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退職金にかかる税金はいくら?計算方法、確定申告について解説

掲載日:2026年05月21日 退職金にかかる税金はいくら?計算方法、確定申告について解説

中野 裕哲

執筆者中野 裕哲

経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士/起業コンサルV-Spiritsグループ 代表

記事まとめ(要約)

  • 退職金を一時金で受け取る場合、退職所得控除を使えて税負担が軽い
  • 退職所得控除額を超えた分も、原則として2分の1のみが課税対象で済む
  • iDeCoがある人は、受け取り方法やタイミングによって、控除額をフルで使えない

退職金の受け取り方には、一時金でまとめてもらう方法と、年金のように分割でもらう方法があります。

特に一時金で受け取る場合は、税負担を軽くする「退職所得控除」が使えるため、税金の仕組みを知っておくことが大切です。

目次

    退職所得控除額までは非課税

    退職金には、所得税と住民税がかかります。ただし、給与や賞与とは違い、退職金には税負担を軽くする特別な仕組みがあります。それが退職所得控除です。

    これは、長年働いたことに対するまとまった給付である退職金について、通常の給与よりも税金が重くなりすぎないよう定められているものです。退職金がこの控除額の範囲内におさまる場合、原則として所得税も住民税もかかりません。

    また、退職金はほかの所得と合算せず、分けて税額を計算する扱いになっているため、税金が比較的軽くなりやすいのも特徴です。

    退職所得控除額の計算方法

    退職所得控除額は、勤続年数に応じて決まります。

    勤続年数 退職所得控除額
    20年以下 40万円×勤続年数
    20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

    勤続年数に1年未満の端数がある時は、1日でも切り上げて1年として扱います。例えば19年7カ月なら20年です。

    また、この計算で求めた金額が80万円未満になる場合でも、退職所得控除額は最低80万円です。つまり、短い勤続年数でも最低限の控除が用意されています。

    長く勤めた人ほど控除額が大きくなるため、一般的に勤続年数が長いほど退職金にかかる税金は軽くなりやすいです。

    退職所得控除額の早見表

    退職所得控除額の目安を、勤続年数ごとにまとめると次のとおりです。

    勤続年数 退職所得控除額
    1年 80万円
    5年 200万円
    10年 400万円
    15年 600万円
    20年 800万円
    25年 1,150万円
    30年 1,500万円
    35年 1,850万円
    40年 2,200万円

    勤続20年までは1年増えるごとに40万円ずつ増え、20年を超えると1年ごとに70万円ずつ増えていきます。

    転職で10年前後の勤続年数の人と、定年退職で30年前後勤めた人とでは、使える控除額にかなり差が出ます。まずは自分の勤続年数にあてはめて、おおよその非課税枠を確認しておくと良いでしょう。

    なお、1年未満の端数は切り上げなので、実際の勤続期間が何年かだけではなく何カ月かも確認しておくのが大切です。

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    退職所得控除額を超えても「1/2課税」

    退職金は、退職所得控除額を超えたらその全額に税金がかかるわけではありません。一般的な退職金であれば、退職所得控除額を差し引いた残額のうち、課税対象になるのは原則として2分の1です。これが、いわゆる「1/2課税」です。

    退職金にかかる税金の計算フロー

    例えば、退職金から退職所得控除額を引いた残額が400万円なら、そのまま400万円に税金がかかるのではなく、原則200万円をもとに税額を計算します。この仕組みによって、退職金の税負担は給与より軽くなりやすくなっています。

    ※「1/2課税」が適用されない場合

    ただし、例外もあります。例えば役員等としての勤続年数が5年以下の人に支払われる退職金には、この2分の1計算が使えない場合があります。

    また、勤続年数5年以下の役員等以外の人でも、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分は2分の1にできない扱いがあります。

    一般的な会社員の長期勤続による退職金では、まずは「控除後の残額の半分に税金がかかる」と理解しておけば十分です。

    所得税の計算方法

    所得税を計算するには、まず退職金から退職所得控除額を引き、更に原則としてその2分の1を掛けて「課税退職所得金額」を出します。この金額に応じて、通常の所得税と同じく税率と控除額が決まります。

    課税退職
    所得金額
    税率 控除額
    195万円以下 5% 0円
    195万円超
    330万円以下
    10% 97,500円
    330万円超
    695万円以下
    20% 427,500円
    695万円超
    900万円以下
    23% 636,000円
    900万円超
    1,800万円以下
    33% 1,536,000円
    1,800万円超
    4,000万円以下
    40% 2,796,000円
    4,000万円超 45% 4,796,000円

    税額は、課税退職所得金額に税率を掛けて、そこから控除額を差し引いて求めます。なお、課税退職所得金額に1,000円未満の端数がある時は切り捨てます。

    復興特別所得税の計算方法

    復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するため、所得税に上乗せされている税金です。退職金についても対象で、平成25年から令和19年まで、つまり2037年まで課されます。

    計算の仕方は「課税退職所得金額に2.1%を掛ける」という形ではなく、まず通常の所得税額を計算し、その所得税額に対して2.1%を上乗せします。実務上は、所得税額に102.1%を掛ける形でまとめて計算されることが多いです。

    住民税の計算方法

    退職金にかかる住民税も、通常の給与の住民税とは少し扱いが違います。一般の住民税は前年の所得をもとに翌年課税されますが、退職金にかかる住民税は、退職金が支払われる時にその場で差し引かれるのが原則です。

    税率は一律10%で、内訳は市区町村民税6%、都道府県民税4%です。計算のもとになるのは、所得税と同じく課税退職所得金額です。つまり、退職金から退職所得控除額を引き、原則としてその2分の1の金額に10%を掛けて求めます。

    したがって、住民税についても、退職金の全額に10%がかかるわけではありません。

    退職金をもらった翌年は税金が増える?

    原則、増えることはない

    一時金で受け取る通常の退職金については、原則として、退職金をもらった翌年にその退職金が原因で税金が増えることはありません。なぜなら、所得税も住民税も、退職金の支給時に勤務先が計算して差し引く仕組みになっているからです。

    いわゆる「源泉徴収」とは、勤務先など支払う側が、あらかじめ税金を差し引いて本人に支払う仕組みを言います。退職金はこの方法で税額が精算されるため、通常はあとから大きく課税されることはありません。

    もっとも、これは一時金として受け取る一般的なケースの話です。勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出していない場合には、退職金の額に対して一律20.42%の所得税等が差し引かれ、あとで確定申告による精算が必要になることがあります。

    また、退職金を年金形式で受け取る場合は雑所得になるなどの違いがあります。

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    退職金の税金を計算シミュレーションしてみよう

    ここまでで、退職金には「退職所得控除」と「1/2課税」があるため、見た目より税金が軽くなりやすいことを説明してきました。とはいえ、計算式だけ見ても、実際にいくら引かれて、いくら手元に残るのかはイメージしにくいかもしれません。

    そこで、よくあるケースを2つ取り上げて、退職金の税金を具体的に計算してみます。計算の流れは、まず退職所得控除額を出し、そのあと課税対象になる金額を求め、そこに所得税と住民税を当てはめる形です。

    自分の退職金のおおよその手取り額を考えやすくなるはずです。

    勤続年数10年で退職金500万円の場合

    勤続年数10年で退職金500万円の場合を見てみましょう。

    退職所得控除額は400万円

    まず、勤続年数10年なら、退職所得控除額は「40万円×10年」で400万円です。退職金500万円から400万円を引くと100万円残ります。この100万円の全額に税金がかかるのではなく、原則としてその2分の1である50万円が課税退職所得金額になります。

    手取り額は約492万円

    50万円に対する所得税率は5%なので、所得税は2万5,000円です。復興特別所得税は、この所得税額の2.1%なので525円です。住民税は、課税退職所得金額50万円に10%を掛けて5万円になります。

    したがって、税金の合計は7万5,525円、手取り額は約492万4,475円です。退職金500万円と聞くとかなり税金が引かれそうに感じますが、実際には退職所得控除の効果が大きく、税負担はかなり抑えられます。

    計算式をまとめると

    • 退職所得控除額:40万円×10年=400万円
    • 退職金-退職所得控除額:500万円-400万円=100万円
    • 課税退職所得金額:100万円×1/2=50万円
    • 所得税:50万円×5%=2万5,000円
    • 復興特別所得税:2万5,000円×2.1%=525円
    • 住民税:50万円×10%=5万円
    • 手取り額:500万円-7万5,525円=約492万4,475円

    勤続年数30年で退職金2,000万円の場合

    次に、勤続年数30年で退職金2,000万円の場合です。

    退職所得控除額は1,500万円

    30年勤めた時の退職所得控除額は、「800万円+70万円×(30年-20年)」で1,500万円になります。退職金2,000万円から1,500万円を引くと500万円です。これに原則どおり2分の1を掛けるため、課税退職所得金額は250万円になります。

    手取り額は約1,959万円

    250万円に対する所得税率は10%、控除額は9万7,500円なので、所得税は15万2,500円です。復興特別所得税はその2.1%で3,202円です。住民税は250万円×10%で25万円です。

    税金の合計は約40万5,702円、手取り額は約1,959万4,298円となります。退職金の額が大きくなっても、長期勤続によって退職所得控除額も大きくなるため、税負担率は見た目ほど重くならないことが分かります。

    計算式をまとめると

    • 退職所得控除額:800万円+70万円×10年=1,500万円
    • 退職金-退職所得控除額:2,000万円-1,500万円=500万円
    • 課税退職所得金額:500万円×1/2=250万円
    • 所得税:250万円×10%-9万7,500円=15万2,500円
    • 復興特別所得税:15万2,500円×2.1%=3,202円
    • 住民税:250万円×10%=25万円
    • 手取り額:2,000万円-40万5,702円=約1,959万4,298円

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    iDeCoもある人は「10年ルール」に注意

    会社からの退職金とは別に、iDeCoや企業型確定拠出年金(企業型DC)の一時金も受け取る人は、受け取り時期に注意が必要です。

    どちらも一時金で受け取ると、退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。ただし、近い時期に続けて受け取ると、控除額をフルに使えず、思ったより税金が増えることがあります。

    退職金とiDeCoの10年ルール

    こうした調整に関係する期間が、いわゆる「10年ルール」です。2026年1月施行の制度改正では、iDeCo(または企業型DC)の一時金を先に受け取り、後から退職金を受け取る際、従来5年とされていた控除額調整期間が10年に延長されました。

    つまり、退職所得控除を最大限に活用したい場合、10年以上の間隔を空ける必要があるということです。

    ポイント

    いつ、どう受け取るか、事前に検討を

    iDeCo(または企業型DC)がある人は、単に「退職したらすぐ全部一時金でもらう」と考えるのではなく、会社の退職金とiDeCo(または企業型DC)をいつ、どの順番でどう受け取るかを事前に検討したほうが安全です。

    退職金を先に受給し、後からiDeCo(または企業型DC)の一時金を受け取る場合には、上記の10年ルールより長く、20年以上間を空ける必要があります。iDeCoは75歳までに受け取りを開始する必要があるため、退職金を先に受け取る場合、20年空けるには、現実的には転職や早期退職時などに限られます。

    そのため、制度を知らずに受け取ると、本来より税負担が重くなることもあります。iDeCoや企業型DCは老後資金づくりの制度ですが、出口である「受け取り方」まで含めて考えないと、税制メリットを十分に生かせません。不安がある場合は、受け取り前にシミュレーションしておくと安心です。

    退職金を年金でもらうと「退職所得控除」はなし

    退職金を一時金ではなく年金形式で受け取る場合は、税金の扱いが変わります。

    この場合、通常は退職所得ではなく、公的年金等に係る雑所得として扱われます。そのため、一時金で受け取る場合に使える退職所得控除は使えません。代わりに、公的年金等控除の対象になることがありますが、退職所得控除とは仕組みも効果も異なります。

    また、一時金のような分離課税ではなく、ほかの所得と合わせて税額が決まる形になるため、人によっては税負担が重くなることがあります。

    更に、年齢や所得状況によっては、年金収入が国民健康保険料や介護保険料、家族の扶養に入る場合の年収要件に影響することもあります。したがって、「分割でもらえば税金が軽くなる」とは限らず、受け取り総額、ほかの年金や収入、社会保険料への影響まで含めて考える必要があります。

    ポイント

    大切なのは「税金だけ」で決めないこと

    一般論としては、退職所得控除と1/2課税が使える分、一時金のほうが税制上有利になりやすいです。ただし、それがすべての人に当てはまるわけではありません。

    例えば、一度に大きなお金を受け取るより、毎年の生活費として安定して受け取りたい人には、年金形式のほうが向いている場合もあります。

    また、制度によっては「一部を一時金、残りを年金」で受け取れることもあります。このような併用ができるなら、まず退職所得控除を生かせる範囲を一時金で受け取り、残りを年金に回すという考え方もありえます。

    大切なのは、「税金だけ」で決めないことです。手取り額、生活設計、ほかの年金収入、社会保険料まで含めて、自分に合った受け取り方を選ぶことが重要です。

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    退職金をもらったら、確定申告は必要?

    原則として確定申告は不要

    退職金を一時金で受け取る場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、原則として確定申告は不要です。

    勤務先が、退職所得控除や税率を反映して所得税と復興特別所得税を計算し、支給時に差し引いてくれるためです。これで税額がほぼ精算されるので、多くの人は退職金のためだけに確定申告をする必要はありません。

    確定申告が必要なケース

    ただし、この申告書を提出していないと、退職金の金額に対して20.42%の所得税等が一律で源泉徴収されます。この場合は、本来の税額とずれることが多いため、自分で確定申告をして精算することになります。

    また、医療費控除や寄附金控除などで確定申告をする場合には、退職所得の金額も申告書に記載する必要があります。

    年金形式で受け取る場合は、そもそも退職所得ではなく雑所得の扱いになるため、ほかの年金収入や所得状況に応じて確定申告の要否を別途確認することが大切です。

    まとめ

    退職金には所得税と住民税がかかりますが、給与とは違い、退職所得控除や1/2課税といった優遇があります。そのため、まとまった金額を受け取っても、実際の税負担は思ったより軽くなることが少なくありません。

    一方で、iDeCoや企業型DCの一時金をあわせて受け取る人は、受け取り時期によって控除の使い方が変わるため注意が必要です。また、年金形式で受け取る場合は退職所得控除が使えず、税金や社会保険料への影響も変わってきます。

    更に、確定申告が必要かどうかも、申告書を提出しているか、受け取り方が一時金か年金かによって変わります。退職金は金額が大きい分、受け取り方の違いが手取りに与える影響も大きくなります。制度を正しく理解し、受け取る前に一度整理しておくことが大切です。

    執筆者

    中野 裕哲

    中野 裕哲

    起業コンサルタント®、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー
    起業コンサルV-Spiritsグループ、税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人V-Spirits、V-Spirits総合研究所株式会社 代表

    起業準備から起業後の経営まで、窓口ひとつで支援するV-Spiritsグループを主催。年間約1,000件の起業相談を無料で受け、多くの起業家を世に送り出している。経済産業省後援「DREAM GATE」にて12年連続相談件数日本一。

    専門分野はビジネスプランのブラッシュアップ、事業計画書作成、創業融資・補助金・助成金の支援、税務会計、人事労務、会社設立、許認可、ブランディング、マーケティング、集客・販促などのアドバイス、人脈の紹介まで行う。

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