ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用どちらを望む? それぞれの制度のメリット・デメリット
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一部の企業で導入され話題のジョブ型雇用。企業側は専門的な知見を持った人材を採用でき、採用後の研修時間やコストの削減が期待されます。対して、働き手にとっては「評価が厳しくなる?」「自分にジョブと言えるものがあるのだろうか?」などの不安を持つ人もいるようです。
そこでマイナビ転職では正規雇用者700名を対象に、ジョブ型雇用のイメージやメンバーシップ型と比較してどちらで働きたいか、ジョブ型雇用に対する不安や期待など、気になる実態を調べました。
※調査対象は、20代から50代の正規雇用者700人。WEB調査で2021年9月24日(金)~9月27日(月)までに行ったアンケート調査結果を基にしています。
ジョブ型よりメンバーシップ型を望むほうが高い。20代はわずかに「ジョブ型」が上
まず初めに、ジョブ型とメンバーシップ型どちらの雇用形態がいいか聞きました。ジョブ型を望む人は全体の24.6%。メンバーシップ型(32.1%)の意向がジョブ型をやや上回る結果となりました。
年代別で見ると、20代はほかの年代よりもジョブ型の意向がやや高く、唯一3割を超えています。社会人としての経験が浅く、新しい雇用形態に対しての抵抗がほかの年代よりも少ないことがうかがえます。
では、ジョブ型とメンバーシップ型、それぞれを望む理由にはどのような意見があるのでしょうか。理由を自由回答で聞いたところ、20代のジョブ型意向者は「一つの仕事を続けていきたい」に加えて、「自由な働き方ができそう」「自分の働き方に合っているから」など、働き方に対して自由や自分らしさを求める意見が散見されます。
対して、30~50代のメンバーシップ型意向者は「安定した雇用形態」「終身雇用が魅力的」など、将来の安心感を求める意見が散見されます。また、20代のメンバーシップ型意向者では、自分の向き不向きが判断しきれないままジョブが固定されることに不安を覚える意見も見られました。
【ジョブ型雇用意向の理由】
- 年功序列は嫌で、自分に合った仕事をやっていきたいから(20代)
- 転勤をしたくないことと、家庭と仕事を両立したいので慣れた分野で仕事をし、ストレスをなるべく減らしたい(20代)
- 職務内容が明確になる。責任の所在も明確になり、業務がスムーズになりそうだから(30代)
- 自分で職務を選ぶので、より納得して仕事をできそう(50代)
【メンバーシップ型雇用意向の理由】
- 自分の適性が、入社時には分からないと思うから(20代)
- 終身雇用が安心する。ジョブ型は不安がある(30代)
- 昇給や昇格により働いているという実感がわく(40代)
- スキルを求められても自信がない(40代)
【分からない】
- 職務内容や労働時間は固定がいいが、勤務地は色々チャンスを与えられるのもありがたい(20代)
- メンバーシップ型雇用にて正社員として働き、すきま時間にジョブ型雇用の副業をするのが一番手堅いと感じるため(30代)
- 地元に根ざす中小企業で、そういう雇用体系が想像できない(40代)
- 自分の専門職種を評価してほしいが、やはり終身雇用も魅力的だから(40代)
ジョブ型のイメージは「専門性を生かせそう」「能力主義・成果主義」
ジョブ型雇用のイメージを聞いたところ、最も回答が多かったのは「イメージができない」(31.1%)。まだまだ新しい雇用形態として、イメージできない人が一定数いるようです。2位と3位には、「専門性を生かせそう」(21.4%)、「能力主義・成果主義に偏りそう」(20.6%)が続きます。
ほかには「評価が厳しくなりそう」「柔軟な働き方ができそう」などが上位にランクインし、ポジティブなイメージもネガティブなイメージも同程度持たれている様子です。
給料は「変わらないと思う」が約半数(49.1%)
続いて、もしジョブ型雇用になったら自分の給料は上がると思うかを聞いたところ、「変わらないと思う」の回答が49.1%。「上がると思う」が16.1%、「下がると思う」が13.3%と「上がると思う」がわずかに上回る結果になりました。
年代別でみると、20代から40代で年代が若いほど「上がると思う」がやや高い傾向があります。ただし、いずれの年代も「変わらないと思う」が5割前後を占めており、ジョブ型による給料アップの期待値は低いことがうかがえます。
メンバーシップ型のメリットは「意外な自分の適性を見つけられる」「スキルが身に付く」
次にメンバーシップ型の特徴である、会社意向のジョブチェンジについて。今回のアンケート回答者に会社意向のジョブチェンジの経験を尋ねたところ、約半数が「経験あり」。また、ジョブチェンジ経験者に異動して良かったか悪かった聞いたところ、いずれの世代でも「良くなかった」の回答を「良かった」が上回る結果になりました。
ジョブチェンジについてどう思うかを聞いたところ、ジョブチェンジを伴う異動経験者は「意外な自分の適性を見つけられるかもしれない」(46.3%)、「さまざまなスキルが身に付けられる」(55.5%)が半数前後を占める結果に。ジョブチェンジを伴う異動を経験していない人に比べて10pt以上高く、新たな適性の発見やスキルの取得はメンバーシップ型のメリットであることがうかがえます。
一方で、ジョブチェンジの可能性を伴う働き方には不安もある様子。会社意向のジョブチェンジについて「良い刺激になる」「ストレスになる」どちらに近いか聞いたところ、「良い刺激になる(35.3%)」「環境が変わることはストレスになる(28.0%)」と、それぞれの回答は近い値に。
また、会社意向のジョブチェンジはメリット・デメリットどちらが大きいか聞いたところ、「デメリットが大きい(計・30.6%)」が「メリットが大きい(計・19.6%)」が上回る結果に。メリットは感じつつも、新たな環境や仕事に適応する労苦を考えると、できれば避けたい、という本音も垣間見える結果と言えるでしょう。
とはいえ、複数の職務を経験することはキャリア形成の面でも有用と言えそうです。ジョブチェンジを伴う異動経験者では、自分のジョブと言い切れるものが「ある・計」(47.9%)の割合が半数に迫る結果に。今のジョブが合っていると思うかという問いにも「合っていると思う・計」(47.8%)の割合が高く出ています。
異動によって複数のジョブを経験することが適性の開花やスキル向上につながり、自分のジョブと言い切る自信がつくことで、将来的にキャリアの方向性を固められることもメンバーシップ型のメリットと言えるでしょう。
ちなみに、「自分のジョブと言い切れるものがある?」「今のジョブは合っている?」「今のジョブを続けていきたい?」のいずれかの問いで「そう思う」「やや思う」と回答した407名に、現在のジョブにどのようにたどり着いたかを聞いてみたところ、「新卒入社時に選択した(24.1%)」「転職や社内公募でたどり着いた(31.4%)」と主体的に選んだジョブに就いている人は約半数。30代は4割が転職や社内公募と回答し、能動的にキャリアを選び取っているのも特徴的です。
一方で「会社意向のジョブチェンジで今のジョブについた」人も4割。特に、40代、50代に至っては約半数が会社意向の異動の結果のようです。
ジョブが明確になるほど、会社からの評価への満足度は高くなる傾向。
仕事ぶりを適切に評価されていると思うかを聞いたところ、「どちらともいえない」が42.1%と最も高く、「評価されていると思う・計」は30.7%でした。これをジョブの明確度別でみると、ジョブが明確になるほど「評価されていると思う・計」は高くなる傾向。
ジョブが明確な人の「評価されていると思う・計」は52.6%と、半数以上が会社からの評価に満足していることが分かります。この結果からジョブ型雇用の導入有無にかかわらず、ジョブを明確にすることは働き手の評価に対する満足度を向上させる効果が期待できるでしょう。
新たな雇用制度として導入企業が見られるジョブ型雇用。働き手の選択肢が増えるとともに、比較対象が現れたことで、既存のメンバーシップ型雇用の良さもあらためて見えてきたと言えるでしょう。
今回の調査では、ジョブ型雇用は新卒入社時にすでにやりたいジョブが定まっているなど、キャリアの初期からジョブが定まっている人の期待度が高い傾向。一方メンバーシップ型雇用は、ジョブチェンジを伴う異動を経験するなかで、自分のジョブを確立していけるという強みが浮き彫りになりました。
また、ジョブが明確になっている人ほど評価満足度が高いという傾向も明らかに。ジョブ型雇用の導入とは関係なく、個々の業務・評価基準を明確化していくことは、社員との関係性構築に効果的と言えます。中途採用においては職種別の求人募集が一般的で、ジョブ型の要素が以前から色濃くあります。企業のスムーズな人材確保の観点だけでなく、個人の(転職も視野に入れた)キャリアアップの観点からも、ジョブを明確にしていくこと自体は今後ますます必要とされるでしょう。
マイナビ転職 編集部
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【調査概要】マイナビ転職『ジョブ型雇用の意識調査』
調査期間:2021年9月24日(金)~9月27日(月)
調査方法:正規雇用者を対象にWEB調査を実施
有効回答数:700名(内訳:20歳~59歳の年代ごとに175名)
※グラフの内訳は端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
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【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社マイナビ
転職情報事業本部 サイト戦略広報部 ブランド推進課
Email:mt-brand@mynavi.jp
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