
Step.6 円満退職する
5. 退職・転職を引き止められた時にやってはいけないことや上手にかわす方法
円満退職に向けて退職交渉をしていきたいと思っているものの、引き止めを受けた際にどのように対応すれば良いか不安に感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、退職交渉で引き止めを受けた場合の注意点や対処方法、引き止めされないように押さえておきたいポイントなどを解説します。
INDEX
退職を引き止める理由
そもそも会社はなぜ退職希望者を引き止めるのでしょうか。引き止める側の考え方を理解したうえで、スムーズに退職交渉を進められる方法を考えていきましょう。
あなたを優秀な人材と評価しているから
退職交渉をする相手は直属の上司や所属組織の責任者になることが多いでしょう。
あなたの仕事ぶりや人柄を理解し、組織の中長期的な戦略を描くなかで重要な仕事を任せたいと期待している可能性があります。その場合、絶対に退職してほしくないと強く引き止めを受けることになるでしょう。
人材が不足している
人手不足に陥っている企業も多く、退職者の穴埋めをするために担当業務の調整や配置転換、人事異動を行う必要があります。新たな人材を採用するにも時間とコストが掛かることから、場合によっては「退職は容認するが時期は相談させてほしい」といった交渉を受ける可能性があります。
マネジメント力不足と評価されるのを避けたい
社内評価を気にする上司であれば、自組織の従業員が退職してしまうことで「マネジメント力が不足している」「部下との関係が構築できていない」といったレッテルを貼られたくないと考え、引き止めを受ける可能性があります。
この場合は、根拠立てた引き止めではなく情緒的なアプローチを受けることが多くなるでしょう。
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退職の引き止めにあった時にやってはいけないこと
退職交渉で引き止められた場合に備えて、「これだけはやってはいけない」という注意点を把握しておきましょう。
優柔不断な伝え方は慰留を招くもと
「慰留(いりゅう)」とは、辞めようと考えている相手をなだめて引き止めるという意味の言葉です。つまり、退職の交渉をする相手は、なんとかして退職を思いとどまらせようとしています。
あの手この手で引き止められて退職がズルズルと先延ばしになっていく状況は避けたいもの。決心が固いなら、諦めずに退職の意志を伝えていくことが大切です。
少しでも優柔不断な印象があれば、会社は「交渉すれば勤続してもらえるかもしれない」と考えるものです。そして、実際に居残ることになれば「人間、根気と我慢が大切だ」などと説教までされる事態に……。断固とした言い方ができない人が陥りやすい状況です。
相手の言葉に流されそうになった場合は、「すでに転職先が決まり入社承諾書も提出した」などと言うのも一つの引き止め対策方法として有効でしょう。勤続する気持ちがないことを具体的な行動として伝えることで、会社の受け取り方も変わるはずです。
不満を退職理由にすることは避ける
退職理由として給料や待遇、人間関係など職場への不満を口にすることは絶対に避けましょう。これらはよくマナーの問題として取り上げられますが、それ以上に引き止め防止のうえで大切です。
もし会社がその従業員を引き止めたいと思えば、不満点の改善を申し出るのは当然の成り行きです。そうなると退職理由がなくなり、働き続けざるを得なくなってしまいます。
辞めるつもりなら、現在の職場では実現が不可能な将来目標など、会社が納得せざるを得ない理由を伝えなくてはいけません。
また、職場の不満点改善のための交渉をするつもりなら「辞める」という言葉はタブー。会社や上司との関係悪化につながります。
以下の記事では、退職を引き止められた場合の答え方について解説しています。
≫上司にスマートに退職を伝えるためのハウツー
最も多い慰留の原因はプランニングの不備
退職を希望する従業員を会社が引き止める理由として、最も多いのは退職スケジュールなど、プランニングに問題があるケースです。
例えば退職時期が繁忙期に当たっている、急な話で後任の予定が立たない、任せている業務が山場にあって引き継ぎが難しい……など。退職条件にムリがあるため会社が応じられず、やむなく慰留してしまう例が少なくありません。
「法律では2週間前に言えば退職できるはず」「就業規則どおりに伝えた」など、原則論をタテに強引に押しまくると、円満退職は望めません。退職時期を譲歩できるならば、退職の意志を貫いたうえで、退職日の調整をすることも検討しましょう。
≫引き止め対策にも有効!「円満退職までのプランニング」はこちら
退職の引き止めにあわないようにするには?
退職交渉時に引き止めにあわないために意識したいことを確認しておきましょう。この事前準備を徹底することで、退職交渉が一気に楽になるはずです。
退職理由を明確に伝えること
まず、退職理由は明確に伝えることが重要です。退職を決断しているという強い意志を伝えることにもつながります。事前にしっかり理由を整理しておきましょう。
その際にポイントとなるのは、退職理由は個人都合で伝えるということです。現職に不満があって退職をする場合でも、退職交渉の場でそれを理由にすることは避けましょう。
なぜなら、その不満や不安を改善できるように取り組むから辞めないでほしいという引き止めにつながるからです。例えば「こんな仕事に挑戦するために退職する」など、今後の仕事の展望について伝えると良いでしょう。
また、大企業になると、報告を受けた直属の上司がその上席や人事責任者に報告することになります。直属の上司が社内交渉を進めやすいようにするためにも、できるだけ前向きな退職理由を伝えるようにしましょう。
≫退職を伝えるタイミングはいつ? 上司へのスマートな伝え方ハウツー
就業規則で退職を伝えなければいけない日を確認する
退職届を出せば、法律上は2週間前に申し出ることで退職が可能ですが、円満に退職するためには職場のルールに従うことが鉄則です。通常は、退職願を提出して退職の合意をするのが一般的です。退職願は、退職を願い出ることであり提出後撤回できますが、退職届は、退職の意思表示であり、原則として撤回できません。
一般的には1カ月以上前に退職伝達と定めている企業が多いですが、なかには2~3カ月前と定める企業もあります。事前に就業規則を確認し、退職を申し出る期日を把握しておきましょう。
すでに転職先が決まっている場合、就業規則どおりの退職では転職先の入社指定日に間に合わないケースもあるでしょう。そうした場合には、「就業規則上難しい日程と分かっているが退職したい」と、事前に規則を理解したうえで交渉しているという姿勢を見せることが重要です。
引き継ぎをしっかり行う
退職自体は認められたものの退職時期を先延ばしにされてしまうことも。そこには「現在の業務に支障を来したくない」という企業側の思惑があります。安心感を与えるためにも、しっかりと後任者への引き継ぎを行いましょう。また、後任者が決まらない場合は、引き継ぎ事項を書面で残すことも検討する必要があります。
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【ケース別】退職の引き止めを上手にかわす方法
いろいろな対策を取ったとしても、引き止めを受けてしまうことはあるでしょう。ここでは、実際に引き止めを受けてしまった場合の対処方法をケース別にご紹介します。
強引に引き止められた場合
退職届を受け取らないなど強引に引き止められてしまう場合もありますが、肝心なのは退職の意志の強さを伝えること。取り合ってもらえなくても上司に退職の意志をきちんと伝えましょう。直接会話できる場合は、たとえ「考え直してほしい」「受理できない」といった反応があったとしても、退職の意志が変わらないことを伝えたうえで、どうしても受理してもらえない場合は、更に上の上司に直接提出するなど対応を考えてください。
出張やリモートワークで接点が持てず直接会話ができない場合は、メールや社内のコミュニケーションツールなどでアポ依頼を送りましょう。内容としては、以下のように気持ちが変わらないことを盛り込みます。
■メール文章例
お忙しいなか、私事での度々の連絡となり恐れ入ります。
先日は相談のお時間をいただきありがとうございました。
頂戴したアドバイスや掛けていただいた言葉をもとに考えてみたのですが、
やはり気持ちは変わらず、退職させていただきたく思っています。
可能であれば、明日の○時ごろにお話しのお時間をいただけないでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。
もしここまでしても直属の上司が取り合ってくれない場合は、人事部宛てに退職届を直接提出することになります。
民法第627条1項の「当事者が雇用の期間を定めなかった時は、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」という条文や、憲法第22条の「職業選択の自由」の解釈から、ほとんどの場合において退職が認められます。
居ないと困るなどと言われた場合
人材が不足していたり、あなたへの期待や評価が高かったりする場合、引き止められることはよくあるでしょう。新たに人材を採用するので、それまで待ってほしいという曖昧な言葉では、いつまでも辞められない可能性があります。具体的な退職時期を決めるべきです。
人材が不足している場合は実務面で迷惑を掛けてしまうことを申し訳なく思ってしまうかもしれませんが、考えるべきは自身が将来あるべき姿です。過度に気にする必要はありません。
■口頭でのやりとり例文1
今私が退職することで、現在の職場に迷惑を掛けてしまうことは理解しています。しかし今回、理想のキャリアに挑戦するチャンスをつかむことができたので、勝手を申し上げて恐縮なのですが、○月末での退職を承認していただけないでしょうか。
■口頭でのやりとり例文2
私にそこまで期待をかけていただけてうれしいですし、そんな○○さんの下で働くことができて幸せです。しかし今回、理想のキャリアに挑戦するチャンスをつかむことができたので、ぜひ挑戦したいと思っています。勝手を申し上げて恐縮なのですが、○月末での退職を承認していただけないでしょうか。
自分を高く評価してもらえることはうれしいものですが、だからこそ前向きに送り出してほしいという思いを伝えていきましょう。
あなたのためにならないと言われた場合
「うちよりいい職場なんてない」「世の中そんなに甘くない」「あなたのスキルではどこに行っても通用しない」「退職はあなたのためにならない」といった不安をあおるような引き止めを受ける場合もあるでしょう。
こうした引き止めを受けた際に一番重要なのは、気持ちを強く持つこと。上司に納得してもらうことよりも、上司が折れるまで強い意志を伝えていくことが重要です。退職しようと思い立つに至った理由を思い返し、しっかりと前向きに伝えましょう。
■口頭でのやりとり例文
ご心配ありがとうございます。また、なかなか恩返しできておらず申し訳ありません。しかし今回、自分が理想とするキャリアに挑戦するチャンスをつかむことができたので、ぜひ挑戦したいと思っています。勝手なことを申し上げて恐縮なのですが、○月末での退職を承認していただけないでしょうか。
給料を上げるからなどと改善提案をされた場合
待遇の改善提案を提示され引き止められる場合もあります。退職理由が待遇にある場合は、ここで思いとどまるという選択肢もありますが、退職を申し出て待遇を改善するならば、なぜ申し出る前に改善しないのか考えてみてください。
また、待遇以外にも転職したい理由がある場合は、退職の意志を貫くべきでしょう。
また、上司の一存で待遇は改善できず、口約束で終わる可能性があります。中小企業であれば上司や役員の一存で待遇が変わる可能性もありますが、そうした属人的な評価体制の環境で働くことに不安を感じる方もいるでしょう。一度退職を申し出た状況です。最後までブレずに交渉を続けましょう。
■口頭でのやりとり例文
高い評価をいただけていると理解でき大変驚きましたし、素直にうれしく思っています。ただ今回は、昇給のチャンスを捨ててでも理想のキャリアに挑戦したいと考えています。ご評価いただいたにもかかわらず勝手を申し上げて恐縮なのですが、○月末での退職を承認していただけないでしょうか。
【年代別】退職の引き止めにあった場合のポイント
引き止めにあった場合にどう対応すべきかは年齢によっても異なります。最後に、20代・30代・40代それぞれの年代ごとに、押さえておくべきポイントをご紹介します。
20代はここがポイント!
20代で技術や知識を習得して短期間で辞める場合、上司や先輩社員からいい顔をされないケースがあります。
上司の中には、ほかの企業で通用しないなどと言われることがありますが、やりたいことの実現などの強い意志を上司に伝えるようにしましょう。
30代はここがポイント!
30代でよくあるのが、会社の戦力になっているため簡単に退職願を受理してもらえず、退職願の提出に対し上司から「預かっておく」と対応される例です。
通常は円満に退職するために、会社に承諾をもらうための退職願を提出したうえで、承諾後、退職の意志の通知である退職届を出しますが、承諾してもらえない場合は、退職届を提出して2週間経過すれば法的には退職できます。
ただし円満退社をするためにも、退職願を提出して上司と退職日などの調整を図り、引き継ぎを行い退職するように努めましょう。
40代はここがポイント!
すでに管理職に就いている方も少なくない年代で、退職されると後任の調整が難航したり、部下や組織へ大きなインパクトを与えたりする可能性もあることから、強い引き止めを受けがちです。
誠意をもって対応しているのに退職の了解を得られず引き止めにあい、トラブルになりそう…… そんな状況に陥っているようなら、居住地の労働基準監督署に相談してみるのも一つの方法です。総合労働相談コーナーがあり、専門の相談員が面談や電話での相談を受け付けているほか、労働局長の助言・指導制度や紛争調整委員会によるあっせん制度などもあります。
まとめ
勇気を出して退職交渉に踏み出しても、いざ引き止めを受けると気持ちが揺らいだり、交渉の難しさから心が折れて転職を思いとどまってしまいそうになったりすることもあるかもしれません。
しかし、事前準備をしっかりすることや、引き止めをされた時の対処方法を理解しておくことで、きっと乗り越えられるはずです。
円満退職に向け、強い気持ちをもって退職交渉に臨みましょう。
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監修者

谷所 健一郎(ヤドケン)
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
有限会社キャリアドメイン 代表取締役
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例」(マイナビ出版)、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。
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Step.6 円満退職する
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