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サプライヤーとは?ベンダー・メーカーとの違い、業界別の仕事内容を紹介

掲載日:2024年09月19日

サプライヤーとは?ベンダー・メーカーとの違い、業界別の仕事内容を紹介
谷所 健一郎

監修者谷所 健一郎

キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役

記事まとめ(要約)
  • サプライヤーとは原材料や部品、商品・サービスを供給する人や職種、企業の総称
  • ベンダーやメーカー、ディストリビューター等とは違いがある
  • 業界によってサプライヤーの仕事内容や役割、立ち位置は異なる
  • サプライヤーには分析力や交渉力、コミュニケーション力などが幅広く求められる

サプライヤーにはメーカー、ベンダー、バイヤー、ディストリビューターなど、混同されかねない言葉が多くあります。

そこで本記事では、サプライヤーの定義や類似用語との違い、業界別の仕事内容やサプライヤーに向いている人の特徴などを解説します。

目次

    サプライヤーとは

    サプライヤー(supplier)とは、「供給する」を意味する「supply(サプライ)」に「~を行う人」の「er」が付いた言葉です。

    ビジネスにおいては、「原材料や部品、商品・サービスを供給する人や職種、企業」の総称として使われています。

    海外との取引の場合、日本への輸出国自体を指すこともあります。

    サプライヤーと呼ばれる対象は、業種・業界によって異なります。

    例えば、製造業では、自動車や家電などのメーカーに部品を製造・供給する部品メーカーや、世界各地から原料を輸入する商社をサプライヤーと呼びます。

    一方、小売業にとっては商品を供給するメーカーがサプライヤーと呼ばれ、旅行業では旅行会社から見て部屋や交通手段を提供するホテル・旅館、鉄道・航空会社がサプライヤーにあたります。

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    サプライヤーと似ている用語の違い

    サプライヤーには、使い方が似ていて混同されがちな用語があります。

    サプライチェーン、ベンダー、バイヤー、メーカー、ディストリビューターなどがそうでしょう。

    これらは違う意味・役割を持っていますので、混同することがないよう、それぞれの定義とサプライヤーとの違いについて分かりやすく解説します。

    サプライチェーンとの違い

    サプライチェーンとは、原材料が生産・調達され、製造、流通、販売を経て、完成品が消費者に供給されるまでの一連の流れを指します。

    つまり、供給する人・企業を指すサプライヤーに対して、供給プロセス全体を指すのがサプライチェーンということです。

    加工食品を例にとると、「原料生産(農家)⇒買い付け(商社)⇒輸配送(物流会社)⇒製造(食品メーカー)⇒輸配送⇒販売(小売店)⇒消費者」というサプライチェーンによって、商品がスーパーやコンビニの売場に並び、消費者が商品を購入できます。

    生産者、商社、食品メーカー、物流会社、小売店といったさまざまな役割を担う人・企業がチェーン(鎖)のように連なり、供給までの流れを形成しているため、サプライチェーンと呼ばれています。

    ベンダーとの違い

    ベンダーとは、英語で売り手や販売店を意味する「vendor」に由来し、日本ではサプライヤーやメーカーから仕入れた商品を販売する販売会社を指します。

    ベンダーはIT業界で使われることの多い名称ですが、IT業界では一般的なベンダーとはニュアンスが異なります。

    ITベンダー、ソフトウエアベンダー、ハードウエアベンダー、開発ベンダーというように、手掛ける商品・事業の分野に分けて使われ、それぞれ販売だけでなく、製造・販売の両方を担う場合があります。

    サプライヤーとベンダーとの大きな違いは、販売先です。

    サプライヤーはメーカーや中間加工業者に原料・資材などを供給し、ベンダーはエンドユーザー、つまりソフトウエアや製品を実際に利用する人・企業に直接販売しています。

    バイヤーとの違い

    バイヤー(buyer)とは、買い手を意味します。

    例えば、アパレル業界のバイヤーは、百貨店やセレクトショップなどに在籍し、トレンドや客層、価格、在庫状況などを考慮しながら、店舗で取り扱う商品の買い付けをアパレルメーカーに対して行います。

    バイヤーは買うことが仕事であり、サプライヤーは原材料や部品を売ることが仕事です。買い手と売り手という立場に大きな違いがあり、バイヤーとサプライヤーはビジネス上で売買取引を行う関係にあります。

    メーカーとの違い

    メーカー(Maker)とは、原材料などを加工し、製造・販売する企業のことをいいます。

    スマートフォンや自動車、食品、飲料などの完成品をつくるメーカーは、サプライヤーから製造に必要な原料や資材、部品を仕入れ、完成品に仕上げます。完成品メーカーは社名=製品のブランドとなることが多く、一般の消費者にも身近で知られやすい存在です。

    「製造する」「調達・供給する」という役割において、メーカーとサプライヤーには違いがあります。

    ただ、サプライヤーと呼ばれる企業のなかにも、製造・販売を行うメーカーが存在します。部品メーカーや資材メーカーなどがそうです。

    完成品メーカーを中心に見ると、部品や資材を製造・供給するメーカーもサプライヤーという位置付けになります。

    ディストリビューターとの違い

    ディストリビューター(distributor)とは、商品の分配や流通を意味するディストリビューション(distribution)を行う人や企業のことです。

    メーカーやサプライヤーから仕入れた商品・製品を代理店や小売店に卸すことによって、商品に適した販売チャネルに流通させる役割を担っています。

    ディストリビューターは、メーカー・サプライヤーと小売業者やエンドユーザーをつなぐ中間者として、サプライヤーから仕入れた商品の流通や在庫管理を行い、「いつどこにどれだけ流通させるか」を最適化させるマーケティングや物流にもかかわります。

    「供給する」ことを主眼とするサプライヤーに対して、「最適に流通させる」という役割を担うという点で、サプライヤーとディストリビューターには違いがあります。

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    【業界別】サプライヤーの仕事内容

    【業界別】サプライヤーの仕事内容

    サプライヤーの仕事内容や役割、立ち位置は、業界によって異なります。

    ここではとりわけサプライヤーの存在が重要となる下記8業界について、業界別にサプライヤーの仕事内容や役割について解説します。

    • 製造業界
    • 食品業界
    • 旅行業界
    • IT業界
    • 貿易業界
    • 自動車業界
    • アパレル業界
    • 建設業界

    製造業界

    製造業界のサプライヤーとは、メーカーが製品を製造するために必要な原材料や資材、部品を供給する業者・企業のことを指します。

    樹脂や金属、ガラス、木材、繊維などの素材を世界各地から調達・供給する仕事もあれば、ネジやボルト、電子部品、配線、モーター、筐体などの工業部品を製造・供給する仕事もあります。

    メーカーの調達・購買部門とやりとりし、製品仕様や製造計画、新製品の設計開発の要件などに応じて、必要なものを必要なだけ供給するという重要な仕事を担っているため、メーカーにとってモノづくりに欠かせないパートナーといえます。

    食品業界

    パンやパスタ、即席麺、冷凍食品、菓子、乳製品、調味料など、食品がスーパーやレストランなどを経て消費者に届くまでには、複数のサプライヤーが役割を発揮しています。

    まず農業や酪農畜産業、漁業など一次産業と呼ばれる生産者が、食品の原料となる農作物や牛・魚などを栽培・飼育・捕獲します。

    それらを商社が仕入れて食品メーカーへ供給します。食品メーカーが生産した製品は、卸売業者によって小売店やレストランなどに供給され、消費者に届けられます。

    食品メーカーにとっては、一次産業の生産者と商社がサプライヤーです。

    商社では生産者と食品メーカーの橋渡し役として、天候や季節などの状況もふまえながら値付けや供給量の調整などを行います。

    小売会社にとっては食品メーカーがサプライヤーであり、卸売業者から仕入れる場合は卸売業者がサプライヤーになります。

    旅行業界

    旅行会社が旅行プランやパッケージツアーを企画・催行するためには、運輸・宿泊・飲食・観光などの旅行素材・サービスが欠かせません。

    旅行業界では、これらを提供する企業・業者のことをサプライヤーと呼んでいます。

    サプライヤーの仕事内容・役割は、取り扱うサービスによって異なります。

    例えば、航空会社は飛行機の座席を提供し、旅館・ホテルは客室を提供します。

    そのほか、バス会社や飲食店、レジャー施設、みやげ物店、現地ツアー会社など、さまざまなサプライヤーが商品・サービスを供給し、旅行者の快適で楽しい体験を支えています。

    旅行会社が旅行代理店を通じて旅行商品を販売する場合は、旅行会社が旅行代理店にとってサプライヤーになります。

    IT業界

    IT業界でのサプライヤーの役割は、クライアントに対してソフトウエアやハードウエア、クラウドサービス、保守・サポートなどのIT製品・サービスを供給することです。

    IT業界で特徴的なのは、多重下請け構造があることです。

    クライアントからシステム開発を依頼された元請けのIT企業が、開発プロジェクトの全部を、もしくは機能・工程ごとに切り分けた業務を二次請けのIT企業へ発注し、その下の三次請け、四次請けの下請け企業に実作業が振り分けられることは珍しくありません。

    IT業界ではメーカーとベンダーの役割を併せ持つ企業が多いため、サプライヤーをベンダーという言葉に置き換えて使われることがよくあります。

    貿易業界

    農畜産物や食品、鉱石・木材などの天然素材、工業部品などの輸出入を手掛ける貿易業界では、輸入と輸出によってサプライヤーの位置付けが異なります。

    海外から日本へ輸入する場合、貿易を仲介する商社にとっては、輸入品の仕入れ先である海外の生産者やメーカー、卸売業者がサプライヤーとなります。

    輸入元の日本企業から見ると、商社もサプライヤーの扱いになります。

    日本から海外へ輸出する場合、輸出品を供給する日本の生産者やメーカー、卸売業者がサプライヤーとなります。

    日本の商社も、輸出先の海外企業にとってはサプライヤーとなります。

    いずれにおいても、サプライヤーは海外情勢や需給バランス、為替の動きなどを総合的に見据えながら、海外と日本の取引を最適化するという役割を担います。

    自動車業界

    自動車業界でサプライヤーといえば、自動車メーカーへ部品を供給する部品メーカーを指します。

    エンジンやシャーシ、車体、内装品、制御装置など、自動車は何万個もの部品で構成されており、部品メーカー各社がそれぞれ得意とする領域の部品を開発・製造し、供給しています。

    EV化や自動運転技術の開発に伴って、サプライヤーの役割はモーターや電池、センサー、制御システムなどの供給へ広がっています。

    自動車メーカーに直接部品を供給するメーカーは、一次請けを意味するティア1(Tier1)と呼ばれています。

    その下には、ティア1に部品を供給するティア2があり、その下にはティア3が連なっています。

    ティア1はおもに自動車メーカーと資本関係にある子会社で、人や技術の交流も相互に行われています。

    下請けの階層が下に行くほど、自動車メーカーとの結び付きは薄れていきます。

    アパレル業界

    アパレル業界では、アパレルメーカーへ生地や糸、ボタン・ファスナーなどの部材を供給するメーカーや商社、問屋がサプライヤーにあたります。

    アパレルメーカーの多くは自社工場を持たず、自社で企画・デザインした商品仕様をもとに、素材を仕入れ、外部の縫製工場で委託生産しています。

    サプライヤーは、アパレルメーカーに対して商品企画やサンプル作成の段階から生地・部材の提案を行い、仕様・価格・数量などが決定後、必要な生地・部材を縫製工場へ供給します。

    完成した商品がアパレルメーカーから百貨店やセレクトショップ等の小売店へ供給される場合、小売店にとってアパレルメーカーがサプライヤーの位置付けになります。

    建設業界

    建設業界では、サプライヤーとは建材を供給する問屋や商社を指します。

    工事の元請けであるゼネコンに対して、工事実務や職人を供給する二次請け、三次請けの工事会社も存在し、そうした下請け企業をサプライヤーに含める場合もあります。

    建材の種類はコンクリート、鉄骨、木材、床材、クロス、ドアやサッシなどの建具、浴槽・キッチン・空調の設備など幅広く、建材のサプライヤーは設計・仕様に応じて必要な建材を適したタイミングで現場に送り届けます。

    業者によっては建材の据え付けやメンテナンス、修理まで担当することもあります。

    サプライヤーに向いている人の特徴5つ

    サプライヤーに向いている人の特徴5つ

    サプライヤーには業界ごとにさまざまな役割がありますが、共通して重要になるのは、「市場や取引先の状況などをふまえ、サプライチェーンを構成する各所と調整しながら仕入れ・供給をコントロールする」ことです。

    そうしたサプライヤーの仕事・役割に向いている人の特徴をサプライチェーンマネジメントの観点から下記5つにまとめ、それぞれを解説します。

    • 広い視野で物事を俯瞰できる
    • データから適正な数値を導き出す分析力がある
    • 良い商品を供給できる交渉力を持っている
    • 関係各所と円滑にコミュニケーションを取れる
    • 不測の事態でも慌てず冷静に判断できる

    広い視野で物事を俯瞰できる

    サプライヤーが単独で役割をまっとうすることはほとんどなく、サプライチェーンを構成する各社と連携することが欠かせません。

    自らが良ければそれでいいという考えでは、チェーン各社からの信頼を得られず、サプライチェーンが有効に機能しにくくなりかねません。

    商材・サービスの専門知識を掘り下げることももちろん必要になりますが、一部分だけに集中することよりも、サプライチェーン全体や業界全体の構成・商流などを広い視野で俯瞰してとらえ、全体最適の視点を持って「何をどうするのがいいのか」を考え、業務に取り組むことが求められます。

    データから適正な数値を導き出す分析力がある

    サプライヤーにとって重要なのは、原材料や商品・製品をできるだけ過不足なく調達・供給し、余剰在庫を抱えず、無駄のない取引を行うこと。そのためには、サプライチェーンの川下から逆算することが効果的だといわれています。

    つまり、川下にあたる小売店の販売・発注計画をもとに、卸業者はメーカーからの仕入計画を立てます。

    それをもとにメーカーは生産計画を立て、原材料サプライヤーはそれに沿ってメーカーへの供給量を調整します。そうすることで、サプライチェーン全体が効率化され、それぞれが利益を上げやすい構造になります。

    そこで鍵になるのが、販売計画や生産計画などのデータを読み解き、分析する力です。

    仕入れ量・供給量を各種データからロジカルに導き出すため、データドリブンを実践できる人が向いているでしょう。

    良い商品を供給できる交渉力を持っている

    サプライヤーが目指すのは、良質な原材料や部品をできるだけ低コストで調達・供給することです。

    そのためには、仕入れ先との交渉によって価格や納期などの好条件を取りつけられるかどうかが重要になります。

    サプライヤーにとって交渉力は、調達能力を決める重要な要素です。持ち合わせていればいるほど、取引先からの厚い信頼につながります。

    関係各所と円滑にコミュニケーションを取れる

    サプライヤーは、社内外の関係先と交渉・調整する機会が多く、さまざまな人たちと円滑にコミュニケーションを取ることが大切です。

    社内では調達担当や生産管理、貿易担当と連携し、社外では顧客や仕入れ先、卸売業者、物流会社などの担当者とやりとりを重ねます。

    海外の仕入先や輸出入業者とやりとりする際には、国によって商習慣や交渉の進め方などに違いがあるため、よりいっそう相手に配慮したコミュニケーションが求められるでしょう。

    不測の事態でも慌てず冷静に判断できる

    世界情勢や異常気象による物流の停滞、機材トラブルによる生産の遅れなど、予期せぬトラブルに見舞われ、計画どおりにいかないケースも起こり得ます。

    そうした際に、状況を冷静に整理し、調達方法の変更や輸送ルートの再検討、代替品への一時切り替えなど、対応策を落ち着いて柔軟に考え、実行に移せる人が向いているでしょう。

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    サプライヤーの役割や仕事内容を正しく理解しよう

    原材料や部品などの仕入れ・供給を担うサプライヤーは、商品・製品の生産・流通に欠かせない存在です。

    さまざまな業種・業界で、サプライヤーがモノづくりやビジネスを支えています。

    サプライヤーは業種・業界の違いによって役割や立ち位置が異なるため、サプライヤー職への転職を検討する際には、業界特有の商流やビジネス構造を理解し、その業界のサプライヤーはどういう役割・仕事を担っているのかを理解することが大切です。

    マイナビ転職にはさまざまなサプライヤーに関する求人が掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。

    監修者
    谷所 健一郎

    谷所 健一郎(ヤドケン)

    キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
    有限会社キャリアドメイン 代表取締役

    有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例」(マイナビ出版)、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。

    マイナビ転職 編集部

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