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「静かな退職」とは?リスクもある?働き方を考える

掲載日:2026年05月21日 「静かな退職」とは?リスクもある?働き方を考える

小柳 眞理

執筆者小柳 眞理

キャリアコンサルタント、キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/mk careers 代表

記事まとめ(要約)

  • 静かな退職とは、辞めずに最低限の仕事だけをこなす働き方のこと
  • 正社員の4割以上が「静かな退職」をしている
  • キャリア停滞などデメリットも起こり得るため、注意が必要
  • 不本意な場合は転職や「静かなやりがい」という前向きな選択肢も

やりがいやキャリアアップを求めず、最低限の仕事だけをこなす「静かな退職」。

実際に会社を辞めるわけではないものの、心理的には会社を去ったような状態で働くこの選択は、今や日本の職場にも静かに広がっています。

広まった背景からメリット・デメリット、転職すべきケースまで分かりやすく解説します。

目次

    静かな退職とは?

    「静かな退職」とは、やりがいやキャリアアップを求めず、決められた必要最低限の仕事だけを淡々とこなす働き方のことです。英語では「Quiet Quitting(クワイエット・クイッティング)」と呼ばれ、2022年以降、SNSを通じアメリカで広まりました。

    仕事に対する情熱を抑えながら必要な業務のみを行いつつも、職場を離れることはなく転職もしない——そんな状態を表します。

    近年、日本でもすべての世代でこの働き方が増える傾向があり、注目されています。

    静かな退職が広まった背景

    「静かな退職」という言葉は、2022年にTikTokでアメリカのキャリアコーチが提唱し、その後、別のユーザーが投稿した動画が話題になったことで広まりました。

    その動画のなかの「ハッスルカルチャー的なメンタリティーには賛同しない。人の価値は労働によって決まらない」という発信が共感を呼んだとされています。ハッスルカルチャーとは、昼夜問わずがむしゃらに働くことを美徳とする考え方で、日本でいえば昭和の時代に「企業戦士」「モーレツ社員」と呼ばれた働き方と重なります。

    日本でもこの「静かな退職」が広がっています。その背景には、構造的な要因が考えられます。終身雇用の崩壊により、かつてのように一社で懸命に働いても報われる保証はなくなりました。また、1990年以降30年以上、給与水準がほぼ横ばいである一方、物価や社会保障費は上昇し続けています。

    更に、コロナ禍の経済的混乱とリモートワークの普及が「仕事のために生きる」という価値観を見直す契機となりました。こうした積み重なりが、仕事中心ではない生き方を選ぶ動きの背景にあるといえます。

    サイレント退職との違い

    「静かな退職」と混同されやすい言葉に「サイレント退職」があります。

    静かな退職は、必要な業務のみを行いつつ、職場を離れることはありません。一方でサイレント退職は、外部には何のサインも示さないまま、内面的な困難やストレスが積み重なり、突如として退職を決断する行動です。

    例えば、女性が妊娠・出産・育児などのライフイベントとキャリアの両立に悩みながらも、上司に相談できないまま突然退職する、というケースが典型例として挙げられます。

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    静かな退職をしている人は4割以上

    静かな退職をしている割合

    マイナビが20〜59歳の正社員を対象に実施した「正社員の静かな退職に関する調査2026年(2025年実績)」では、4割以上が「静かな退職」をしていると回答しました。

    職場のほぼ半数がこの状態にあるということは、「静かな退職」がもはや一部の人の話ではなく、どの職場にも存在しうる働き方になっていることを示しています。

    年代別では20代が最も多い

    【年代別】静かな退職をしている割合

    年代別に見ると、最も多かったのは20代で50.5%。次いで30代が49.1%、50代が46.7%でした。「静かな退職」をしている人はどの年代でも4割を超えており、幅広い年代に存在することが分かります。

    一見、20代と50代で同じように「静かな退職」をしているように見えますが、その背景は異なると考えられます。50代は長年のキャリアのなかで役割や評価に行き詰まりを感じていたり、ライフステージの変化から仕事への優先度が変わったりするケースも多いでしょう。

    一方、20代は社会人としてのキャリアを築き始めたばかりの時期に、職場環境や評価に違和感を覚えたことなどが考えられます。

    静かな退職のきっかけ4タイプ

    静かな退職のきっかけ4タイプ

    「静かな退職」のきっかけを分類した結果、仕事や環境の不一致や待遇・評価への不満などが要因で、不本意ながら「静かな退職」を選択している人がいることが見えてきました。

    自らの価値観として選んでいる人と、望まぬ形がきっかけでその選択をしている人がいるということがいえます。大きく分けると以下の4つのタイプに分けられます。

    不一致タイプ

    仕事内容や職場環境が自分と合わず、意欲が低下してしまったタイプです。

    「仕事にやりがいが感じられない」「上司との関係がうまくいかない」「産休・育休から復帰したが、長く働き続けられる環境ではない」といったケースが当てはまります。

    本来は貢献したい気持ちがあるにもかかわらず、環境がそれを阻んでいる状態ともいえます。

    評価不満タイプ

    待遇や評価への不満から、「頑張っても意味がない」と感じるようになったタイプです。

    「結果を出しても給料が変わらない」「評価されている実感がない」という状況が続くことで努力をやめてしまう。評価の公平性や納得感を重視する人ほど、このタイプに陥りやすい傾向があります。

    損得重視タイプ

    金銭的な損得やコストパフォーマンスを冷静に計算したうえで、静かな退職を主体的に選んでいるタイプです。

    「昇格するとプライベートの時間が失われる」「今の給料に見合った仕事量で十分」「副業をしたい」という合理的な判断が根底にあります。ある種の自己管理ともいえ、必ずしも後ろ向きな選択ではありません。

    無関心タイプ

    もともとの価値観として、変化や上昇を求めていないタイプです。

    「出世したいとは思わない」「たくさん稼ぎたいとも思わない」というスタンスで、仕事はあくまで生活の一部と割り切っています。仕事以外の場所に充実感を見いだしており、それ自体は一つの豊かな生き方の選択です。

    静かな退職のメリット

    「静かな退職」をしている人に「静かな退職」で得られたものがあるか聞くと、57.4%が「得られたものがある」と回答しました(※)。

    具体的には、「休日や労働時間、自分の時間への満足感(23.0%)」が最多で、「仕事量に対する給与額への満足感(13.3%)」が続きました。

    「静かな退職」で得られたものの具体例(複数回答・上位抜粋)

    休日や労働時間、自分の時間への満足感

    23.0%

    仕事量に対する給与額への満足感

    13.3%

    職場内の良好な人間関係

    12.7%

    仕事そのものへの満足感

    10.3%

    仕事の達成感

    9.6%

    仕事に費やしていたエネルギーを趣味・家族との時間・健康管理・学習などに充てることで、生活全体の充実感が高まるケースは少なくありません。

    調査の結果からは、業務に対する熱意を失っているわけではなく、むしろ持続可能な職業生活を望んでいる人が、過剰な負担から身を守りながら仕事を続けようとしているという見方もできます。

    また、過度なプレッシャーを手放して燃え尽き症候群のリスクを下げる、という選択を働き手が主体的にしている結果とも読み取れます。

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    静かな退職のデメリット

    「静かな退職」には中長期的に影響が出やすいデメリットもあります。以下のリスクについても理解しておきましょう。

    キャリアが停滞する

    最低限の業務だけをこなす状態が続くと、新しいスキルや知識を習得する機会が減り、キャリアが停滞しやすくなります。積極的に業務に取り組まないことで評価が低下し、長期的な視点で見ると経済的な安定や成長のチャンスを自ら放棄することにつながります。

    また、転職を考えた際にアピールできる実績や経験が乏しくなってしまうという問題もあります。特に若いうちに「最低限でいい」という習慣が定着すると、後から軌道修正が難しくなるリスクがあります。

    評価されにくい

    積極性が求められる職場では、静かな退職の状態は「やる気がない」と見なされがちです。

    業務範囲を必要最低限にとどめ、主体的な関与が見えにくくなることで、結果として評価が低くなる可能性があります。評価が上がらなければ昇給にもつながりにくく、経験を重ねても収入が変わらない状態が続きます。

    たとえ高収入を望んでいなかったとしても、自分だけ評価や給与が据え置かれる状況は、将来への不安やモチベーションの低下につながるといえるでしょう。こうした状態が続くことで、仕事との心理的な距離が更に広がる悪循環に陥ることも考えられます。

    人員整理の対象になりやすい

    生成AIの導入や業務効率化が進む現代では、「言われたことだけを淡々とこなす」働き方は、人員整理の対象となりかねません。貢献度が低いと見なされた場合、組織がコスト削減を目指す際に、最初の削減対象となり得ることは認識しておきましょう。

    また、こうした働き方は、組織側にもデメリットをもたらします。最低限の仕事しか担わない従業員の業務の一部は、ほかのメンバーが負担することが多く、不公平感や疲労感が増大します。その結果、優秀な人材が流出する事態にもつながります。

    静かな退職より、転職すべき人

    「静かな退職」は現代における選択肢の一つですが、すべての人にとってベストとは限りません。特に、仕事・環境が合わない「不一致タイプ」や、待遇・評価に不満を持つ「評価不満タイプ」の方は注意が必要です。

    不満を抱えたまま現状維持を続けても状況は好転しにくいため、転職などを通じて環境そのものを変えることが前向きな打開策になり得ます。まずは転職サイトへの登録や自己分析から始め、自分の市場価値や強みを把握しておくことも、長期的に見て効果的なキャリア戦略といえるでしょう。

    このほか、仕事から一定期間、距離を置く「キャリアブレイク」も一つの手です。休職や長期休暇、ボランティア休暇などを活用して環境を変え、スキルアップや自分を見つめ直す時間に充てることで、今後のキャリア戦略を練ることができます。所属する企業の休職や研修の制度を一度調べてみることをおすすめします。

    静かな退職に代わる「静かなやりがい」とは?

    アメリカでは新たな概念として「静かなやりがい(Quiet Thriving)」という言葉も生まれています。これは、競争社会にフルコミットするのではなく、仕事のなかに自分なりの小さなやりがいや喜びを見つけながら働くアプローチです。

    「仕事のなかで好きな作業を一つ見つける」「職場に気の合う仲間をつくる」「休憩時間に好きなことをする」といった、日常のなかでの行動や意識の切り替えを指します。仕事への向き合い方を少し変えることで、毎日をより自分らしいものにしていく——それが「静かなやりがい」の考え方です。

    どんな選択をするにしても、一つ意識しておきたいことがあります。職場環境や業務内容は、上司の異動や組織の再編などによってガラリと変わることがある、ということです。

    「やるべきことだけをこなす」姿勢に徹し続けるのではなく、状況に応じて関わり方や力の入れどころを柔軟に調整していくほうが、長期的に見て自分自身が納得できるキャリアを築くことにつながるでしょう。

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    まとめ

    「静かな退職」は、自分の時間や精神的な余裕を守れるメリットがある一方で、キャリアの停滞など中長期的なリスクがあることも事実です。

    大切なのは「自分はなぜ今の働き方を選んでいるのか」を認識すること。不本意な「静かな退職」なら、転職や環境改善のための行動が解決の糸口になるかもしれません。自らの価値観として選んでいるなら、「静かなやりがい」を取り入れながら、毎日をより豊かなものにしていけるかもしれません。

    変化が激しい時代だからこそ、「どう働き、どう生きるか」を主体的に考え、行動する姿勢がより重要になっています。

    執筆者

    小柳 眞理

    小柳 眞理

    キャリアコンサルタント、キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
    mk careers 代表

    日本とアメリカで25年にわたり、新聞・テレビ・Web・雑誌などのメディアで報道記者・編集者として取材・執筆・編集に従事。政治、外交、地方行政を中心に、これまでのべ2,000人以上にインタビューを行う。

    育休復帰後の働き方に悩んだ経験をきっかけに女性のキャリア支援を志し、2023年に国家資格キャリアコンサルタントを取得。同時期、記者として培った知見を更に深めるため大学院に入学し、20代の仲間たちと共に国際関係論を学ぶ。

    現在は、主に国内外の高校・大学・大学院生や多様な業種で働く女性へのキャリアコンサルティングを行うほか、ジャーナリストとしての取材・講演活動も続けている。

    マイナビ転職 編集部

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