キャリアアップしたい経理担当者にオススメの資格は? メリットと難易度を解説
更新日:2025年03月28日

監修者岡 和恵
税理士、CFP、認定経営革新等支援機関
記事まとめ(要約)
- 経理業務に役立つ資格は多く、取得することで得られるメリットがある
- 資格を持つことで、自身のスキルを会社に分かりやすくアピールできる
- 経理におすすめの資格は日商簿記、公認会計士、FASS検定など
- 難易度などを踏まえて、自分に合った勉強法を探す
会社における経理業務は、日々の売り上げや仕入れの管理から給与計算、税金関係の計算と書類作成など多岐にわたります。すべて会社の現状を表し、経営方針の判断の指針となるだけに、経理担当にも相応のスキルが求められます。経理担当者としてよりキャリアアップするため、あるいは転職を有利にするためには資格の取得が効果的です。資格を取得するメリットやおすすめの資格について詳しく解説します。
経理業務に資格は必要?
会社で経理を担当する場合、資格の有無は必ずしも問われるものではありません。しかし、経理業務に役立つ資格は多く、取得することで得られるメリットがあります。
経理業務と資格の関係
経理担当に求められる業務にはさまざまなものがありますが、基本は会社の「会計」に関わっています。
特に中小企業の経理担当は、取引における現預金管理などの日々行う業務、給与計算などの月ごとの業務、そして税務申告や年末調整などの年単位で行う業務を同時に、しかも正確にこなさなければならないため、会社としては優秀なスキルを持つ担当者を置きたいところです。
経理担当者が「資格を持つ」ことは、自身のスキルを会社に分かりやすくアピールできるということです。
資格を持つメリット、持たないデメリット
経理業務で資格を持つことのメリットには、以下があります。
- 経理業務に関する知識が深まる
- より専門性を必要とする役割を任される、部署に異動できるなど、昇給・昇進が期待できる
- 転職時に採用担当者へスキルを証明できるため、より条件の良い会社に入れるなど、有利に働く
- 向上心をアピールできる
- 取得する資格によっては、将来的な独立・開業も視野に入れられる
一方で、資格を持たないことのデメリットは次のとおりです。
- 転職時に有資格者と比較され選考が不利になる恐れがある
- 知識やスキルに対する客観的な指標がないため、正当に評価されなかったり、任される業務範囲が限定される恐れがある
仕事に対するモチベーションを維持するためや、客観的な評価として、資格の有無は重要なポイントになります。ただし、資格は難易度の差はあるものの、どれも一朝一夕で取得できるものではありません。勉強が必要ですし、それなりの費用を要する場合もあります。
しかし、それを差し引いても資格を持つことは、キャリアアップのためには非常に役立つと言えるでしょう。
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経理担当者に求められるスキル
経理担当者として実際必要とされるスキルはどのようなものなのでしょうか。求められるスキルが分かれば、おのずと目標とする資格も明確になってきます。

資料作成スキル
経理業務は、会社の経営上必要な計算をし、数字を表として管理するだけではなく、表示された数字をどのように解釈・分析し、提案できるかがスキルとして問われます。
第三者が見て健全な経営を行っているかどうかが分かることはもちろん、自社の経営陣が経営状況を把握するのにも役立ちます。今後の判断材料となりうる資料を作成できる経理担当者は重宝されるでしょう。
売り上げや仕入れの管理、給与や社会保険の計算、決算書の作成、更に法人税、消費税の申告など方向性も目的も違うそれぞれの業務を、一手に担うのが経理担当者です。
各数字を突き合わせることで見えてくる課題があるかもしれません。
担当者自ら課題提案を行えることも素晴らしいですが、経営陣が今後の課題や方針に気づきやすい整然とした資料を作成できることが重要です。
コミュニケーションスキル
社内のあらゆる部署と密接な関係を持つ経理を担当するためには、コミュニケーションスキルが欠かせません。
部内や各部署との連携はもちろん、他部署間の円滑なつながりをキープすることも大切です。会社は全体として利益を追求する団体であり、その目的を達成するために各部署がさまざまな業務を行いますが、各業務の結果を「数字」という指針で俯瞰(ふかん)できるのが経理だからです。
社内から数字的な報告を求められた時に、相手に応じて説明の内容や、何に重きを置いて報告するかを判断し、時には自身の意見を述べることができるスキルは、経理担当者にとって大切なものだと言えます。
一方で開示できる情報とそうでない情報を常に判断できること、場を取り繕うため安易な請け合いをしないという冷静さも必要とされます。
分析スキル
分析スキルは、経理担当者が自身のキャリアアップをかなえるために手に入れておきたいスキルです。資料作成とつながるところもありますが、より経理が扱う各「数字」に関する高度な分析力が求められます。
表れた数字を根拠として自社の現状を分析し、経営課題や今後の方針について自ら積極的に発信できる力のある経理担当者の存在は、会社にとって心強い存在です。昇進、昇給、そして転職にも有利に働くことになるでしょう。
経理におすすめの資格一覧
ここまで、経理業務が重要であること、幅広い知識を持つことが大切であることを説明しました。
前章で述べたスキルは、経理の仕事をしていくうちに身に付くものももちろんありますが、転職時や新人として入社する際に、会社の採用担当が「この人物なら安心して経理を任せられそうだ」と大きな指標にできるのが「資格」の有無なのです。
この章では、経理担当者が取得しておくとキャリアアップや転職に役立つ7つの資格を紹介します。
日商簿記
簿記とは、会社などにおいて取引をはじめとしたお金にまつわる活動を記録し、財務諸表を作成するといった、経営状態を明らかにするため必要な一連の知識および技術のことを言います。「日商簿記」の資格を持っていると、上記の技術・知識がどの程度あるかという目安となります。
日商簿記は主として1~3級までありますが、このうち2級のレベルは、公式サイトによると「経営管理に役立つ知識として、企業からもっとも求められる資格の一つ。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル」と位置付けられています。
採用担当者が経理を任せられる人物を選択するうえで、指針となる資格と言えるでしょう。
簿記2級の試験は年に3度(2、6、11月)行われ、合格率は実施日によってかなり上下しますが、164回(2023年6月11日実施)試験における2級合格率は21.1%となっています。
出典:日本商工会議所「商工会議所の検定試験 簿記2級のレベル」「2級受験者データ(統一試験)」
公認会計士
公認会計士は、企業などに対し独立した立場で監査を実施したり、企業の経営に関する助言や指導を行ったりする、会計のトータルサポートを担う国家資格です。
公認会計士でなければ行えない「独占業務」も相当数あることから、会社の経理担当者になるためにおすすめというよりは、経理担当者が独立開業などのステップアップのために目指す資格と言えるでしょう。
取得のためには経理業務だけでなく、企業の内部統制システムやIFRS(国際財務報告基準のことで、国際的会計処理ルールを言う)など、よりグローバルな知識が求められる資格です。
金融庁の発表によると、令和4年公認会計士試験の合格率は7.7%となっています。
出典:金融庁「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」
FASS検定
FASS検定は2005年に始まった新しい資格です。
経済産業省が主体となり、経理に求められる力の中でも実務能力に重きをおいた試験内容となっています。例えば会社の「固定資産」に関する知識が、簿記の試験では主に仕訳について問われるのに対し、FASS検定では実際に使用する帳票名に至るまで総合的に問われるといった感じです。
すでに簿記2級を持っているのであれば、仕訳スキルや実務能力もあることをアピールするためにFASS検定を受けておくのはいかがでしょう。
ちなみにFASS検定の結果は合否ではなくA~Eの5レベルなどでの評価になります。検定は年2回実施され、経済産業省 経理・財務人材育成事業公式サイト「FASS検定 受験者データ」によると、最高ランクのA評価取得率は2023年9月末時点で16%となっています。
参照:経済産業省 経理・財務人材育成事業公式サイト「FASS検定 受験者データ」
給与計算実務能力検定
給与計算実務能力検定とは、一般社団法人実務能力開発支援協会が主催する、給与計算業務に特化した試験です。
給与計算は経理の重要な業務の一つですが、正確に行うには社会保険や所得税などの仕組みおよび知識を身に付けねばなりません。給与計算実務能力検定は、これらの幅広い知識を使って正しく給与計算ができるというバロメーターとなる資格なのです。
検定試験は、2級であれば年2度、1級は年1度実施されます。同協会が公表している受験者と合格率の推移のデータによると、2023年3月19日試験の2級合格率は74.17%、2022年11月23日試験の1級合格率は47.85%です。
出典:一般社団法人実務能力開発支援協会「給与計算実務能力検定試験®受験者と合格率の推移」
ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定
ファイナンシャル・プランナー(FP)は一般的によく知られている資格です。経理のみならず年金やローン問題などの相談にも対応し、企業だけでなく個人向けの資金形成や将来に向けたお金のプランニングを行っています。いわばお金のスペシャリストです。
FPの資格は、自身がお金に関する多様な知識を有することをアピールできるものですが、会社向けのアピールであれば2級以上を持っていたほうがいいでしょう。
FP技能検定は現在、NPO法人日本FP協会と一般社団法人金融財政事情研究会の2団体が実施しています。3級および2級の学科試験については、同一試験日に各級がそれぞれ同一の試験問題です。
日本FP協会における2023年5月実施分の2級試験合格率は、学科試験が48.82%、実技試験が58.61%となっています。
出典:NPO法人日本FP協会「2023年5月実施2級FP技能検定試験結果について」
MOS検定
MOS(Microsoft Office Specialist) 検定とは、マイクロソフト社の製品である「Office」の利用について一定のスキルを証明する資格です。
ExcelやWord、PowerPointなどのOfficeソフトの機能に関する知識は、現代の経理業務において、ある程度持っていることが前提とされています。自身がどの程度これらのソフトについて熟知しているかを証明するために、資格を取得しておいて損はないでしょう。
会社に対するスキル証明であれば「エキスパートレベル」の取得を目指しましょう。試験は全国一斉試験、随時試験を併せれば毎月頻繁に実施されています。合格率は実施機関から発表されていませんが、エキスパートレベルで約60%といわれています。
税理士
税理士は「税」に関する専門家で、公認会計士と同じく国家資格です。
経理において税に関する業務は法人税、所得税、消費税など多岐にわたり、専門知識が求められる分野です。そのため、税理士の資格があれば経理で重宝されることは間違いないものの、一つの会社に雇用されるのではなく、税理士として独立開業し、複数の会社と税に関する顧問契約を結ぶという形が一般的です。
国税庁が公表している「令和4年度(第72回)税理士試験結果」によると、合格率は19.5%です。ただし、この合格率は一部科目の合格者数も含まれているため、税理士資格が得られる5科目到達者数で考えると合格率は大幅に下がります。
出典:国税庁「令和4年度(第72回)税理士試験結果」
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経理資格を取得するための勉強方法は?
働きながら資格を取得するためには効率の良い勉強方法を知りたいものです。以下に紹介する方法のうち、資格の難易度や現在自身が持っている知識なども踏まえて、自分に合った勉強法を探してみましょう。

独学
資格取得のためのテキストをそろえ、一人で取り組みます。自宅はもちろん、移動時間やスキマ時間を利用するなど、自分でペース配分して勉強できます。
独学で臨む資格は、すでに取得している資格の級を上げたり、すでに得ている知識を試験に生かせたりするものが向いています。また、一人でも勉強習慣をしっかり継続する意思を持つことが大切です。
YouTube
実際に資格を持つ動画クリエイターが展開する、試験合格のためのチャンネルは、昨今非常に多くなってきています。合格に必要な知識から効果的な勉強法、合格後の心得に至るまでテンポよく、分かりやすく講義してくれる動画を参考にすることは、勉強の取り掛かり方や継続に役立つ場合が多いでしょう。
ただし、動画だけで分かった気にならず復習をすることが大切です。必ずしもすべての動画が無料ではないこともあるので、事前に確認しましょう。
有料講座を受講する
有料講座の受講は、資格取得のためのオーソドックスな勉強方法です。費用がかかることもあり、結果を出すための勉強意欲がより湧くでしょう。オンライン講義に対応していることも多い傾向です。
自分でスケジュールを組んで勉強するのが苦手な人や、取得を目指す資格の知識がほとんどない人にもおすすめです。
まとめ
経理担当として社内で評価を得るため、また、経理業務のプロとして転職を有利に進めるために、目的は違っても経理に関する資格を取得しておくことは必ずプラスに働きます。取得のための勉強を進めるうちに、自身の仕事が会社や世の中でどのような役割を果たしているかなどの気づきも得られるでしょう。
自分の目標や将来の展望などを踏まえて、資格取得に挑戦することをおすすめします。
監修者
岡 和恵
税理士、CFP、認定経営革新等支援機関
2019年より税理士事務所を開業し、個人事業主を中心に支援。所得税を中心とした執筆および監修を手掛ける。
マイナビ転職 編集部
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