「40代の転職・再就職」を成功させる秘訣(ひけつ)とは?
更新日:2024年06月12日
記事まとめ(要約)
- 20代、30代と比べると、厳しい現実があるのは確か
- 一方で経験豊富な40代を、即戦力として迎えたい企業も
- 若い世代にはない職務能力や実績を具体的にアピールする
- リーダーシップ・マネジメント力のアピールが有効な場合も
- 多くの求人情報をチェックするなど、視野を広げてチャンスを逃さない
「年齢が上がるにつれ、転職活動は厳しくなる」と一般的には言われています。現状はどうなのでしょうか? 今回は、人事の経験、多数の転職相談で実績のあるキャリアコンサルタントの谷所健一郎さんに、40代の転職市場について、業界別の現状や、転職・再就職を成功させるために必要なことなどをお伺いしました。
併せて2019年1月にマイナビが発表した、採用担当者を対象とする「中途採用業務の実績調査」から、40代の中途採用の現状についてもご紹介します。
現在の「40代の転職・再就職事情」は?
ヘッドハンティングの対象となるような専門性、業界内での実績があるなど一部の方を除くと、40代の転職は20代、30代の転職と比較すると厳しい現実があるのは確かです。
なぜなら、職務能力が同等であれば、企業は給与の条件面で採用がしやすく、適応力やポテンシャルが高いと考えられる20代、30代を採用することが多いためです。また、組織の年齢構成などの問題から、新卒採用で充足できなかった人材を補てんするために、中途採用で第二新卒を積極的に採用する企業もあります。
一方でニーズは少ないですが、経験豊富な40代を、即戦力として迎えたいと考える企業もあります。特に社歴が浅い企業や中小企業、新規プロジェクトを短期間で立ち上げたい企業などは、実践力のある人材が不足しているため、すぐに活躍できる人材を求める傾向が強いです。また管理部門を強化する場合、経験豊富な人材を採用したいと考える企業もあります。
ですから、「40代だから転職は厳しい」ではなく、「即戦力として活躍できる世代だ」と考えることが、40代で転職・再就職を成功させるカギになります。
【参考】最新版・中途採用担当者への「中途採用業務の実績調査」より抜粋
1.直近3年間に中途採用した年代(複数回答可)
40代は20代、30代に比べると低い傾向にあり、30代の正社員雇用が74.4%と最も高い結果に。従業員数300人以上の企業での正社員雇用は、30代が82.6%に対し、40代は58.0%と25ポイント近く差がある。
2.直近3年間に中途採用した40代の採用理由(複数回答可)
40代の採用理由は、「豊富な経験」が最も高く43.6%。ほか「専門性が高い」など即戦力や実践力が求められているであろう回答も高い傾向にある。
- 2019年1月31日発表 マイナビ「中途採用業務の実績調査」より
調査主体:株式会社マイナビ
調査方法 :外部調査機関によるインターネット調査
調査対象者 :全国/直近3年以内に中途採用の募集をしていた企業の中途採用担当者
回答数 :2,665件
調査時期:2018年9月28日(金)~10月11日(木)
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40代の転職希望者がつまずく原因とは?
「40代の転職が厳しい」と言われる理由として、40代の転職希望者がつまずきやすいポイントがいくつかあります。しかしそれらは、自分の考え方やアピールの仕方を変えることで克服できることが多いのです。
【1】「年齢が高いから無理」と固定概念にとらわれている
40代の転職希望者は、数社不採用になると「年齢が高いからうまくいかない」と考え、転職・再就職活動を簡単にあきらめてしまう傾向があります。このような方は、年齢を気にするあまり「どうせダメだろう」という先入観が先走り、応募企業で発揮できる能力を十分にアピールできていない可能性が高いです。
しかし企業は、年齢以上に「自社が求めている人材とのマッチング」を見極めています。もちろん年齢的な給与のテーブル、ポストの問題などもありますが、応募企業が求めるスキルや経験を踏まえたうえで、積極的なアピールを心掛けてください。
【2】過去の経歴や実績にこだわっている
これまでのプライドが邪魔をして、転職・再就職がうまくいかない方もいます。例えば「前職が大企業だった」「年収が高かった」、あるいは「部下が大勢いた」というプライド意識が採用担当者に伝わり、なかなか採用に至らないのです。
環境が変われば新人としてイチからスタートする位の気持ちが必要です。また、前職が大企業だからといって、同等規模の企業に転職・再就職できるとは限りません。むしろ大企業で培った経験や人脈を中小企業で生かしていく姿勢で臨んでください。
【3】年収ダウンを恐れている
もちろん生活のうえで年収は大切なポイントですが、初任給や初年度年収へのこだわりが強いため採用に至らないこともあります。40代では、転職・再就職時に年収が下がることもありますが、入社後活躍する人材になれば、昇給、昇格のチャンスは十分あります。
これまでの年収は、前職で築き上げてきた実績です。転職・再就職先企業では何も実績がないことを考えれば、一時的な年収ダウンも想定して活動する必要があるかもしれません。
【4】企業が求める人材像を見極めきれていない
管理業務ではなく、実務担当者として勤務したいということで転職を考える方がいますが、20代、30代の求職者と同等の職務能力であれば、企業は現状の給与や年収の低い方=若年層を採用します。
40代であれば、若い世代にはない職務能力や実績を具体的にアピールする必要があります。また、マネジメント能力を問われることも多くなります。その場合は、たとえ役職経験がなくてもリーダーシップや後輩指導・育成力、チームやプロジェクトのマネジメント力があることをアピールしましょう。
【5】「会社になじめる人物か」も重要なポイント
40代の転職では、職務能力だけでなく、良好な人間関係を築けるかという組織適応力もチェックされます。面接で「これまでに人間関係で困ったことは?」など適応力を見極める質問を受けることがありますが、良好な人間関係を築いてきたと回答するだけでなく、回答時の表情にも注意して明るく対応してください。
優秀な人材でも表情が暗い応募者であれば、面接官は「ほかの社員とうまくやれないのでは」と採用を躊躇します。40代の転職・再就職では、上司が自分より若いケースもありますので、応募企業になじめる人材であることが求められます。
【6】職務経歴書の書き方に工夫が必要
これまでの経験が多いため、どうしても職務経歴書が長くなってしまう傾向があります。やってきたことを羅列するのではなく、応募企業で生かせる経験や実績を強調して記載する必要があります。また現職や前職の経験をアピールしたい場合は、現在から過去にさかのぼって逆年代で記載する方法もあります。
40代の転職・再就職に有利な業界は?
異業界への転職・再就職は難しい? 同業界への転職のほうが有利?
異業界だから転職が難しいということはありません。40代の転職・再就職ではこれまでの職種・職務内容が重視される傾向がありますので、企業は自社が求める職務のスペシャリストであれば、業界を問わず実績やノウハウを取り入れたいと考えます。異業界にチャレンジする場合は、異業界だからこそ生かせる経験がないか考えてみてください。
同業界の転職・再就職では、即戦力としての活躍が期待できる面では有利ですが、「なぜ同業界に転職するのか」と疑問を持たれるケースがあります。また同業界だけに前職の企業とトラブルにならないかと懸念を持たれることがありますので、円満に退社していることを伝えてください。
異業界への転職・再就職を目指す場合のポイントは?
求人を実施する企業の中には、「異業界の方法を取り入れて、ビジネスを成功に導きたい」と考えている場合があります。「業界経験がないから、知識がない」と思うのではなく、業界の状況を十分リサーチしたうえで、自らの経験がどう生かせるのかを考えてください。そして新たな旋風を巻き起こすくらいの熱意で臨みましょう。なぜ異業界なのかという点も抽象的な理由ではなく、採用担当者を納得させる具体的な説明が必要です。
異業界への転職・再就職で、有利な業界は?
最近の傾向では、建築業界、不動産業界、介護業界、飲食業界など好況を受け業務拡張や増員したいため積極的に求人を行っている企業は、異業界出身者であっても経験豊富な人材を積極的に採用したいと考えています。
同業界への転職・再就職を目指す場合のポイントは?
同業界であれば、入社後発揮できる能力をより具体的に示す必要があります。これまでの人脈や販路などを生かせるなら、即戦力として貢献できることをアピールしてください。「前職ではできなかったことを、応募企業ではできる」ことを示す方法もありますが、同業界だけに前職の批判に聞こえてしまわないよう注意してください。
同業界への転職・再就職で、有利な業界は?
最近のIT関連職種では、年齢にこだわらず経験や実力のある人材を採用する企業が増えています。
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40代転職・再就職を成功させるために必要なこととは?
40代の転職・再就職を成功させる3つのポイントをお伝えします。
【ポイント1】「なりたい自分」より「なるべき自分」
40代の転職・再就職では、やりたいことを優先させるのではなく、経験を生かしてできることを整理してください。そのためには、これまでの仕事を振り返り、他社でも汎用できる、得意とする職務能力を箇条書きで書き出してみましょう。40代の転職・再就職では、「なりたい自分」ではなく「なるべき自分」について考えてみることが大切です。
【ポイント2】「プラスアルファの売り」をアピール
企業が求めている職務能力に加えて、40代の豊富な経験のなかから、採用担当者が想定していない「応募企業で生かせるプラスアルファの経験やスキル」をアピールすることで、採用の決め手になることもあります。求人情報の応募条件だけでなく、ホームページなどで企業情報をチェックし、採用したいと思わせるプラスアルファのアピール材料がないか検討してください。
【ポイント3】素直さ・向上心・ストレス耐性を意識
素直さ
今更と思うかもしれませんが、「固定観念にとらわれ頑固だ」と思われないためにも、素直な気持で臨んでください。過去の実績を語る際、採用担当者によっては自慢話に聞こえてしまうことがあるかもしれません。謙虚な姿勢で、自分の実績をどのように応募企業で生かせるか説明することが大切です。採用担当者の説明にあいづちを打ち、共感する姿勢を示すだけでも素直さをアピールできます。
向上心
40代の転職・再就職希望者の中には、「今から新しいことを覚えられない」という方がいますが、環境が変われば新たな仕事にチャレンジしていく向上心が求められます。
ストレス耐性
困難な問題に直面しても乗り越えていけるストレス耐性も40代の転職者の売りです。経験豊富な40代だからこそ、確実に貢献できる人材であることをこれまでの経験や実績を踏まえてアピールしてください。
40代に有効な転職・再就職活動方法は?
複数の情報源を活用する
なるべく多くの求人情報をチェックしてください。40代の転職では「〜しかできない」「〜でなければならない」といった固定観念を捨て、企業規模や業界にとらわれず興味が持てる企業を探すことが大切です。
企業が求めている人材像を把握し、これまでの経験を生かせるのであれば、積極的に応募してください。自分では大した経験ではないと思っていることが、応募企業では高い評価を受けることもあります。
更に人材紹介会社のポータルサイトを利用し、これまでの経験と関連する求人があれば、人材紹介会社に登録するのも良いでしょう。
人脈、直接応募など視野を広げることも有効
40代の転職・再就職では、知人や友人の紹介で採用が決まるケースもありますので、信頼のおける知人、友人に転職を検討していることを伝えておくのもいいでしょう。
また、どうしてもチャレンジしたい分野がある場合は、求人を行っていなくても中小企業であれば経営者宛てに履歴書や職務経歴書を送付する方法もあります。ほかの応募者がいないため、興味を持つ可能性があります。40代だからこそ視野を広げてチャンスを逃さないようにしてください。
40代の転職・再就職は、自分の市場価値を把握することが大切
転職市場において、あなたの価値は変化し続けています。以前の転職がうまくいったからといって現在も同じとは限りません。自分の市場価値を把握したうえで、転職活動に挑むことが転職の成功へとつながります。
求人情報の応募資格から把握する
企業が欲しい能力や経験に該当する転職希望者が少なければ、市場価値は高いと言えます。一方、自分が生かせる経験と合致する求人が多い場合も、企業が必要としている人材であり、転職市場価値が高いと言えます。
多くの求人情報を見て、自分の経験のなかでも市場価値が高いと思われる要素(経験、知識など)を把握しておきましょう。
人材紹介会社で、客観的な意見を得る
人材紹介会社のキャリアコーディネーターなどと面談し、これまでの経歴などを話したうえで、自分の市場価値について聞いてみるのも一つの方法です。
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監修者
谷所 健一郎(ヤドケン)
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
有限会社キャリアドメイン 代表取締役
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例」(マイナビ出版)、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。
マイナビ転職 編集部
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