内定取り消しとは?違法・認められる場合・対処法・判断基準を解説
更新日:2025年02月17日


記事まとめ(要約)
- 内定取り消しとは、企業がいったん出した採用内定を後から取り消すこと
- 内定は実質的に労働契約の成立とみなされ、不当な内定取り消しは違法にあたる
- 内定者側の問題が発覚した場合や企業側に合理的な理由がある場合は内定取り消しが認められることがある
- 正式な採用の約束ではない内々定の場合は、法的な拘束力はない
- 内定取り消しとなった場合の対応は、冷静に判断する必要がある
転職先から内定をもらったとしても、その後、内定取り消しにならないか不安になる方もいるのではないでしょうか。
内定取り消しになると転職活動の再開や生活設計の見直しが必要になるなど、内定者には大きな負担がかかります。
内定取り消しとはどのようなものか、違法性の有無、取り消しとなった場合の対処法について解説します。
内定取り消しとは

内定取り消しとは、企業側が一度出した内定を取り消すことです。
内定は、企業が求職者を正式に採用するための約束であり、企業が出した内定に求職者が合意し、内定が成立したタイミングで、企業と求職者の間に労働契約が成立します。
入社までにやむをえない事由が発生した場合、内定を取り消すことがあるといった条件付きの始期付解約権留保付労働契約が成立しますが、内定取り消しは事実上「解雇」と同じ意味を持ちます。
求職者を守るために、「解雇」の条件は法律で制限が設けられており、内定取り消しも同様です。
そのため、内定取り消しは企業側にも一定のリスクと義務が伴うため、簡単にできることではありません。
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内定取り消しに関する法的根拠

先にもお伝えしたとおり、内定取り消しは「解雇」と同様の扱いとなり、解雇は日本においては「労働契約法」に基づいて規制されています。
具体的には、労働契約法16条において、以下のように定められています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
つまり、正当な理由なく内定取り消しをした場合、解雇権濫用法理(労働契約法16条)により違法と判断される可能性があるのです。ただし、あくまで「正当な理由がない」場合が該当します。
出典:労働契約法 第十六条|e-Gov法令検索
内定取り消しが違法な場合・認められる場合

先ほども述べたとおり、労働契約法上、正当な理由がなく内定取り消しが行われるのは違法ですが、客観的に合理的な理由がある場合、内定取り消しが認められるケースもあります。
それぞれの条件を確認しておきましょう。
内定取り消しが違法な場合
内定取り消しが違法とみなされるのは、客観的に合理的な理由がない場合や、差別的な取り扱いなどが該当します。
基本的には、内定者に大きな非がなく、企業側の一方的な都合で取り消しをしてしまうケースと考えると良いでしょう。
ただし、経営悪化など、会社都合であっても条件によっては内定取り消しが認められる場合もあります。
内定取り消しが違法かどうかを正しく判断するには、以下で解説する「認められる場合」を理解しておくことが大切です。
内定取り消しが認められる場合
正当な理由があると判断される場合の内定取り消しは、違法性はないとして認められます。ただし、企業側の対応や、内定者の状況によって判断が左右されるため、具体的な事例に応じて違法性が判断されます。
また、内定取り消しが正当であっても、企業側には十分な説明や対応が求められます。
解雇と同様に、求職者は内定取り消しの理由についての証明書発行を求めることができます。
実際にどのようなケースで認められるのか、代表的な例を紹介します。
経歴詐称
履歴書や職務経歴書に、重大な虚偽があることが発覚し、労働者として不適格とされる場合には、内定取り消しが認められることがあります。
特に資格や免許(医師免許や弁護士資格、特定の技術に関する免許など)に関する虚偽は、業務の遂行に直接影響を与えるため、内定取り消しの正当な理由となりえます。
健康状態の悪化
内定通知後、入社の前に病気やけがで長期間出勤ができない、業務が行えないなどの状況になった場合、企業側からの内定取り消しが認められます。
ただし、企業側が、内定を出す段階で、すでに求職者の健康状態を把握していた場合は、内定取り消しが認められない可能性があります。
卒業未達成
学生のみに当てはまるものですが、新卒入社予定として内定したものの、学校を卒業できなかった場合は、内定取り消しの正当な理由とみなされます。
卒業できないのは、学生側の落ち度であり、入社条件を満たせないと判断されるためです。
犯罪や不適切な言動の発覚
内定者が入社前に窃盗や暴行、詐欺などの刑事事件として扱われる社会的に重大な犯罪行為をして、刑事処分が確定した場合には、内定取り消しが認められる可能性が高いです。
また、公私にかかわらず企業イメージに悪影響を及ぼした場合も該当します。
要件を満たした場合の企業の業績悪化
企業側の経営状態が悪化し、以下のような整理解雇の4要件をすべて満たした場合に、正当な理由と認められることがあります。
- 整理解雇の必要性(会社の維持・存続のため人員整理が必要といえる)
- 整理解雇を避ける努力義務の履行(退職者の募集・余剰労働力吸収などの努力が尽くされている)
- 対象者の選定における合理性(解雇の対象者が合理的に選ばれている)
- 労働者との協議義務の履行(労働者との間で解雇の必要性・方法・基準などについて協議し、十分に納得されるための努力が尽くされている)
上記は、整理解雇の4要件といわれるもので、内定取り消しだけでなく、解雇の正当性を判断する場合にも当てはまります。
上記をすべて満たさない状況にあるにもかかわらず、経営悪化を理由として内定取り消しをする場合には、違法とみなされます。
契約書や誓約書の条件違反
内定通知書や誓約書に記載された内定取り消し理由に該当するような行動や対応を行った場合、内定者側の契約違反として内定取り消しが正当に認められます。
あらかじめ通知された条件に基づくものであり、内定者側の落ち度とみなされます。
ただし、記載された取り消し理由に該当する場合であっても、記載内容が法律や社会通念に反している場合は、取り消し理由として認められません。
企業の一方的な都合や、労働契約に反するような記載、具体的な基準のない曖昧な表現などが契約書にあった場合は、不合理と見なされることがあります。
必ずしも内定通知書や契約書の内容が合理的とは限らないため、不安な点がある場合には、専門家に相談することも検討しましょう。
内々定の取り消しの場合は?

内定と似ている言葉に「内々定」があります。
内定を受けると、企業と求職者の間に法的な拘束力のある労働契約が結ばれます。
一方で、内々定とは非公式な意志表明であり、法的拘束力はありません。そのため、内々定の取り消しは基本的に違法とはなりません。
一般的に、内定は書面で通知されることが多く、内々定は口頭で伝えられるケースがほとんどです。
自身の状況が、内定なのか内々定なのか、きちんと理解しておく必要があるでしょう。
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内定取り消しを行った企業のリスク

内定取り消しは、企業側にも大きなリスクを伴います。特に内定取り消しが違法と判断された場合には、社会的信用を失います。
そのほか、以下のような悪影響を受けてしまうでしょう。
- 情報公開による企業ブランドのイメージ低下
- 訴訟に発展するおそれがある
- 企業イメージが悪くなり、優秀な人材の確保が困難になる
- 新卒採用で学校推薦が受けられなくなるおそれがある
- 内定取り消しが無効になった場合、働いていない期間を含めて賃金を支払う義務がある
内定取り消しに違法性や不当性が認められた場合は、ハローワークを通じて厚生労働省のホームページに企業名が公表されます。
また、近年では、インターネットの普及により、SNSでの口コミやマスコミへのリークなどで、企業の評判がすぐに拡散されてしまいます。
現社員や取引先、顧客にも影響がおよぶため、企業側にとっても内定取り消しは大きなリスクがあります。
また、内定取り消しが解雇に該当する場合、労働基準法に基づいて、解雇予定日の少なくとも30日前に解雇予告手続きを行わなくてはいけません。もしくは、30日分の平均賃金を支払う必要があります。
内定取り消しを受けた後の対処法

もし、内定取り消しを受けてしまったら、違法性がないか、その後の補償はあるのかなどを確認して、しっかり対処を行いましょう。
具体的なポイントについて解説します。
内定取り消しの理由を確認する
先ほども述べたとおり、内定取り消しは解雇にあたります。
法的にも、解雇には客観的に合理的な理由が必要であり、企業側がどのように判断したのかを確認しなければいけません。
内定取り消しの連絡が来たら、まず、企業側に取り消しとなった理由を確認しましょう。その際、法的な面での証拠にもなるため、メールでやりとりすることが大切です。
メールでは、内定取り消しの連絡を受けて困惑していることを伝えたうえで、「内定取り消しの具体的な理由についてご教示ください。」と記載しましょう。
特に「内定取り消しが認められる場合」で挙げられた経歴詐称や健康状態の悪化など、いずれも心当たりがない場合は、企業側に取り消しの決定がいつ行われたのかも含めて、詳しく確認する必要があります。
内定取り消し後の補償があるかを確認する
企業によっては、内定取り消し者に金銭の補償をするところがあります。補償内容は企業によって異なるため、直接問い合わせてみましょう。
ただし、すべての企業で補償をしているわけではありません。内定通知書を読み返し、補償の記載の有無も事前に確認しておくと安心です。
内定取り消しの理由や補償に納得できるか検討する
内定取り消しの理由や補償内容などを確認したら、その内容が法的に妥当かどうかを判断するために、労働基準監督署や労働局の相談窓口、弁護士に相談してみましょう。
違法性があると判断された場合、内定取り消しの撤回を求めたり、内定取り消しに対して損害賠償を求めたりすることも可能です。
しかし、内定取り消しを撤回させてまでその企業で働きたいのか、あらためて考えてみる必要があるでしょう。
内定取り消しの撤回・損害賠償・慰謝料などの請求に関して検討する
内定取り消しの理由や補償に納得できず、どうしてもあきらめられない場合には、内定取り消しの撤回・損害賠償・慰謝料などの請求を検討します。
ただし、何の準備もなく、直接、企業に交渉を持ちかけてしまうと、良い結果にはつながりません。
まずは、労働基準監督署や労働局、弁護士に相談することをおすすめします。必要な証拠や書類を揃え、法的手続きに備えることが大切です。
その後、内定取り消しの撤回を求めるためには、労働審判や民事訴訟といった法的手続きを行うことになります。
手続きのなかで、解雇権濫用法理等に基づき、内定取り消しの有効性を争い、無効を主張し、従業員としての地位確認を求めます。
なお、労働審判であれば数カ月、訴訟を起こせば1年以上の時間がかかり、その期間は弁護士費用や裁判費用などの経済的な負担も伴います。
精神的なストレスを受け、将来的なキャリアにも影響するかもしれません。状況を冷静に分析し、自分にとって最善の対応を選択することが重要です。
Q&A内定取り消しに関するよくある質問

内定取り消しについて、よくある質問をQ&A形式で紹介します。
入社日や条件の交渉をして内定取り消しになることはありますか?
通常、条件交渉は内定の承諾前に行われます。
しかし、労働契約が成立した後の条件交渉がうまくいかない場合、内定者は企業が提示した条件に同意するか、内定辞退を選びます。
内定者が労働条件に合意しないことはあっても、条件交渉を理由に内定取り消しはできません。
内定の返事を保留していたら内定取り消しになりますか?
内定通知を受けた後は、返事を保留にしていても労働契約が成立しています。
内定保留は内定取り消しの正当な理由と認められないため、取り消しになることはありません。
もし、内定承諾書に「内定保留の場合は、内定を取り消す」と記載されていても、法的には無効とされる可能性が高いでしょう。
ただし、内定保留期間や内定保留にした理由を企業に申し出ないまま、企業から内定者への連絡が長期間取れない場合には、内定辞退とみなされるリスクがあるため注意が必要です。
リファレンスチェック後に内定取り消しになることはありますか?
労働契約が成立した内定後のリファレンスチェックで、解雇要件に該当する場合以外で、内定取り消しになることはまずありません。
リファレンスチェックとは、企業が求職者の過去の職務履歴や人柄を確認するために行われ、前職の従業員などに問い合わせをするものです。
ただし、内定前のリファレンスチェックは選考の一部であり、採否に影響を与えることがあります。
TOEICのスコアを偽って履歴書に記載した場合、内定取り消しになりますか?
TOEICのスコアが企業の業務に大きく影響する状況で、本人が意図して虚偽表示を行った場合には、経歴詐称とみなされます。
業務の遂行に問題が生じるとして、内定取り消しになるおそれがあります。
内定取り消しに至らない場合でも、虚偽のスコアを記載すると社内での信頼を失います。
SNSの炎上で内定取り消しになりますか?
SNSが炎上したタイミングが内定前・内定後にかかわらず、内定後に発覚した場合は内定取り消しのおそれがあります。
内定前に起きたものであれば、企業側が事前に問題を知り得た状況で内定を出したと考えられるケースもあるため、正当な理由といえないかもしれません。
しかし、炎上した発言や内容が犯罪や悪質な行為に該当する場合、内定取り消しになるおそれがあります。
入社直前にけがをしたら内定取り消しになりますか?
入社直前にけがをしても、1週間程度の短期間で回復し、入社後の業務が行えるようになる状態であれば、通常は内定取り消しになりません。
ただし、回復に長期間が必要な場合や、通勤はできても長期間業務に支障を与える状況だと判断される場合には内定取り消しになるおそれがあります。
入社予定日までに前職を退職できず、入社を延期する場合内定取り消しになりますか?
急募による即入社を前提としている場合もあるため、状況によっても異なりますが、一般的に入社を延期する理由が明確で、延期期間が短い場合は交渉をして、入社のタイミングを遅らせてもらえることが多いでしょう。
しかし、退職日が決まらず、入社時期が未定、もしくはかなり先になる場合などは、内定取り消しのおそれがあります。
完全在宅勤務・
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まとめ
企業が内定を出した時点で、労働契約が成立しており、基本的に内定取り消しは「解雇」と同義となります。
しかし、例外もあり、経歴詐称や犯罪など、正当な理由があれば内定取り消しが認められます。
企業から内定取り消しの連絡があった場合は、取り消しの理由を具体的に確認しましょう。
文書での説明を求めたうえで、提示された内定取り消しの理由や、補償内容が納得できるか、法的に妥当かどうかを考えることが重要です。もし、内定取り消しとなった場合でも、感情的にならず冷静に対応しましょう。
監修者

谷所 健一郎(ヤドケン)
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
有限会社キャリアドメイン 代表取締役
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例」(マイナビ出版)、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。
マイナビ転職 編集部
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