
退職理由をポジティブにする秘訣
採用担当者の一番の興味は応募者の「退職理由」ではない
前職に関する否定的な発言はNG。プラス面に目を向けてみよう
面接の際、前職の退職理由をどのように言えばよいか悩む方が多いようです。退職はネガティブな行為と勘違いし、後ろめたい気持ちになっているからでしょうか。転職者は全員、前職を退職するのですから、否定的にとらえることはありません。
そもそも人材採用の目的は企業の収益力を高めることです。したがって、採用担当者の一番の興味は「自社に利益をもたらす人材かどうか」です。本来、面接で重点的にチェックされるのはこの点であり、なぜ前職を辞めたのか(辞めたいのか)が採用・不採用の分かれ目になるわけではありません。
転職活動を成功させる上で大切なのは、退職理由ではなく、前向きな志望理由をしっかりと言えるようにすることです。もしも退職理由を根掘り葉掘り追及されるとしたら、原因は、前向きな志望理由を積極的に言えていないからに他なりません。面接で心掛けるべきは、どんな業務でどんな貢献をしたいのか、どんなスキルを生かしたいのかということを明快に語り、採用担当者の興味をそそることです。
その結果、退職理由自体がポジティブな印象に変わります。要するに、「私は○○の仕事がしたいので思い切って前職を辞める決意をした」という積極性が伝わるのです。ただ、この時気をつけたいのは前職に関する否定的な発言です。会社や上司の悪口などはもっての外。自分の過去のキャリアを否定することになりますし、人格面の評価が大きく下がってしまいます。
前の会社を褒めると前向きな志望理由が見えてくる
採用担当者の高評価を得る秘訣は、ずばり前の会社を褒めること。つまり、肯定的な発言や感謝の発言です。たとえば「前職では○○の仕事を学べてとても良かった」「○○のスキルを指導してくださった上司には大変感謝している」。このような発言は自分のキャリアのアピールにもなり、人格的にも好感を持たれます。
とはいえ、「前の職場は褒めることなど何もない」「嫌でたまらなくて辞めたのに褒めることなんかできない」といった方もいるでしょう。しかし採用担当者の立場で考えてみてください。前職の環境や条件、人間関係を悪く言う人と、職場に問題があってもしっかりと努力して仕事を覚え、スキルを身につけたことに感謝している人ではどちらを信頼できると感じるでしょうか。
同時にお勧めしたいのは、ノートに前職の悪かった点とそのプラス面を書き出し、志望企業との違いを分析することです。この違いゆえに応募企業に魅力を感じたことを伝えれば、ますますポジティブな印象へと変わります。
面接の話題は、実は自分が方向性を決められるのです。前向きなストーリーが言えるようにして面接に臨み、力強く未来を切り開いてください。
case study 14退職理由をポジティブに感じさせる「前職の褒め方」
実際にはネガティブな退職理由があっても、応募者の伝え方ひとつで、それを採用担当者の心に響く言葉に変えることができます。ここでは、その鍵となる3つの「褒めポイント」を解説します。
採用担当者の心に響くのは肯定的な発言と感謝の発言
退職理由をポジティブにするためには「前の会社を褒めること」が重要です。なかでも応募者の評価が大きく高まる「褒めポイント」は3つあります。
- 高い仕事能力を感じさせる褒めポイント
- 上司・同僚との良好な関係を築く能力を感じさせる褒めポイント
- マイナスをプラスに捉える褒めポイント
以下の解説と実例を参考にして、自分なりの褒め方、褒め言葉を考えてみましょう。
ポイント1.
高い仕事能力を感じさせる褒めポイント
●「前職では、○○○○して、とても良かったです」
前の職場を褒めながら、前職で高い仕事能力を身に付けたことをアピールします。志望企業での業務内容を研究し、それに直接役立つ内容だと伝えるようにすると、さらに評価は高くなります。文末の「とても良かったです」は、「大変感謝しています」という表現でも構いません。
<「○○○○して」に入る、「自分の仕事能力アピールになる」褒めポイント例>
- 「スキルを身に付けられて」
- 「実務経験が得られて」
- 「人脈を広げられて」
- 「能力を磨くことができて」
- 「知識を深められて」
- 「○○の分野について詳しくなれて」
- 「仕事の秘訣が掴めて」 など
ポイント2.
上司・同僚と良好な関係を築く能力を感じさせる褒めポイント
●「仕事で大切なことを厳しく指導してくださった上司には、大変感謝しています」
上司から親身な指導を受けたということを伝えると、上司と良好な関係を築けるだけの高いコミュニケーション力がある証拠と判断されます。逆に言えば、上司に気に入られていないと、きちんとした指導はしてもらえないものです。また、同僚との関係は、良い意味の競走があったことを感じさせることが大切です。つまり、切磋琢磨し合ったとかチームで高い目標を達成したというエピソードは、組織力を高める人物だと判断されます。
<「関係を築く能力を感じさせる」褒めポイント例>
- 「○○の仕事に長けた上司から直伝されたスキルがある」
- 「裏ワザまで細かく教えてもらった」
- 「苦手な仕事が得意になったのは厳しい上司のおかげ」
- 「切磋琢磨できる同僚と互いに刺激し合った」
- 「チームで高い目標を達成した」 など
ポイント3.
マイナスをプラスに捉える褒めポイント
●「××な仕事でしたが、そのお陰で△△能力が高められたことに感謝しています」
前職のマイナス要素は、プラスに捉えて発言しないと、単に悪口や愚痴を言っているように聞こえてしまう危険があります。悪口は、たとえ正当性があることであっても、応募者自身の評価を高めることにはつながりません。「後ろ向きな発言をする人」と思われ、評価が下がることが多くなります。どんなマイナスのことでもプラス面をしっかり分析することが大切です。マイナスをプラスに捉えた発言をすると、努力家、逆境に強い人、人間的にできた人と感じられ、好感を持たれます。
<「逆境をバネにした」褒めポイント例>
- 「休みがほとんど取れなかったが、お陰で仕事の効率化が身に付いた」
- 「ノルマが厳しかったが、お陰で必ず目標を達成する精神力が養われた」
- 「不規則な勤務時間だったが、お陰でスケジュール管理能力が身に付いた」
- 「同時進行で複数の仕事を担当する職場は大変忙しかったが、段取り力が上がった」
- 「業界全体が厳しい状況だったからこそ、全体を見通す視点が身に付いた」 など
繰り返しになりますが、面接の話題は、自分が方向性を決めることができるのです。退職理由を聞かれるのが不安な方は、褒め言葉(肯定的な発言・感謝の発言)を何十パターンも考えて、臨機応変に使えるよう準備しておくことをお勧めします。
プロフィール
就転職・キャリアコンサルタント
坂本直文(さかもと・なおふみ)
キャリアデザイン研究所代表。劇的就職塾主宰。大学講師。全国各地の大学にて年間200回以上講義。著書多数。近著に『就活ノート術』(日本実業出版社)、『人生のエントリーシート』(PHP研究所)。
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