「仕事辞めたいけど言えない……」を脱却!
専門家&経験者
が教える
不安別対処法
仕事や職場への不満から「仕事辞めたい」と思いながらも、なかなか口に出して言えない……。そんな悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。そこで「仕事辞めたいけど言えない」と悩んだ転職経験者に言い出せなかった理由をアンケートしました。
実際に、「転職経験者が言い出せない時にどう工夫したのか」や、キャリアアドバイザーからのアドバイスも紹介しますので、併せてチェックしてみてくださいね。
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仕事を辞めたいけど言えない理由は?
転職経験者に聞いたところ、「仕事辞めたいけど言えない」と悩んだ人は71.3%にも上りました。では、転職経験者が仕事を辞めたいと言えなかった理由は何だったのでしょうか?
Q.仕事を辞めたいけど言えない理由は?(複数回答)
これらの理由を大きく分けると「転職することへの不安」「会社や周囲に対する気掛かり」「上司への言い出しづらさ」の3種類になりそうです。では、このような理由で辞めると言い出せない場合にどう対処すればいいのでしょうか。
3つに分類あなたが「仕事辞めたいけど言えない」理由は?
転職への不安別、「仕事辞めたいけど言えない」時の対処法
まず、「お金や生活に不安があったから」「辞めたら後悔するのではないかと不安だったから」など、転職することへの不安についての回答を詳しく見ると
- 転職した結果、給与が下がるのではないかと悩んだ
- 勤務時間・休暇・残業手当の実態など、入社しないと分からないことが多く不安だった
- 転職先でうまくやっていける自信がなかった
- 前よりいい仕事が見つけられるかどうか不安だった
という声が上がりました。一口に不安と言っても人によってさまざまな理由があるようです。では、これらの不安によって仕事を辞める決心がつかない場合、どのように対処すればいいのか。ここからは不安別にキャリアアドバイザー谷所健一郎氏のアドバイスを紹介していきます。
Q.給与・待遇が下がることが不安で辞められない場合の対処法は?
転職後の初任給は、現状よりダウンすることがあります。これまでの給与が入社後積み上げてきた成果だと捉えることもできるからです。しかし、一時的にダウンしても実績や経験を積んでいくことで、前職以上の給与を得ることも珍しくありません。
転職後の展望を知るためにも、求人情報や面接などで入社後のキャリアパスについて確認しておくといいでしょう。入社時の給与が高くても、昇給、昇格のチャンスがなければ長い目で見るとプラスにならない可能性があり、モチベーションも下がってしまうかもしれません。
また、給与の内訳にも注意を。報奨金など実績に伴う給与のウエイトが高いと、給与の変動が大きくなるケースもあります。
現状より初任給が下がっても昇給、昇格のチャンスがあり、転職でかなえたいことが実現できる仕事であれば、ぜひチャレンジしてください。最近は副業ができる会社も増えています。給与を補うための副業を視野に入れ、お金や生活の不安を解消するという方法もあるでしょう。
Q.労働環境が悪化するのではという不安で辞められない場合の対処法は?
勤務時間・休日など労働環境が悪化するのではという不安があるならば、転職は慎重に考えるべきです。労働環境が悪くなっても転職したい理由について、じっくり考えてみてください。「仕事内容、やりがいなど現職にも魅力を感じているけれど、何となく環境を変えたい」程度の気持ちならば、今は転職するタイミングではないかもしれません。
労働環境が悪化しても転職先だからこそやりたいことが実現できる、あるいは身に付くスキル、給与など広い視点で現職と比較してメリットがあると考えるならば、転職すべきではないでしょうか。
転職先の残業時間やサービス残業の有無などの不安を解消する方法として、面接で「前職でも効率を考えて積極的に残業を行いましたが、御社ではどの程度の残業時間でしょうか?」と尋ねてみることもできます。
更に、サービス残業がない会社へ転職したいならば、「前職ではサービス残業がありましたが、御社はどうでしょうか?」と質問をしてみましょう。
Q.転職先でうまくやっていけるかという不安で辞められない場合の対処法は?
新しい仕事になじめないのではという不安は、転職する誰しもが抱えるものです。スキルや職務能力に不安があるならば、必要とされる職務能力について自己啓発をするなど、高める努力をしてください。もっとも、通常数カ月経過すれば、多くの方は転職先の仕事にも慣れて転職前の不安を払拭できます。
転職したら次がないわけではありません。どうしても仕事になじめなければ、また転職すればいいという割り切りも必要です。新しい仕事に興味があるならば、一歩踏み出してください。
また、新しい職場での人間関係に不安がある場合は、面接時に社員の特徴や社風などの質問をしてみると良いでしょう。そうすることで、おおよその人間関係が分かることがあります。また面接官が配属先の上司の場合に、対応が上から目線で回答を親身に聴かない様子であれば、入社後に人間関係でストレスを抱える可能性もあるかもしれません。
人間関係の不安を払拭するために、内定後に配属予定部署の上司やスタッフと面談させてほしいと申し出てみるのも一つの方法です。「面談などは入社後でいいよ」など面談を拒否する会社ならば、内定者の不安を理解しない企業体質であり、入社を慎重に検討すべきかもしれません。
面接や内定後の面談で、仕事の仕方やチーム体制などの話を聴くことで、仕事の進め方や人間関係に対する不安を払拭できることもあります。気になる点があるならばそのままにせず、採用担当者に入社の意欲を示しながら、確認をしてください。
Q.「今よりいい仕事か、実際に転職してみないと分からないのが不安」と感じる転職者も多いよう。「今よりいい仕事」を見極めるコツは?
「今よりいい仕事」とは人それぞれ違いますが、基本は「携わる仕事により自身の存在価値を見いだせる」のがいい仕事です。また、今の仕事の何が不満・問題なのかを整理し、その不満や問題が改善できそうな仕事も、今よりいい仕事と言えるのではないでしょうか。
仕事がつまらない、やる気がわかないと感じているなら、具体的に何がつまらないのか、どうしてやる気がわかないのか考えてみてください。例えば、頑張っても評価されないことが不満であれば、正当な評価をする会社が今よりいい仕事になるかもしれません。
「今よりいい仕事に就けるか不安だから転職に思い切れない」方は、まずは転職でかなえたいことを明確にしたうえで、求人情報をチェックし興味のある会社へ応募してみてください。転職活動は、待っているだけでは何も変わりません。
一歩踏み出すことで、予想もしていなかった会社との縁が生まれることもあります。転職活動をしてみて「自分にとって今よりいい仕事」と巡り合えなければ、転職せずにとどまるというのも選択肢の一つです。
転職で多くのことを求めるのではなく、「自分にとって今よりいい仕事」の条件を絞り込んだうえで、実現できる可能性がある会社へ積極的に転職活動を行ってください。
会社や周囲に対する気掛かりで「仕事辞めたいけど言えない」時の対処法
「会社や同僚に申し訳なかったから」など、周りへの影響を気にして言い出せないというパターンについて、回答を詳しく見ると以下のような声が上がりました。
- 良くしてくれた人達の負担が増えると思うと言い出せなかった
- 辞める人が大量にいて、自分も辞めると言いにくかった
- お世話になり後ろめたかった
- 今の業務を引き継ぎできる相手がいなかった
このようなケースはどのように対処すればいいのでしょうか?
Q.人手不足で、自分が辞めたら仕事が回らなくなってしまう時はどうすればいい?
辞めたら在職中の同僚に迷惑を掛けると考える方は、責任感や思いやりの気持ちがある人だと思います。しかし、このままずっと辞めずに現職で仕事を続けていくことができるのか考えてみてください。
自信が持てないならば、いつかどこかで踏ん切りをつける必要があるのです。一人辞めることで仕事が回らなくなる会社であれば、遅かれ早かれ回らなくなりますし、現実は、辞めても回っているものです。
突然辞めれば会社や同僚に迷惑を掛けますが、あらかじめ申し出ることで、会社は退職までの期間に新たな人員の採用や異動などを行えます。なかには、「辞めてもらっては困る」と言えば思いとどまると考え、積極的に求人を行わない会社もあります。しかし、人員の補充は会社が考えるべきことなので、ご自身の意思を貫いても問題ありません。
場合によっては就業規則で退職日の1カ月前に申し出ればいいと定められていても、実際の退職日を2カ月後にする程度の譲歩は求められるかもしれませんが、きちんと決められた退職手続きや引き継ぎ作業を行うならば、気にする必要はないでしょう。
Q.少しでも周りに負担を掛けないためには?
負担を掛けずに辞めたいと思うなら、人事異動を検討する時期や異動後の転職はできる限り避けたほうがいいかもしれません。人事異動後すぐに退職すると、会社全体の人員配置そのものを検討し直さなければいけなくなることもあります。
また退職を申し出るタイミングは、内定をもらい退職を決断した時点がいいでしょう。後任者のことなどを考えて内定をもらう前に退職の意志を伝える方がいますが、転職活動が上手くいかず現職にとどまるという選択になる可能性もあります。
会社側が退職手続きを進めてしまった後に取り消すと、余計な作業を強いてしまうことにもなりかねないため、内定後辞めると決断してから退職を申し出てください。
周りに負担を掛けない、円満退職するためには、後任者に対する引き継ぎを丁寧に行うことが重要でしょう。おすすめは、業務マニュアルを作成すること。後任者に直接引き継ぎができない場合でも、分かりやすいマニュアルがあれば安心して仕事ができます。お世話になったことに感謝の気持ちを持ちながら、引き継ぎや退職手続きを進めてください。
上司に「仕事辞めたい」と言いづらい時の対処法
最後に、最も多かった「上司に退職の話をしづらかったから」など、言い出せないというパターン。回答を詳しく見ると
- あまり話したことがない上司に報告しないといけなかったので
- パワハラに近い態度で接してきたり、不平等な扱いを受けたりしていたので
という声が上がりました。
退職は誰でも言い出しづらいもの。では、よりスムーズに、トラブルや気まずい思いをすることなく退職手続きを進めるにはどう対処すればいいのでしょうか?
〔 伝えるタイミング 〕
一般的なのは退職希望日の1~3カ月前ですが、就業規則に「退職日のX日前までに申し出ること」と定められているケースがほとんどです。まずは自社の規則を確認してください。そのうえで、年度の節目、かかわっている大きな仕事が終了した時など、引き継ぎがスムーズに進みやすいタイミングを選ぶと良いでしょう。
閑散期、会議の少ない日など上司の気持ちに余裕がある時期、曜日を選ぶのもポイントです。まずは口頭で「相談したいことがある」とアポイントを取り、後日あらためて退職の旨を伝えます。
ちなみに、この「口頭で声を掛ける」「アポイントを取る」のが難しいと感じる人も多いでしょう。今回のアンケート回答者の工夫を見ると以下のようなものがありました。
- たまたま休憩室で上司と二人きりになった時に伝えた
- いつもより早く出社し、ほかの職員が少ない時に伝えた
- 年に2回の賞与面談のタイミングで伝えられるよう、逆算して転職活動を進めた
- 異動や退職希望のある人が希望を伝えなければいけない期限があるので、その期間中に伝えた
切り出すタイミングに悩んで仕事を辞めたいと言い出せない人は、参考にしてみてもいいかもしれません。
〔 伝える相手は上司じゃなきゃダメ? 〕
基本的には、退職意向を伝える相手は直属の上司です。上司を通り越して更に上の上司に相談すると、人間関係が悪化し円満退職の妨げになる可能性もあります。
ただし、パワハラを受けているなどすでに上司とトラブルがあり、精神的に追い詰められているという場合は、信頼できる別の上司、人事やコンプライアンス関連部署に相談してみてください。上司と話すのが気まずいからと言って「メールで送る」「机の上に退職届を置いておく」というのは、後日受理していないと言われるリスクがあるのでおすすめできません。
〔 引き止められそうで心配 〕
引き止められてスムーズに退職できなくなるのを避けるためには、「引き止めの余地がある」と思わせないのが大切です。丁寧な物言いで今までお世話になったことへの感謝を伝えながらも、相談ではなく「決意」として話しましょう。覚悟を示すために退職願を持参し手渡すのも一つの方法です。
また、退職理由として会社への不満を挙げるのも、引き止めの口実を作ってしまうので良くありません。「家族の事情」「体調の悪化」「資格取得の勉強に専念したい」など個人的な理由であれば、会社も引き止めは難しいと判断してくれるでしょう。
≫ 退職願テンプレート・円満退職までのフロー
≫ 好印象を与える退職理由の伝え方
転職経験者が「仕事辞めたい」と言えたきっかけは?
仕事を辞めたいけど言えないと悩んでいた転職経験者が、辞めたいと言い出せたきっかけを聞いてみました。
Q.仕事を辞めたいと言えたきっかけは?
回答を詳しく見てみると、
- やってみたい仕事が中途採用していたので応募したら通った
- 一定の目標を達成し、別の場所で新たな仕事に挑戦したくなった
- 転職した知人の成功話を聞いて背中を押された
- 仕事が嫌すぎて体調を崩した
- 配属先の上司との仲が悪くなり、仕事がうまくいかなくなったため踏み切れた
という声が上がりました。「次の仕事が決まった」「やりたい仕事が見つかった」など、前向きな理由を挙げた人が3割ですが、一方で、言い出せないでいるうちに体調を崩してしまった、トラブルに合ってしまったというケースもあるようです。
「ずるずる続けてしまう」という人は?
このように「言い出せないけどずるずる続けてしまう」という状況を脱却するためには、どのように考えればいいのでしょうか。キャリアアドバイザーにアドバイスを伺いました。
Q.仕事を辞めたいけど言えないまま続けています。どうやってこの状況を脱却すればいい?
現状や将来に満足しているのであれば転職活動は必要ありませんが、何らかの不安や不満があり、今後も解決できる見込みがないならば先延ばしにすべきではありません。会社に不満を抱いて転職しようと考えるものの、何となく気持ちが収まり現職の仕事を続けている状況を繰り返しているようでは、仕事のモチベーションが上がりませんし、良い成果に繋がらないからです。
転職したい気持ちがあるならば、まずは3カ月間集中して活動してみてはいかがでしょうか。
3カ月集中して転職活動を行った結果「これだ!」と思う会社に巡り合わなければ、今は転職せず現職に打ち込むという選択もあります。
また、せっかく内定までもらっているのに、「もっといい会社があるのでは……」と転職を先延ばしにする方がいます。この場合、「もっといい会社」の定義が明確でどうしても譲れないならば転職活動を継続すべきですが、内定した会社で活躍する自分の姿がイメージでき、選考を通じて必要とされていると実感できるならば、転職してみても良いと思います。
転職は、これまでの労働環境や人間関係が変わるため、少なからずストレスになることがありますが、目的に合った転職であれば乗り越えていくことができます。勇気を出して挑戦してみてはいかがでしょうか。
まとめ
転職への不安、周囲への気遣い、上司への伝えにくさなど、さまざまな理由から「仕事辞めたいけど言えない」と悩んでいる人がいるようです。転職への不安から辞めたいけど言えない人は、お金や生活、労働環境、人間関係など具体的にどんな点に不安を抱えているのかを考え、1つずつ解決していくと良いでしょう。
一方、周囲への気遣い、上司への伝えにくさから辞めたいと言えない人は、タイミングが大事なようです。人事異動が発表される直後は避ける、閑散期や上司の余裕がある時、上司と二人きりになれるタイミングをあらかじめ見当つけておくなど、少しの配慮で言い出しやすくなるかもしれません。転職経験者の工夫も参考に、ぜひ一歩踏み出してみてくださいね。
調査対象:転職経験者129名
調査方法:インターネットリサーチ マイナビニュース調べ(2020年3月)
監修: 谷所健一郎
(やどころけんいちろう)
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメントアドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職道場、キャリアドメインマリッジ、ジャパンヨガアカデミー相模大野を経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ)ほか多数。