現実の差額は100万円(月額8.3万円)に上ります。
賃金が「低過ぎる」と感じつつもなぜその企業で働き続けているのか、理由を聞いたところ、20~30代では「転職が面倒」という意見が散見されます。ポジティブな意見としては、「人間関係がいい」「仕事が楽しい」「福利厚生が良い」「働きやすい(勤務地の近さ・休みの取りやすさ)」などの意見も。賃金は重要なポイントではありますが、賃金以外の条件や仕事内容など、人によって仕事で重視するものはさまざまであることが分かります。
40~50代になると「年齢的に転職が難しい」という意見が多く見られるように。「転職しても今より賃金が上がるとは思えない」「他社で通用すると思えない」など、社外に出た時の自身の評価について不安が大きい様子がうかがえます。
20代 |
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5年後の年収は「変わらない」が約半数。年収アップに悲観的な傾向
次に、5年後の賃金(年収)はどう変化していると思うかを聞いたところ、「変わらないと思う」が、全体の半数弱に上ります。年収アップはあまり期待されていない様子です。
年代別では、年齢が若いほど「上がると思う」の割合が高い傾向。50代では「下がると思う」がほかの年代より圧倒的に高いのが特徴的です。定年による退職や、役職定年などが考慮された結果だと考えられます。
続いて、5年後の賃金が「上がると思う」人に理由を確認したところ、「年齢」や「昇給」による理由が散見されます。対して「下がると思う」理由では、「定年」に関する内容がほとんどの結果に。「定年」以外の理由では、「会社の業績が下がると思う」など会社や業界の先行きに不安を抱えている意見もありました。
上がると思う理由 |
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下がると思う理由 |
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続いて、5年後の賃金(年収)が「上がると思う」人たちに上がると思う金額を聞いてみたところ、全体の中央値は30万円(月額2.5万円)。年代別の中央値では、50代が少し高めに。ただし、こちらも今後も円安や物価高が続くとすると、家計の好転を期待するのは難しい額と言えるかもしれません。
正社員の約6割が今の生活に金銭的不満
賃金上昇には悲観的なムードのなかで、物価高や増税など、暮らしを圧迫する状況も続いています。今の生活に対して金銭的にどう感じているかを聞いてみたところ、「不満」が約6割と、「満足」を上回る結果に。年収別では、500万円以上で僅差になり、700万円以上になると「満足」の割合が高くなります。
同様に、将来の生活に対しても聞いたところ、「不安」が全体の7割を占める結果に。年収別では、年収が低くなるほど「不安」も高くなる傾向があり、特に300万円未満では9割近くが不安を感じています。
職種別では、今の生活・将来の生活どちらも、配送・物流・交通で「不満・不安」が高いのが特徴的です。「賃金が働きに見合っていない」の割合も高かったことから、賃金に対する不満がほかの職種より高いことがここでもうかがえます。
4人に1人が食費を、3人に1人が交際費・趣味費を「ためらう・諦めることがある」
次に、金銭的理由で出費をためらう・諦めることがあるものを聞いてみたところ、「趣味・娯楽・レジャー費」が4割弱で最も高く、次いで「被服・美容・化粧品費」「交際費」が続きます。「食費」に関しても25.3%がためらうことがあると回答しており、正社員の4人に1人が毎日の食事に関わる出費をためらう、厳しい現状が見えてきました。
年収別では、300万円未満で「被服・美容・化粧品費」「趣味・娯楽・レジャー費」の出費のためらいが半数程度と、より厳しい状況がうかがえます。
「責任が増えても、賃金が上がるほうがいい」は4割
次に、仕事上での責任・負荷と賃金の関係について聞いたところ、「責任が増えても、賃金が上がるほうがいい」と「責任が変わるくらいなら、賃金は今のままでいい」は同程度の結果に。
年代別では、20代の4割強が「責任が増えても、賃金が上がるほうがいい」と回答し、ほかの年代よりやや高いのが特徴的です。20代は現在の年収が低いこともあり、今より多少負荷が増えても賃金が上がることを希望していることが分かります。
年収の高さと「勉強・リスキリングを行っている」割合の高さは比例傾向。副業の実施は約9%にとどまる。副業年収の中央値は30万円(月額2.5万円)
このように生活苦を感じる人も一定数いるなかで、年収を上げるための行動を聞いてみたところ、「特に何もしていない」が半数となりました。ただし、全体の2割弱は「勉強・リスキリングを行っている」様子。「今の会社以外(副業など)の収入を得ている」のは全体の1割にも満たない結果となりました。
勉強・リスキリングの実施率は年収別では、700万円以上ではみな2割超えと、年収が高い層のほうが学び直しや自己啓発に積極的な傾向が明らかに。また、300万円未満では「今の会社以外の収入は得ていないが、検討している」の割合がほかの年収よりやや高いものの、実際の行動(勉強・リスキリングの実施)は伴っていない様子がうかがえます。
続いて、前問で「今の会社以外(副業など)に収入を得ている」人に、その収入の年収を聞いてみたところ、全体の中央値は30万円(月額2.5万円)でした。内訳を見ると、20万円未満が4割弱でボリュームゾーンとなっています。副業認可の企業が増えるなど副業をしやすい環境は広まっているものの、収入補填の効果は限定的と言えそうです。
賃金を理由に転職を考えたことがある人は4割
続いて、賃金を理由に転職を考えたことがあるかを聞いてみたところ、4割強が「考えたことがある」と回答。年代別では、若年層ほど「考えたことがある」が高く、20代では約半数に上ります。職種別では、「経理・財務・購買」「人事・広報・マーケティング」「配送・物流・交通」「医療・福祉・保育・教育」で「考えたことがある」がほかの職種より高いのが特徴的。年収別では、300万円未満で「考えたことがある」が半数を超えています。今回の調査では正社員の生活不安が明らかに。年収別に見ると、年収300万円未満の人に関しては、約半数が賃金に不満を持っており、やりがいを感じる仕事でも生活事情を理由に諦めざるを得ないと離職していく人が出てくる可能性があります。今後、賃金と人材定着の問題は、企業にとって看過できない課題と言えるでしょう。
働き手の意識としては、生活への危機感からか2割がリスキリング(学び直し)を実施。副業を実施(8.9%)・検討している(15.4%)など、社内外問わず、個人のスキルアップや「稼ぐ力」を付けることに前向きな傾向が見られました。
企業としても近年は副業認可への就業規則変更、オンライン学習ツールを利用した社員へのスキルアッププログラムの提供など、社員のスキルアップを後押しする動きが増えてきています。ジョブ型雇用の導入検討など、スキル・職務を重視した賃金の見直しが議論され始めるなかで、スキルを身に付けて自分の市場価値を上げておくことは、長いキャリアにおいてますます重要性を帯びてくるかもしれません。
マイナビ転職 編集部
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【調査概要】マイナビ転職『賃金についての調査』
調査期間:2022年9月30日(金)~10月2日(日)
調査方法:20~59歳の正社員を対象にWEB調査を実施
有効回答数:1,200名(内訳:20~59歳の各年代300名ずつ)
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
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