

週休3日制は収入が上がる? 週休3日勤務者への調査で分かったイメージとリアルのギャップ
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人手不足解消を見込んで、公務員・大手企業をはじめ、週休3日制の導入が進んでいます。しかし、2021年のマイナビ転職調査では、働き手は週休3日制に対し「収入が減るのでは?」と不安を抱いていることが明らかになりました。今回の調査では、週休3日制で実際に働く人にもアンケートをし、週休3日制のイメージとリアルのギャップを探ります。
※調査対象は、20~59歳の会社員(正社員)。
WEB調査で2023年9月22日(金)~9月24日(日)までに行ったアンケート調査結果を基にしています。
INDEX
- 現在の勤務先の休日形態は、「土日祝(カレンダー通り)」が最多。
- 現在の勤務先での週休3日制導入率は14.1%。
- 週休3日制のイメージは「収入が減りそう」が最多。
- 週休3日制による人手不足への影響について45%が「悪化しそう」と回答。
- 週休3日制は女性の短期の離職の抑止力としての効果はあり?
- 全体の2人に1人が、現在の職場に週休3日制を導入してほしいと回答。
- 休みが増えた場合の時間の使い方、年収が高くなるほど、「スキルアップ・学び直しの時間」の割合が高い。
- 週休3日制の利用意向、収入が減少するケースだと低くなる。
- 週休3日制導入企業への転職意向は、65.0%が「転職したい」と回答。
- 週休3日制が「働くモチベーションになる」は半数に満たず。
- 有給や休暇を使い週休3日にしている」が3割超
現在の勤務先の休日形態は、「土日祝(カレンダー通り)」が最多。
初めに、現在の勤務先の休日形態について聞いてみたところ、「土日祝(カレンダー通り)」が44.3%で最多。「週2日」以下が4割超の結果となりました。「週休3日」の議論よりまずは「カレンダー通りと同等」という思いの人も少なくないのかもしれません。
職種別では、「販売・フード・サービス」「医療・福祉・保育・教育」「技能工・物流・配送」といった人手不足が懸念されたりシフト制勤務が前提となっていたりする職種で、「土日祝(カレンダー通り)」が低い傾向。年収別で見ると、「土日祝(カレンダー通り)」は年収が高くなるほど割合が高くなっています。
[ Q.現在の勤め先の休みは?(職種別)単一回答 ]

[ Q.現在の勤め先の休みは?(年収別)単一回答 ]

現在の勤務先での有給消化日数は「5~10日」が最多。年収が低いほど、有給消化日数も少なくなっている。
次に、現在の勤務先での有給休暇消化日数について聞いたところ、「5~10日」が35.0%で最多。前問同様、週休3日制より先に「有給を全部使える環境を」と思う人もいそうな結果となりました。年収別では、有給11日以上消化率は年収400万円を境に大きく差があり、400万円未満では消化率が2割未満となっています。前問と合わせると、年収が低い人ほど休みが少ない、休みにくいという現実が見えてきます。
[ Q.現在の勤め先の有給消化日数(年収別)単一回答 ]

現在の勤務先での週休3日制導入率は14.1%。
現在の勤務先での週休3日制導入率について聴取したところ、採用されているのは14.1%という結果に。大手企業や公務員での制度導入がたびたび話題になっていますが、まだまだ「少数派」のようです。ちなみに、年収別で見ると、ここでも年収800万円以上は21.4%が導入されていると回答し、高い傾向が見られます。
[ Q.現在の勤め先に週休3日制が導入されているか(年収別)単一回答 ]

週休3日制のイメージは「収入が減りそう」が最多。
次に、週休3日制のイメージについて聴取したところ、全体では、「収入が減りそう」が34.1%で最も高く、「正社員では難しそう」が23.2%、「時間内に業務が終わらず残業が増えそう」が22.7%で続く結果に。休みが増えることはうれしい、あるいは期待感が見えるかと思いきや、働き手側は冷めた見方で受け止めているようです。
[ Q.週休3日制のイメージ(週休3日勤務経験別)複数回答 ]

働き方の変化が生活にもたらす影響として、特に気になるのは「収入」「労働時間」の2点でしょう。そこで、週休3日制による収入の変化イメージを聴取したところ、「収入が減りそう(総労働時間の減少など)」が62.3%と半数以上を占める結果に。労働時間については「1週間の総労働時間が減少する」が約半数となっています。前項目では収入が低い人ほど休みが少ない結果になっていましたが、この結果を見ると、収入は労働時間に比例するという感覚の働き手が少なくないのかもしれません。
[ Q.週休3日制による収入変化のイメージ/単一回答 ]

[ Q.週休3日制による労働時間変化のイメージ/単一回答 ]

週休3日制による人手不足への影響について45%が「悪化しそう」と回答。
週休3日制は、人手不足の打開策として導入が検討される傾向があります。そこで、働き手は週休3日制が人手不足にどのように影響すると考えているのかを聴取。全体では、「悪化しそう(休みの人の穴埋めなど)」が44.7%で最も高く、「変わらない」が38.1%、「解消されそう(入社希望者の増加など)」が17.2%と続く結果に。多くの人が週休3日制によって人手不足は解消しないと考えているようです。
[ Q.週休3日制が職場の人手不足にどう影響すると思うか/単一回答 ]

職種別に見ても、「技能工・物流・配送」といった人手が求められる職種において、「悪化しそう(休みの人の穴埋めなど)」の割合がほかの職種よりも目立って高い結果となりました。週休3日制導入によって新しい社員が増えるという期待より、今いる社員の稼働率が下がることへの不安のほうが大きい様子が見て取れます。
[ Q.週休3日制が職場の人手不足にどう影響すると思うか(職場別)単一回答 ]

週休3日制は女性の短期の離職の抑止力としての効果はあり?
週休3日制は、育児や介護など家庭の事情と仕事の両立が困難になり、正社員を諦めざるを得なくなる方の離職防止としての効果も期待されています。そこで、週休3日制の導入が勤続意向年数(今の職場であと何年働き続けるつもりか)へ与える影響も調査。
結果、男性はほぼ変化が見られませんでしたが、女性は「3年以内」の回答が減少しています。週休3日制の導入は女性の短期の離職に対してはわずかながら効果あり。ただし、長期の勤続意向への影響や、「定年まで働きたい」と思わせるほどになるのは難しいようです。
[ Q.今の会社の勤続意向年数(男女別)単一複数 ]

全体の2人に1人が、現在の職場に週休3日制を導入してほしいと回答。
人手不足の改善には期待が持てない様子ではありますが、「自分が週休3日制で働く」ことについてはどう感じているのでしょうか。続いて、現在の職場で週休3日制を導入してほしいかを聴取したところ、「はい」が52.7%。わずかに半数を超えましたが、意見がほぼ真っ二つに分かれる結果になりました。
休みが増えるのはうれしいことかと思いきや、前述の収入減の不安、1日の労働時間の長時間化、会社都合の「人員整理」に利用されるのではないかという懸念など、さまざまな不安によって「導入してほしくない」と考える人が半数近くいることが分かります。
[ Q.職場に週休3日制を導入してほしいと思うか/単一回答 ]

男女別で見ると女性のほうが「はい」の割合が高く、子供の有無別では子ありのほうが高い結果に。週休3日制の導入意図の「仕事と育児を両立するための新たな選択肢」として、期待される部分がわずかにあるのかもしれません。
[ Q.職場に週休3日制を導入してほしいと思うか(男女・子供の有無別)単一回答 ]

休みが増えた場合の時間の使い方、年収が高くなるほど、「スキルアップ・学び直しの時間」の割合が高い。
休みが増えた場合の時間の使い方について聞いてみたところ、全体では、「趣味・娯楽時間」が42.9%で最も高く、「家族・パートナーと過ごす時間」が32.4%、「睡眠時間」が32.2%と続く結果となりました。男女別で見ると「家事・育児の時間」は男性13.7%に対して女性は32.1%と2倍以上の差がついています。思わぬところで、家事・育児における意識の差が浮き彫りとなりました。
[ Q.休みが増えた場合の時間の使い方(男女別)複数回答 ]

年収別では、年収が高くなるほど「(仕事にかかわる)スキルアップ・学び直しの時間」の割合が高くなっています。年収が高い人ほど、リスキリングや学び直しなど、自己研鑽に時間を取ろうとしている様子がうかがえます。
[ Q.休みが増えた場合の時間の使い方(年収別)複数回答 ]

次に、現在の職場で週休3日制の導入は可能かを聴取したところ、「可能・計」は4割以下という結果に。多くの業種で人手不足感が高まるなかで、前述のとおり人手不足悪化の懸念などで難しいと考える人が多いのかもしれません。
[ Q.現在の職場で週休3日制は可能か/単一回答 ]

興味深いのが子供の有無別で、差が出たこと。「子あり」は導入可能と考える人が多いようです。これは、「子あり」は産休や育休など職場で休みの制度の利用経験があるからこそ可能と考える人が一定数いる一方、「子なし」は休みの制度を自分が使うより「休みをフォローする側」の経験の実感のほうが身近である可能性も考えられます。
同じ職場で多様な働き方を選べることは選択肢が増えるメリットがありますが、職場の状況によってはメンバー間の不公平感につながってしまう場合も。現状の有給休暇が使用されていない実態、産休・育休などの話題でたびたびあがる「制度はあるが使える空気ではない」にも通ずる、課題の解決が求められるのかもしれません。
[ Q.現在の職場で週休3日制は可能か(子供の有無別)単一回答 ]

次に、週休3日制度が導入された際、「利用できると思うか」について聴取しました。全体では「はい」が44.9%という結果に。前述の結果と同様に、特にシフト勤務や「現場にいること」「即時対応」が求められる職種、エッセンシャルワーカーと呼ばれる社会を支える基盤となっている職種において、導入されたとしても利用できないと考える人が多いことがうかがえます。
[ Q.現在の職場で週休3日制が導入された場合、利用できるか/単一回答 ]

[ Q.現在の職場で週休3日制が導入された場合、利用できるか(職種別)単一回答 ]

週休3日制の利用意向、収入が減少するケースだと低くなる。
次に、3つのパターンで「週休3日制を利用したいか」を聴取しました。
【1】労働時間が短くなるのに比例して、収入も減る場合
【2】1日の労働時間が増えて、収入は変わらない場合
【3】1日の労働時間も収入も変わらない場合
全体では、週休3日制の利用によって【3】「1日の労働時間も収入も変わらない場合」が最も利用意向が高い結果となりました。【2】1日の労働時間が増加する、【1】収入が減るでは、【2】1日の労働時間が増加する場合のほうが利用意向は高い結果に。「収入維持は譲れない」と考える人は多いのでしょう。
[ Q.現在の職場で週休3日制が導入されたら利用したいか/単一回答 ]



週休3日制導入企業への転職意向は、65.0%が「転職したい」と回答。
続いて、週休3日制導入企業への転職意向について聴取しました。全体では、65.0%が「仕事内容や収入など条件が合えば転職したい」と、ポジティブに捉えています。
その具体的な条件としては、「仕事内容がマッチし、給料も上がるなら転職したい」が23.4%、「仕事内容がマッチし、給料が変わらないなら転職したい」が21.8%と続く結果に。週休3日制で働きたいが、「仕事内容のミスマッチに耐えてまで、週休3日制にしたいとは思わない」という人が圧倒的に多いのです。
週休3日制を導入する企業や団体のなかには、「労働条件の良さ」を打ち出して、人材確保を優位に進めたい意図もあることでしょう。しかし、「休みが多い」のメリットだけで、職種や業界の壁を越えて人を集めることは容易ではなく、あくまで同業種、同職種内での人材流動にとどまるケースが多くなるかもしれません。
[ Q.週休3日制の仕事があった場合、転職したいか/単一回答 ]

週休3日制が「働くモチベーションになる」は半数に満たず。
ここからは、実際に週休3日で働く人にアンケート。まずは、週休3日制が今の会社で働き続けるモチベーションになるかを聴いたところ、「はい」が48.8%。現状、週休3日制を導入している企業は2割いかないといわれ、週休3日制で働ける環境は貴重なように思えますが、モチベ―ションになるという回答は半数以下にとどまりました。
とはいえ、女性や子ありは10pt以上高めの結果になっており、仕事と家庭を両立していくうえで、週休3日制のありがたみを感じている人も一定数いるとうかがえます。
[ Q.週休3日で働くことはモチベーションになるか(男女別)単一回答 ]

[ Q.週休3日で働くことはモチベーションになるか(子供の有無別)単一回答 ]

有給や休暇を使い週休3日にしている」が3割超
週休3日制の働き方ができている理由を質問してみると、全体では、「職場に週休3日の働き方があるわけではないが、有給や休暇を使い週休3日にしている」が35.0%で最も高く、「就職した先がたまたま週休3日だった」が21.1%、「週休3日の会社を選んで就職した」が17.1%と続く結果になりました。
週休3日制が制度として会社に導入されているケースはまだ多くはないものの、有給や休暇を組み合わせて自主的に週休3日の環境を作り出している人がこれだけいるのは驚きです。
[ Q.週休3日制の働き方ができる理由/単一回答 ]

続いて、週休3日になって生活に生じた変化について。男女別に見ると、男性は「趣味・娯楽の時間が増えた」がトップで、「職場の生産性が上がった」「職場の雰囲気が良くなった」が続きます。女性もトップは「趣味・娯楽の時間が増えた」ですが、2位3位は、「家事・育児の時間が増えた」「リスキリング・スキルアップの時間が増えた」という結果に。家事育児とリスキリングについては、男性より回答が3倍近く高く、大きな差になっています。
前述の結果で女性のほうが男性より勤続意向年数が短いことを踏まえると、女性は転職を視野に入れリスキリング・スキルアップを行っている可能性も考えられます。
[ Q.週休3日の働き方で変化したこと(男女別)複数回答 ]

最後に収入の変化については、「上がった・計」が50.4%と半数超。週休3日制は収入減のイメージが強いものの、実態としては収入が上がった人が最多であるという、ギャップが見える形になりました。また、注目すべきは、副業など社外の収入がプラスに影響している人が3割以上いるというところ。
物価高や実質賃金の低下が言われ、副業を容認する企業も増えるなかで、勤務先からの給料以外の方法で、収入アップの道を模索する人が増えているのかもしれません。
[ Q.週休3日になったことでの収入の変化/単一回答 ]

以上、ここまで週休3日制に関する意識調査を見てきました。公務員や企業で人手不足解消のため導入が進んでいる「週休3日制」。現状正社員である働き手からは「現在の職場では導入不可能」などマイナスな意見が散見されました。たしかに、既存の業務形態のなかで既存の労働力をやりくりするのだとすれば、「休みが増えれば収入が下がる」「誰かが休むと業務のしわ寄せを受ける」というネガティブな事態が想定されます。
しかし、週休3日制の導入は「現在育児や介護で正社員を諦めざるを得ない層の離職防止・潜在労働力掘り起こし」という側面があることを忘れてはいけません。また、「DX化や脱・属人業務化など生産性向上でカバーしていく」などの経営判断によっては、既存社員間の不公平感を緩和し、多様な働き方を認めることで人材確保につなげていくことも可能なのではないでしょうか。
今回の調査では実際に週休3日制で働いている人から「収入が上がった」「モチベーションが高まる」などのポジティブな意見も見られました。今後ますます人手不足への対応が求められるなかで、週休3日制は企業にとっても働き手にとっても、一つの選択肢になり得るのかもしれません。
マイナビ転職 編集部
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【調査概要】マイナビ転職『2023週休3日制に関する意識調査』
調査期間:2023年9月22日(金)~9月24日(日)
調査方法:20~59歳の会社員(正社員)を対象にWEB調査を実施
有効回答数:900名
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
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【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社マイナビ
転職情報事業本部 ブランド推進課
Email:mt-brand@mynavi.jp
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