有限会社とは?株式会社との違いや働くうえでの違いを簡単に解説
更新日:2025年11月06日
記事まとめ(要約)
- 有限会社とは、株式会社と同じく法人格を持つ会社
- 小規模企業向けに設けられていたが、現在は新設できない
- 株式会社の設立要件が緩和され、有限会社制度の役割がなくなった
- 現在も「有限会社」として存続している企業も多い
「有限会社と株式会社って何が違うの?」「有限会社に転職しても大丈夫?」など、求人情報を見ていて疑問に思ったことはありませんか。
有限会社と株式会社は設立要件や取締役の任期に違いがありますが、働くうえでの明確な違いはありません。有限会社と株式会社の違いやほかの会社形態について解説します。
有限会社とは?
「有限会社」とは会社形態の一つで、「株式会社」や「合同会社」などと同様に法人格を持ちます。ただし、2006年5月の会社法施行により、有限会社の新規設立はできなくなりました。
会社法施行以前は、有限会社と株式会社の設立要件・特徴に大きな違いがありました。株式会社は多額の資本金が必要なため社会的信用を得やすいなどのメリットがある一方、小規模で事業を起こしたい人には設立のハードルが高く不向きでした。
しかし、会社法施行によって株式会社の設立要件が緩和されたことで、株式会社設立を上回るメリットや有限会社の形態を維持する必要性が損なわれ、有限会社の新規設立が廃止されることが決まったのです。
それにより、すでに設立・運営されていた有限会社は、手続きをして株式会社に変更するか、有限会社の性質を残した「特例有限会社」として存続するかのどちらかを選ぶことになりました。
そのため、現在「有限会社」を名乗っているのは、2006年4月30日までに設立され、会社法が施行されてからも「特例有限会社」として存続することを選択した企業となります。
もともとは有限会社だった「特例有限会社」ですが、現在の法律上は株式会社の一種として扱われます。ただし、社名には「有限会社」を用いなければならない、株式会社では必須の決算公告の義務がないなど、有限会社としての特性を一部残しています。
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有限会社と株式会社の違い
前述のとおり、会社法施行以前は有限会社と株式会社に明確な違いがありました。長期的に見ると、設立ハードルの高い株式会社のほうが、経営の安定につながるといわれていた時代もありました。
しかし、会社法の施行により株式会社の設立要件が緩和されたことを受け、有限会社と株式会社は実質的に同等と見なされている状況です。
では、有限会社と株式会社の違いについて、具体的に見ていきましょう。
| 有限会社 | 株式会社 | |
|---|---|---|
| 会社法施行後(現在) | ||
| 社員数 | 制限なし | 制限なし |
| 取締役の 任期 |
無制限 | 原則2年 |
| 資本金 | 1円~ | 1円~ |
| 会社法施行前(2006年4月以前) | ||
| 社員数 | 50人以下 | 制限なし |
| 取締役の 任期 | 無制限 | 原則2年 |
| 資本金 | 300万円以上 | 1,000万円以上 |
社員数
社員数について、有限会社と株式会社それぞれの会社法施行前後の違いを見ていきましょう。
有限会社
- 施行前:50人以下
- 施行後:制限なし
施行前の社員数は50人以下で、取締役は1人と定められていました。施行後に特例有限会社として存続している会社は社員数に制限はなく、取締役は1人以上となりました。
株式会社
- 施行前:制限なし
- 施行後:制限なし
施行前は取締役を最低3人、代表取締役を1人選出する必要がありました。施行後は会社設立時に必要な役員数が会社規模にかかわらず取締役1人以上となりました。
このように現在は、有限会社と株式会社で社員数の条件に違いはありません。
取締役の任期
取締役の任期では、有限会社と株式会社で違いがあります。
有限会社
- 施行前:無期限
- 施行後:無期限
会社法施行後に特例有限会社となった会社においても、取締役の任期は無期限となっています。
株式会社
- 施行前:原則2年
- 施行後:原則2年
会社法施行後でも、取締役の任期は2年と定められています。
有限会社は「無期限」、株式会社では、「原則2年」となっています。
株式を譲渡する際に会社の承認が必要である規定を設けている「譲渡制限会社」の場合、定款で定めた独自の任期を最長10年まで延長できます。
株式会社は、施行前は会社設立時に就任した最初の取締役の任期は1年以内という規定があり、会社を設立した1年後に取締役を改選する必要がありました。
資本金額
資本金額についても、会社法施行前後の違いを見ていきましょう。
有限会社
- 施行前:300万円以上
- 施行後:1円~
会社法施行により特例有限会社も株式会社の一種と扱われるため、資本金は株式会社と同様に1円以上に設定できます。
株式会社
- 施行前:1,000万円以上
- 施行後:1円~
会社法の施行以前、設立には有限会社で「300万円以上」、株式会社で「1,000万円以上」の資本金が必要でした。
なお、2003年に株式会社を1円で設立できる制度がスタートしていましたが、5年以内に資本金1,000万円にする規定があり、5年で資本金1,000万円に届かなければ解散する必要がありました。
会社法施行後は、資本金1,000万円未満で設立した会社でも増資の必要なく、そのまま存続できるようになりました。
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会社法施行による主な変更点
- 最低資本金制度の撤廃
- 会社設立に必要な役員の人数が「取締役1名以上」に改定
- 株式会社と有限会社を統合し、1つの会社形態(株式会社)に
会社法の施行により、株式会社・有限会社共に定められていた最低資本金制度が撤廃され、「資本金1円」からの会社設立が可能に。同時に、会社設立時に必要な役員の人数は、企業規模にかかわらず「取締役1名以上」と定められました。
起業のハードルが格段に低くなったことで、もともと小規模企業向けに設けられていた有限会社の形態は不要となり、株式会社と有限会社が統合し、有限会社の新規設立はできなくなりました。
そのほかの会社形態にはどんなものがある?
ここまで、株式会社や有限会社(会社法施行前後)についてご紹介してきましたが、会社形態はそのほかにも存在するのをご存じでしょうか。そのほかの会社形態として挙げられるのは「持分会社」と呼ばれる形態で、「資金調達の方法」や「経営方法」が株式会社とは異なります。
持分会社とは?
持分会社とは、特定の出資者から資金を集めて運営する会社形態を指します。出資者は利益配分や経営についての決定権を持ち、実際の業務にも携わる点が特徴です。
更に、持分会社には「合同会社」「合名会社」「合資会社」の3つの形態があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。差別化される大きなポイントとしては、出資者が「有限責任社員」か「無限責任社員」という点です。
有限責任とは、万が一会社が負債を抱えても、出資した額の範囲内でのみ債権者への支払い責任を負うことを指します。対して、無限責任は、出資額にかかわらず上限なく支払い責任を負うため、個人の資産を用いてでも返済を行う必要があります。
合同会社の特徴
| 合同会社 | |
|---|---|
| 必要出資者数 | 1人 |
| 資本金 | 1円〜 |
| 出資者構成 | 有限責任社員のみ |
- 設立コストが低い(資本金1円~)
新規事業の立ち上げや個人事業の法人化などのため初期投資が難しい場合でもすぐに設立ができます。 - 出資者1名から設立可能
共同事業者やスポンサーが見つけられない場合でも法人設立が可能です。 - 原則社員全員が出資者兼経営者となる
社員と役員を兼ねているため、あらゆる意思決定がスムーズとなります。 - 会社運営の自由度が高い
出資比率を問わず利益分配でき、定款や規約の取り決めも設立者に委ねられています。 - 有限責任社員のみで構成
社員は有限責任とされるため、出資金額以上の負債を背負うリスクがありません。
合名会社の特徴
| 合名会社 | |
|---|---|
| 必要出資者数 | 1人 |
| 資本金 | 0円〜 |
| 出資者構成 | 無限責任社員のみ |
- 設立コストが低い(資本金0円~)
資本金の準備がなくても会社設立が可能です。 - 出資者1名から設立可能
合同会社と同様、共同事業者やスポンサーが見つけられない場合でも法人設立が可能です。 - 原則社員全員が出資者兼経営者となる
合同会社同様、すべての社員に意思決定の権限が与えられます。 - 会社運営の自由度が高い
全員が役員のため、柔軟に運営方針を決定できます。 - 株式会社や合同会社と比べメリットが少なく、知名度があまり高くない
合名会社を選択するうえでの有効な決め手が乏しく、そのほかの形態より知名度は高くありません。 - 無限責任社員のみで構成
会社が大きな負債を抱えた際に、個人資産を差し出し返済しなければならないリスクがあります。
合資会社の特徴
| 合資会社 | |
|---|---|
| 必要出資者数 | 2人 |
| 資本金 | 0円〜 |
| 出資者構成 | 有限責任社員と無限責任社員 |
- 設立コストが低い(資本金0円~)
合名会社同様、初期費用を抑えた会社設立が可能です。 - 出資者2名から設立可能
合同会社や合名会社とは異なり、自分以外に最低もう1人いなければ設立できません。 - 原則社員全員が出資者兼経営者となる
合同会社や合名会社と同様、全員が出資者であり経営者です。 - 会社運営の自由度が高い
合同会社、合名会社と同様、運営方針はすべて自分たちで決定できます。 - 株式会社や合同会社と比べメリットが少なく、知名度があまり高くない
合資会社ならではのメリットが少なく、一般的に知名度も高くありません。 - 有限責任社員と無限責任社員が最低1名ずつ必要
有限責任社員、無限責任社員の両方が必要なため、2名の出資者が必要です。
持分会社との違い
| 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
|---|---|---|---|
| 必要出資者数 | 1人 | 1人 | 2人 |
| 資本金 | 1円~ | 0円~ | 0円~ |
| 出資者構成 | 有限責任社員のみ | 無限責任社員のみ | 有限責任社員と無限責任社員 |
持分会社の社員とは出資者のことで、従業員として働く場合は責任を負う必要はありません。そのため、無限責任社員のみの合名会社で「従業員として働く」場合は、負債の支払い責任を負いません。
どの会社形態が一番多いの?
法務省が発表している「登記統計」の商業・法人を見ると、株式会社が103万1,370件、特例有限会社が16万3,407件、合同会社が12万6,623件、合名会社が739件、合資会社が2,853件となっています。
出典:登記統計(2024年)|法務省
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Q&A株式会社と有限会社の違いに関する質問
最後に、株式会社と有限会社の違いにまつわるよくある質問をご紹介します。
有限会社より株式会社のほうが安定しているのでしょうか?
株式会社だからといって有限会社よりも安定しているとは言えません。
会社法施行前に設立された有限会社は、設立時の資本金額が300万円以上あり、長く安定して経営している会社もあります。
一方、会社法施行以降に設立した株式会社は資本金額1円から設立できるため、すべての株式会社が安定しているとは言えません。
会社法施行後、有限会社と株式会社に大きな違いはなくなりました。特例有限会社として経営している会社の中には、社員数を増やし幅広い事業を展開していたり、規模は変えずに長く事業を続けていたりしている会社もあります。
会社の形態や特徴などを理解し、自分の求める働き方や職種と照らし合わせて考えることが大切です。
有限会社から株式会社に移行していない企業があるのはなぜですか?
株式会社に移行せず有限会社としている背景には、以下のようなメリットがあると考えられます。
- 取締役の任期がない
- 決算公告をしなくていい
会社法施行に伴い、有限会社は新しく設立できなくなりました。以前から存在していた有限会社は、現在も「有限会社」と名乗ることを条件に、特例有限会社として存在しています。
株式会社への変更手続きをすると有限会社に戻せず、こうしたメリットを得られなくなるため、あえて有限会社のままにしている企業もあります。
まとめ
有限会社は、会社法施行に伴い廃止された会社形態であるものの、現在も特例有限会社として存続している会社が多くあります。会社法施行前は設立要件で違いがありましたが、現在の法律上では有限会社も株式会社の一種として扱われています。
転職の際には、「有限会社」か「株式会社」で判断するのではなく、希望する働き方や職種など、自分に合った企業かどうかで判断し、選択するようにしましょう。
監修者
井口 豪
特定行政書士
行政書士いのくち法務事務所 代表
タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。就職情報誌や経営情報誌、ビジネス誌などでインタビュー記事の制作を担当するほか、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。その中で培った経験と人脈を生かし、行政書士いのくち法務事務所を運営。許認可申請、自動車関連手続き、遺言書作成サポートなどの法務に従事するほか、法務ライター®︎として執筆業や記事監修も手掛ける。ラジオ番組やYouTubeチャンネルでの解説や情報の発信も好評を博している。
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