
まだ見ぬ景色を求めて――執行役員まで上り詰めたエンジニア、33歳の新たな挑戦

転職者プロフィール
PwCサイバーサービス
シニアマネージャー
村上純一さん
(2017年2月入社/33歳)
【転職前】
セキュリティサービス企業で、研究開発エンジニア/技術コンサルタントとして、脅威分析、脅威実証、ガイドライン作成、リスク評価などを提供する。
2008年、セキュリティベンチャーに転職。執行役員として、研究開発、技術コンサルティングから、営業提案活動、マーケティングまで、幅広い分野で活動した
↓
【転職後】
PwCサイバーサービスで、独自サービスの企画、サービス提供に携わっている
評価を求める、役職を求める、給与アップを求める――転職のゴールは人それぞれだ。執行役員にまで登り詰めることと、ゴールテープを切ることはイコールではない。
今回紹介するエンジニアは、サイバーセキュリティの世界で活躍する村上純一さん。村上さんは業界内でも著名な企業を渡り歩き、現在は「世界4大会計事務所」の1つ、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)のグローバルネットワークに属する「PwCサイバーサービス」で、シニアマネージャーとして、サイバー世界の安全を守ること、そして企業の枠を超え、新たにこの世界に入ってくる若手エンジニアの育成を行っている。今回は同氏の転職歴を振り返り、そこにどのような決断があったのかを聞いた。
高専卒、電気工学経由、「サイバーセキュリティ」の世界へ
村上さんがこの世界に入ったきっかけは、「高専」だった。専攻は電気工学。数学や工作が好きで、家にある家電を分解するようなタイプの、いわゆるギークのタマゴだった。
しかし村上さんは学生時代、専攻である電気工学よりも「情報処理」の世界に興味を持つ。「高専は専門性の高い授業を行っており、弱電、強電ともに学ぶチャンスがありましたが、どこかで自分には向いていないかも、と思うようになりました。その代わりプログラミングに興味を持ち、占める割合が大きくなってきました」と振り返る。そして高専在学中の5年間でプログラミングをし、Linuxを学び、そこについて回る「セキュリティ」に興味を持つようになる。そのころから脆弱性に関する技術を学び、自身でスキャンツールなども作っていたという。
電気工学を経由して「IT」と「セキュリティ」に興味を持った村上さんは、当時雑誌やインターネットメディアに多くの社員が寄稿していた記事を見て、あるセキュリティサービス企業を知り、2004年に高専を卒業後、その会社に就職を決める。
最初に配属されたのはコンピュータセキュリティに関する「研究所」だった。「入社前から知っていた組織で、そこを希望して就職を決め、1年間基礎研究に没頭しました。そのときに特許も取得し、それが活用された製品を世に出すこともでき、良い経験をしたと思います」と振り返る。
村上さんは1年間の研究所配属ののち、他のメンバー同様「現場」に異動する。研究の成果を野に出し、技術コンサルタントとして社会の役に立つ、というのがその会社の方針でもあった。テクニカルなコンサルティングにおいて、脅威分析、脅威実証、ガイドライン作成、リスク評価などを提供する。そのとき村上さんは、まだ22、3歳という若さだ。
「社会人経験は少ないけれど、技術力は『正直』。そういう意味では年齢は問題ではありませんでした。ただ、人間力――例えばきちんと人と話すとか、説得する力というのは未熟だったかもしれません」
村上さんは会社の方針でもある、執筆活動や課外活動にも精を出した。技術系メディア/雑誌への寄稿や講演、そして「情報処理推進機構」が主催する若手エンジニア育成の施策「セキュリティ・キャンプ」にも2006年から参加し、企業名を背負って活動を行った。「そのころはまだセキュリティに関する勉強会も少なかった時代。でも、会社がこのような活動を認めてくれていたのはありがたかったです。自分のキャリアを考えるきっかけにもなりました」と言う。
新たな地で技術者から管理職へ
そのような恵まれた環境を、村上さんは4年弱で卒業する。

もちろん、会社に愛想を尽かしたわけではない。「いろいろなセキュリティのサービスを提供しているので、ITセキュリティの全体像が見える場所でした」と、村上さんはその会社を振り返る。しかし、自分の居場所が分かるだけに「より自分がフォーカスしたい領域が見えてきた、サービスベンダーから対岸に見える製品ベンダーで研究開発に取り組みたい」と考えるようになったという。
「知らないことを知りたい。自分が降り立ったことのない対岸を経験したいと思いました」
村上さんが向かった先は、ITセキュリティの製品を作り出そうという「日本発のベンチャー企業」だった。2007年当時、知り合いでもある代表がまさに立ち上げようとしている、研究開発に特化した他にないベンチャー企業だった。
資本金も少なく、まだ主力となる製品が存在しない企業。2008年1月に転職を決めた村上さんの社員番号は「7番」。最初の仕事は「オフィスの片隅にある自分の机を組み立てること」だったという。
そのベンチャー企業では、職種にとらわれずさまざまな業務を体験したという。研究開発エンジニアとしての採用だったが、会社立ち上げ当初は現在の主力製品がまだなく、委託研究や受託開発などのサービス案件が多かった。そのため、提案、マーケティング、入札対応などの業務もこなすなど、未経験の仕事も多かった。しかし、大きな抵抗はなかった。
「一通り自分でやってみたいと思いましたし、どんな仕事も自分でできるようになっていた方がいい。できないことをできるようになりたい、という思いがあります」
村上さんは当時を振り返り、「エンジニアという意味では、幅広いことができた」と話す。「やらされた」でも「やった」でもなく、そういう経験が「できた」と表現する。
2010年には執行役員となり、名実ともに企業の顔になった。
挑戦と客観視と――チャレンジにゴールはない
村上さんは現在、PwC Japanグループにいる。入社当時はベンチャー企業と表現すべき規模だった2社目の会社は、「日本発セキュリティベンダー」に成長し、今では多数の製品を提供している。そこで執行役員という役職まで到達したのに、なぜ再度転職を決めたのだろうか。そこには、村上さんなりの考えがあった。
「サービスベンダーと製品ベンダーを体験したので、もう1つくらい違う経験をしてみたいと思いました。1社目ではコンサルティング部門の同僚から研究者/エンジニアと見られることが多く、2社目ではソフトウェア開発者からコンサルタントと見られることが多々ありました。自分ではあまり自分自身を定義しないようにしていますが、こうした経験から『一度本物のコンサルティングファームで働いてみよう』と」
そして2017年2月にPwC Japanグループ内のITセキュリティに携わる企業、PwCサイバーサービスに転職する。PwCといえば世界157カ国に及ぶグローバルネットワークと22万人以上のスタッフを有するプロフェッショナルサービスを提供しているが、PwCサイバーサービス自体はグループ内でも若い会社で、まだこれから整備すべき点があることも、村上さんが転職を決めた一因だ。
2006年から2014年まで続けた、22歳以下の学生からセキュリティ人材を育てていこうという「セキュリティ・キャンプ」への講師メンバーとしての参加も、2015~16年は「いったん課外活動を減らしてみる」という試みで控えていた。
「課外活動に対して『やらされている感』はなく、楽しく行ってきました。専門性の高いメンバーが集まる課外活動は刺激的です。一方、楽しかった課外活動がルーティンワークになってしまう危険性を感じ、さらなる新しいことをやる余地を作ろうと思って、いったん休止しました」と述べる。
セキュリティ・キャンプなどの課外活動を通じ、村上さんが得たものは「ビジネス感覚」だったという。「さまざまな経験を通じて、自分を1つの会社、事業として考えられるようになったことはプラスだと思います」と述べる。
現在、PwCサイバーサービスでシニアマネージャーとして、独自サービスの企画、サービス提供に携わっている。まだ設立から2年弱の会社組織ということもあり、「カオスな環境」だと村上さんは言う。
「PwCは監査法人を含むネットワークという性格上、高い独立性が求められており、今まで経験のない取引先とは、ビジネスを始める前に独立性の確認や照会作業なども必要です。しかしどの会社にも作法やルールはありますので、その中で適切なやり方を見つけることが重要だと思います」
常に新しいことに挑戦する。相対的な視点で客観的に自分を評価する――セキュリティ業界でチャレンジを続けてきた村上さんは、執行役員という地位を投げ捨て、新しい組織で共に成長する道を選んだ。2017年は2年ぶりにセキュリティ・キャンプにも携わるという。村上さんの挑戦は、これからも続く。

PwCサイバーサービス 最高執行責任者 星澤さんに聞く、村上さんの評価ポイント
当社は事業開始から1年半が経過しておりますが、やるべきことが山積みでまだまだスタートアップ期と言えます。このような状況下で求められるのは、高い専門性を持ち、新しいチャレンジを楽しみ、フレキシブルなスタンスで自発的に行動できる人材です。
村上さんとは、以前仕事でご一緒したことがあり、セキュリティエンジニアとして高度なスキルを身に付けていることは存じ上げておりました。また、前職のセキュリティ専門企業でスタートアップから上場までの道のりを体験しており、その経験や知見は当社でも生かしていただけると考えました。
さらに採用期間を通じて、現状に満足することなく次のチャレンジを探求する前向きな姿勢が、求める人物像とぴったりとマッチし、この会社でも大活躍してくれることを確信しています。
※企画・制作:@IT自分戦略研究所編集部
※JOB@ITの記事(2017年5月)に再編集を加えて掲載しています。
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