ダイヤモンド・オンラインの記者が斬る! 最近のおシゴト事情
生涯現役の時代でも 20代の4割は「定年後働きたくない」
掲載日:2016.1.27

大企業に就職できれば、定年まで安泰――。そんな誰もがうらやむ大企業でも、大量リストラが行われるのは珍しいことではなくなり始めています。2014年は大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが希望退職者募集・早期退職優遇制度を呼びかけ約2800人が退職、今年は大手家電メーカーのシャープがそれを超える約3500人の希望退職者の募集をかけ、大きな話題となりました。大企業に就職できれば定年まで安泰とは言い切れないのです。
さらに年金支給年齢の引き上げや平均寿命が延びていることで、定年後も働き続けることをこれからの世代は求められるようになります。そうしたなかで、20~40代の会社員は定年前・定年後の働き方についてどのように考えているのでしょうか。
ダイヤモンド・オンラインでは、アンケート調査会社・ジーリサーチの協力のもと、『定年前と定年後の働き方に関する調査』を実施(期間は2015年11月9日~12日)。全国の20代、30代、40代の会社員それぞれ100名ずつの声を聞いてみると、年代によって「定年前」と「定年後」の働き方に対する考え方が大きく異なることがわかりました。
40代超が知らない20、30代の本音 「定年まで働ける会社で働きたいけど…」
まず、すべての年代に「定年まで働ける会社で働きたいか?」を尋ねました。20代では「はい」が56%、30代では67%、40代は71%と、年齢が上がるにつれてそう考える人が増えていくことがわかります。しかし、過半数を占めた「はい」と答えた理由について尋ねたところ、20~30代と40代で年代による考え方の傾向の差が見える結果となりました。
【定年まで働ける会社で働きたいか?「はい」と答えた人】
<20代>
「安定していれば生活に困ることがないから(26歳男性・北海道)
「お金を稼いで、円満な家庭で暮らしたいから」(27歳男性・神奈川県)
「定年までしっかり働かないと生活できない世の中なので」(26歳女性・神奈川県)
<30代>
「生活をやっていくためには働ける時働くことが大事」(30歳男性・福岡県)
「セカンドライフプランを立てやすいから」(38歳女性・香川県)
「老後が心配だから、少しでも貯金したい」(38歳女性・千葉県)
<40代>
「歳をとってから他の仕事を覚えるのは大変だし人間関係もまたスタートからで、しんどいからです」(43歳男性・兵庫県)
「転職すると面倒そうだから」(43歳男性・栃木県)
「退職後の再就職は難しそう」(42歳男性・大阪府)
20~30代は「安定的な生活」「老後の金銭的な不安」を解消するために、定年まで働ける会社で働きたいという人が多く見られる一方、40代は金銭的な不安よりも、「今の会社を辞めたら大変、面倒」といった精神的な負担を懸念して、転職を避けて定年まで働ける会社で働きたいと思う人が多いことがわかりました。
次いで、「今の会社に定年までいると思うか?」と尋ねました。すると、「定年まで働きたい」と答えた人はいずれも過半数を超えていたにもかかわらず、「はい」と回答した人は40代で44%、30代31%、20代はわずか15%に過ぎませんでした。「定年まで働ける会社で働きたいが、今働いている会社で定年まで過ごせるかどうかは不安」という人は年齢が若くなるにつれて増えていくようなのです。

【今の会社に定年までいると思うか?「いいえ」と答えた人】
<20代>
「まだ子どもがいないためこれからできたら多分辞めると思うので」(24歳女性・愛知県)
「子どもに手がかかるようになったら、辞めざるを得なくなると思うから」(26歳女性・東京都)
「なんか違う。自分のやりたいことが他にある」(29歳女性・東京都)
<30代>
「自分が定年になる頃まで会社が存続しているかわからないから」(35歳男性・宮崎県)
「激務だから体力がもたないし、出産、子育てがある」(30歳女性・東京都)
20代~30代は、自身のライフイベントや会社の経営状況など、不確実性の高い状況から同じ会社に居続けるのは難しいという意識が高いようです。かたや40代はライフイベントもひと段落し、自分の定年も見通せる一方、また大部分は再就職が難しいと言われている年代です。「仕事に慣れていて、人間関係もいいから」(43歳男性・栃木県)、「退職金が一応出るので」(42歳男性・沖縄県)というように慣れや面倒を避けるという意味で、定年まで同じ会社にいると思う人が多いのでしょう。
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「定年後働きたくない」20代は4割も! 働かないという選択肢はありえる?
アンケートでは最後に、「定年後、働ける間はどのように過ごしたいですか?」と尋ねました。すると、30代、40代では「今の会社で定年後も働きたい」「定年前とは異なる会社で働きたい」人が合わせて46%と42%と、過半数に近かったにもかかわらず、20代ではわずか26%。その一方で「仕事はしたくない」と答えた20代は40%と、30代の23%と40代の26%を大きく上回る結果となりました。

なぜこのような差が年代によって表れたのでしょうか。「40歳定年制」の発案者としても知られる、東京大学大学院経済学研究科・柳川範之教授は、「40代になると定年も近い将来として想像できる一方、20代はまだ若く約40年先の定年後を想像できないから(「定年後は働きたくない」と答えた人が多いのだろう)」としながらも、「20代でも50~60代以降の人生をプランニングすべき」と指摘します。
では、プランニングとは何をすればよいのでしょうか。柳川教授はまず、「10年~15年の単位で何がやれるかを考える」ことが必要だと語ります。10年後にどんなスキルを身につけておこうか、副業や転職の可能性も含めて考えてみるのです。
とはいえ、「10年後だって想像がつかないよ」と思う人は少なくないでしょう。
「想像ができないという人は、自分が思いつく範囲のやれること・スキルの習得で構いません。半分、夢物語でもいいのです。忙しいからと目先だけにとらわれず、思いつきでも将来に目を向けていると、実際に何か起こったときに対応できたり、考える準備ができるものなのです」(柳川教授)

東京大学大学院経済学研究科・柳川範之教授
また、「不確実性が高い世の中だから、こうなったらこうするというシナリオを数パターン考えておく」(柳川教授)ことも重要だといいます。良いシナリオ、普通のシナリオ、悪いシナリオの3パターンでも十分です。
現在、年金の支給開始年齢は65歳ですが、さらに年齢が引き上げられるとも囁かれるなか、定年以降も働かなければならない人も少なくないでしょう。「仕事をしたくない」という20代の人は少なくありませんでしたが、どんな人であれば、定年後も仕事で活躍できるでしょうか。
「これまで特定のコト、上司から与えられた仕事だけをしていた人は、定年後とまどうことになります。定年後は急に『自分でやりたいことをやればいいよ』と自由を与えてしまうからです。大学に入ってから『自由』を与えられて戸惑ってしまう学生と近いかもしれません。一方で、意欲・好奇心を失わない人は定年後もいきいきと活躍できます。しかし急にそうなれるわけではありません。若い頃から目新しものを見るようにし、普段から今の仕事とは違う世界の目を向けることが大切です」(柳川教授)
例えば、65歳で定年を迎え、90歳まで生きることになれば、25年もの間を“定年後”として過ごすことになります。年齢を重ねるにつれて仕事をする・働く概念も、お金のためだけではなく、社会や地域貢献といった意味のあるものへと変わっていきます。そうした変化に対応するためにも、今いる会社だけに居場所を求めるのではなく、若い頃から世界を広げておくことがこれからの時代を生き抜くために重要になりそうです。
(ダイヤモンド・オンライン編集部 林 恭子)
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