
第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.183俳優 山﨑賢人
才能よりも大切なのはコツコツ頑張ること
Heroes File Vol.183
掲載日:2018/5/25

長身で涼しげな顔立ち。クールで繊細なイメージを持ちながら、実はとても人懐っこい性格。今回映画で共演した鈴木亮平さんからも「山﨑くんは天性の愛されキャラ。誰に対しても壁を作らないところがいい」と絶賛されている。人気俳優として多くのドラマや映画に出演する充実した日々。そんな山﨑さんが20代の今感じている、仕事の魅力について語った。
Profile
やまざき・けんと/1994年生まれ。2010年に俳優デビュー。映画『ヒロイン失格』『orange -オレンジ-』『四月は君の嘘』やドラマ「陸王」「トドメの接吻」など多くの作品に出演している。主演する映画『羊と鋼の森』が18年6月8日(金)から全国公開予定。
「『コツコツです』というセリフが印象に残りました。コツコツやるって本当に大切だなと。撮影現場で三浦友和さんから初めてこのセリフを聞いた時、この言葉が持つ重みをすごく感じたんです」
山﨑さんが目を輝かせながらそう語るのは、2018年6月8日(金)に公開となる主演映画『羊と鋼の森』のこと。山﨑さんはピアノの調律に魅せられた青年・外村を演じる。自分がこれだと思う仕事に出会っても、好きという気持ちや努力だけではどうにもならないことがある。それを受け止めたうえで成長していく外村の姿に、山﨑さん自身が励まされたという。
「本当にセリフがすごく良くて、自分で言いながら心の中でそうだよなって思うことが多かったんです。この物語は新米調律師の外村が成長していく様子を描いていますが、実は誰にでもあてはまるものがたくさん詰まっています。実際、僕もお芝居の仕事をするうえで、才能が必要なのか、どんな努力がいるのか、誰のための仕事なのかなどと悩んだりすることもあるのですが、そんな心情と重なる部分も多く、かなり共感しながら演じていました」

出演作や役者という仕事について話し出すとつい熱が入る。しかし、この世界へ入ったのは自分の意思ではなかった。中学3年の時、原宿の竹下通りでスカウトされたのがきっかけだ。好奇心もあって飛び込んだものの、今まで見たことのない異世界。当時は戸惑いだらけだったと振り返る。
「正直、俳優がどんな仕事なのかもほとんど分からないまま、オーディションをひたすら受けていました」。そんな中、受かって初めて出演したのがドラマ「熱海の捜査官」。「全然うまく演じることができなかったのですが、でも、分からないことをやってみるのも面白いなって、その時思ったんですね」
その後、出演作品を一つひとつ経験していくうちに、「この仕事、楽しいな」と思うようになっていった。そして「この仕事でやっていこう」と、そう決心したのは高校卒業時だったという。覚悟を決めたら、役者の仕事がさらに面白く感じられた。
転機となったドラマ作品がある。NHK連続テレビ小説「まれ」だ。主人公の同級生で、漆塗り職人を夢見る青年を演じた。「1年というスパンで一つの役に向き合うことで、単に演じるという枠を超え、一人の人の人生を生きているという感覚を味わうことができました。役者という仕事がますます好きになりましたね」
失敗で終わりではない。そこから始まる

今を時めく若手俳優として活躍目覚ましい山﨑さん。10年のデビュー以降、途切れることなく数々のドラマや映画に出演している。しかもその多くが主役で、ジャンルも青春ものからコメディーまでと幅広い。
「20代の若い現在だからこそ得られるものも大きいと思うので、どんな役にも果敢に挑戦していきたいですね。何より今は役者という仕事に夢中です。演技には正解というものがないからどう表現するかを考えるのも面白いし、違う現場へ行く度に新しい人たちと出会えるのもうれしいです」
作品によって異なる役作りでは、その人物がどういう環境に育ち、どんな性格なのかをできる限り探るようにしているという。例えば今回主演する映画『羊と鋼の森』で演じた新人ピアノ調律師の青年・外村は、「北海道の自然の中で生まれ育ち、音や匂いに敏感な人なので、普段から感覚を研ぎ澄ますようにして、街の匂いや風の音に敏感に反応するように日々を過ごしていました」と語る。
調律の勉強もクランクイン前から始めて技術習得の訓練を受けた。役のためにいろいろと学べるのもこの仕事の魅力と捉えている。「外村は、森という大自然の中で育ったことが調律師としての大きな武器になっていました。自分ではその良さに気づかずマイナス要素だと思っていたことが、実は大きな武器になるんだなって作品を通して気づかされました」
山﨑さんは分からないことや知りたいことがあれば、すぐに監督や共演者に尋ねたり相談したりするそうだ。年長者にも臆せず接することができる。「それは多分、小学2年から中3までサッカーのクラブチームに所属していたことが大きいと思います。サッカーは目的が一つだから年齢差関係なく、ざっくばらんにみんなで話すことが多かった。映画やドラマも同じですよね。監督やスタッフ、役者も一つの作品を作り上げるという目的が一緒なので、ガンガン聞くことができるんです」
しかも、先輩たちから聞いたことをすべて吸収したいと思っている。その素直さが彼の持ち味。そんな山﨑さんに最近の変化を聞いてみた。「以前は演じることを第一に考えていましたが、ここにきて、自分が出演する作品のメッセージをちゃんと伝えたいと思うようになりました」
生来、明るい性格。失敗してもそこで終わりとは考えていない。確かに一度は落ち込むけれど、それをきっかけにして始まることがあると捉えている。この前向きさが成長の糧だ。
ヒーローへの3つの質問

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
サッカー選手。もしくは子どもの頃に所属していたサッカーチームのコーチになれたらいいなって、俳優になる前は漠然と思っていました。
人生に影響を与えた本は何ですか?
今回主演した映画の原作小説『羊と鋼の森』ですね。文章から音や匂いが立ち上がってくるような雰囲気があったし、景色や人と人との関係もすごく丁寧に描かれていました。いろんな意味で僕にとって特別な一冊になりました。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
何もないです。特に験を担いだりしないので。
Infomation
主演映画『羊と鋼の森』が全国公開!
2016年に第13回本屋大賞を受賞した小説『羊と鋼の森』が待望の映画化! 18年6月8日(金)から全国公開される。ピアノの一音に森の匂いを感じ、調律師の世界に魅せられていく新米調律師・外村(山﨑賢人)。時に迷い、悩みながらも、上司の板鳥(三浦友和)や先輩の柳(鈴木亮平)など多くの人に支えられ、磨かれながら、調律師として、また人としてたくましく成長していく。主人公を演じた山﨑さんは「自分で言うセリフながら、僕自身の背中を押してもらっているように感じたステキな言葉が出てきます。それをぜひ劇場で多くの方に聞いてもらえたらなと思います」と語る。
公式サイト:http://hitsuji-hagane-movie.com/