育休手当(育児休業給付金)とは? 申請方法や受給期間を解説
更新日:2024年07月24日
記事まとめ(要約)
- 育児休業給付金とは、育休取得期間中に雇用保険から支給されるもの
- 原則として1歳未満の子どもを養育する働く男女で、雇用保険の加入者である必要あり
- 申請から受給までの手続きは会社が行う
- 支給対象期間は原則的に「育休の取得中」で、子どもの1歳の誕生日の前々日まで
男女共に長く働ける社会のためにも、現在は男性の「育休」取得推進が義務化されています。性別や雇用形態にかかわらず、育児休業は労働者に認められた権利です。
とはいえ必要に迫られない限り、「そもそも育休とはどんな制度で、誰がどのくらいの期間取得できるのか」「条件や注意点はあるのか」といったことは、なかなか調べないし、知らないものです。でも実は事前に知っておくことで、いざという時により安心して、計画的に活用することができるのです。
そこで、育児休業やそれに伴う金銭的な助成制度などについて徹底解説します。ぜひ一読し、今後のキャリアプランやライフプランに役立ててくださいね。
そもそも「育休」とは? 育休中は無給になるって本当?
「産休・育休」などとまとめて言及されることも多い、出産・育児に関わる休業制度。この2つ、きちんと違いが理解されていなかったり、混同されることもあります。更に「産休・育休中は給料が出ない」といった部分的な話を聞いて、不安に思ったことがある人もいるかもしれません。
まず産休(産前・産後休業)とは、働く女性のみが対象となり、出産の前後で取得できる休業制度のことです。一方で育休は、働く男女両方が対象となります。この違いを前提としたうえで、育休の取得対象者や期間、給料の取り扱いについて見ていきましょう。
育休とは、どんな制度? 対象となるのは?
育休の正式名称は「育児休業制度」で、原則1歳未満の子どもを養育する働く男女両方が対象となります。
育児休業は、原則子が1歳(最長2歳)になるまでの間に分割して2回取得することができ(取得の際にそれぞれ申し出)、申出期限は休業に入る原則1カ月前までに申請が必要です。
「育休中」=「働いていない期間」故に、ほとんどの場合は無給
結論から言えば、育休中は給料が支払われないケースがほとんどです。産休・育休の取得は労働者の権利ではありますが、そもそも給料とは労働の対価として支払われるもの。休業中でも給料を支払う企業はほとんどない、と考えておきましょう。
「育休中は無給」なんて言われたら、結局誰も取得しないのではないか? と思うかもしれませんが、その心配はありません。「無給」になるからといって、「無収入になる」という意味ではありません。
実際には国や自治体、会社が加入している雇用保険などから、給料の50%~67%程度の手当や給付金が支給されるためです。育休中に受給できる手当・給付金について、説明していきます。
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育休中の強い味方! 「育児休業給付金」とは?
まず、育休取得期間中に雇用保険から支給されるのが「育児休業給付金」です。では、どのくらいの期間、どのくらいの支給額を受け取ることができるのでしょうか?
育児休業給付金は、1歳未満の子どもを養育する雇用保険の被保険者が支給対象
育児休業給付金を受け取るためには、原則として1歳未満の子どもを養育する働く男女で、雇用保険の被保険者(加入者)である必要があります。従って、フリーランスや個人事業主は対象となりません。一方、アルバイトやパートなど有期雇用契約であっても、雇用保険加入者であれば受給対象となります。
また、受給には以下のような一定の条件があります。
- 育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12カ月以上あること
- 育児休業期間中の1カ月ごとに、休業開始前の1カ月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 支給単位期間中(育児休業を開始した日から起算した1月ごとの期間)の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること。
- 有期雇用契約の場合は、養育する子が1歳6カ月に達する日までの間に、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと(2歳までの育児休業の延長の場合は子が2歳に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと)。
育休中に支給される育児休業給付金の金額は? 給料をもとに計算される
では実際に、育児休業給付金は育休取得開始後、給料をもとにいくら、そしていつからもらえるのでしょう?
まず支給額は、休業期間の長さ、および休業に入る前の給料によって決まります。休業が6カ月(180日)の間は、休業前の賃金をもとに「休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日間)×67%」という計算で支給されます。180日を超える場合の支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日間)×50%」で、育休終了時までの期間支給されます。また、それぞれの支給率に応じて以下のような上限・下限が設けられています。
- 支給率67%の場合-上限額:31万143円/下限額:5万5,194円
- 支給率50%の場合-上限額:23万1,450円/下限額:4万1,190円
下限額は、育児休業期間中に勤め先の企業から賃金が支払われなかった場合の金額です。賃金が支払われた場合にはこの額を下回る可能性もありますので、詳細は以下の表を参照にしてください。
支払われた 賃金の額 |
支給額 |
---|---|
「休業開始時賃金月額」の13%(30% ※1)以下 | 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%(50% ※2) |
「休業開始時賃金月額」の13%(30% ※1)超~80%未満 | 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額 |
「休業開始時賃金月額」の80%以上 | 支給されません |
育児休業の開始から181日目以降は30%
育児休業の開始から181日目以降は給付率50%
参考:厚生労働省:「育児休業給付の内容と支給申請手続き」
申請から受給までの手続きについては、会社が行います。上司や総務担当者を通し、休業に入る1カ月前までに申し出るようにしましょう。
育児休業給付金はいつから受け取れる? 初回支給日の目安
「産前・産後休業」期間は育児休業給付金の支給対象外となります。従って、「産後休業」の対象となる出産翌日から8週間は対象外です。更に初回は2カ月分まとめて給付となることから、支給開始のタイミングは一般的に「出産日から4〜5カ月後」といわれています。
支給期間の延長は可能?
育児休業給付金の支給対象期間は原則的に「育休の取得中」で、民法の規定により子どもの1歳の誕生日の前々日まで、とされています。
ただし以下のような場合には、子どもが1歳6カ月(最長で2歳)になるまで育児休業期間が延長され、伴い育児休業給付金の支給期間が延長されることもあります。
- 待機児童などの要因で、子どもが1歳になっても申し込んだ認可保育園に入園できない場合
- 養育を行う予定であった配偶者が負傷、疾病、身体上・精神上の障害、離婚による別居などで子どもの養育が困難になった、あるいは死亡した場合
- 育休中に新たに妊娠・出産し、6週間(多胎妊娠では14週間)以内に出産予定、あるいは産後8週間以内(産前産後休暇)の場合
育休中の社会保険料、税金、年金はどうなる?
育休中、「無給=無収入ではない」とはいえ、ある程度収入の減少はあると思っておいたほうが良いでしょう。そんななか、気になるのが健康保険料・年金保険料・雇用保険料など社会保険料の支払いや、税金、年金の扱いではないでしょうか。一つずつ見ていきましょう。
育休の期間中、社会保険料の支払いは免除
気になる健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料については、育休期間中は支払いが免除されます。なお、雇用保険料は保険料免除の対象外ですが、育休中に賃金の支払いがない場合は保険料の負担はありません。
支払いが免除される具体的な期間は、育休取得開始日が属する月から始まり、育休終了日の翌日が属する月の前月まで、となっています。また2022年10月以降は、育休開始日の属する月と終了日の属する月が同一の場合であっても、当月に14日以上育休を取得した場合には、同じく保険料は免除されます。
支払いが免除されていても、保障は通常どおり受けることができます。更に免除期間中も納付期間扱いとなるため、厚生年金の受給にも影響はありませんのでご安心を。
育児休業給付金や、その他手当は非課税扱いとなる
税金の取り扱いについては、育児休業給付金やその他の手当(出産育児一時金、出産手当金など)を受け取る場合、これらはすべて所得ではないため非課税となります。次年度に住民税の控除申請をする際にも、基礎控除対象外となりますので、留意しましょう。
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育児休業給付金以外にも、活用したい「児童手当」
育児休業給付金の支給期間が終了した後でも、きちんと知って活用したいのが「児童手当」です。
児童手当とは、子育てをする世帯へ経済的な助成を行う制度のこと。一定の所得上限限度額は設けられているものの、原則的に子どもを養育する世帯であれば受けられる手当です。以下を一読し、当てはまるようであれば申請し、受け取れるようにしましょう。
支給対象および支給額、申請方法は?
既存の制度では(2023年10月時点)、中学校卒業まで(15歳になった日以降の最初の3月31日まで)の子どもを養育している世帯が支給対象となります。
支給金額は以下のとおりで、児童1人に対して所定の金額を受け取ることができます。
児童の年齢 | 児童手当の額 (一人あたり月額) |
---|---|
3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳以上 小学校修了前 |
10,000円 (第3子以降は 15,000円) |
中学生 15歳になった日以降の最初の3月31日まで |
一律10,000円 |
参考:内閣府「児童手当の利用方法」
申請するには、出産のタイミングやほかの市区町村から転入した際に、現住所の市区町村にて「認定請求書」の提出が必要です。市区町村から認定が降り次第、多くの場合は申請月の翌月分から、手当が支給されます。また支給は、原則として毎年6月・10月・2月に、まとめて4カ月分の手当が支払われます。
Q&A転職・退職する場合でも、育児休業給付金は受け取れる?
産休・育休の取得、育児休業給付金の受給は、休んだ後、同じ職場に復帰することを前提とした制度です。それでもさまざまな事情で、育児休業給付金の受給期間中に退職することがあったり、転職のタイミングが重なることもありますよね。そういった場合の育児休業給付金の取り扱いについて、Q&A形式で説明します。
退職する場合、退職日によって給付期間・金額はどう変わる?
A:育児休業給付金を受給している期間に退職する場合、退職する日によって給付期間および金額が変わります。
育児休業給付金の支給単位期間は1カ月ごとで、原則的に支給の対象となるのは「退職日の支給単位期間の直前の期間」とされています。
「退職日当日」までが支給単位期間として数えられるため、月末を退職日としない場合には注意が必要です。例えば1月10日が育児休業の取得開始日で3月に退職予定の場合、退職日が3月9日以降であれば1月・2月の両方が支給単位として数えられるため、2カ月分が支給されます。一方、退職日が3月8日までの場合には、1月のみが支給単位となり、1カ月分の支給となります。
また注意が必要なのは、給付金の受給条件にある「子が1歳6カ月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでないこと」です。つまり、育児休業に入る時点で退職することを予定していた場合には、受給条件から外れることになります。
転職した場合でも受給は可能? 注意点は?
A:転職先でも継続して雇用保険に加入していれば、被保険者の期間をそのまま引き継ぐことが可能です。ただし、以下のような条件がありますので注意しましょう。
- 前職を辞めてから1年以内に、転職先企業へ入社していること(通算)
- 転職までの間に「失業給付受給者」の認定をされていないこと
また、育児休業給付金の受給中に転職した場合でも、原則的には継続して給付金を受け取ることができます(育児休業期間中に1日の空白もなく転籍〔転職〕する必要があります。育児休業延長後に転籍〔転職〕する場合、給付金は離職日で支給終了します。令和4年10月以降は手続きなどの取り扱いが改正されていますので注意しましょう)。
Q&A育休明けの転職は可能? 注意点とは?
育休取得後すぐに転職したい、あるいは転職する必要が生じた場合は、どうでしょう? 気になるポイントを説明します。
育休明け、すぐの転職はアリ?
A:育休取得後すぐであっても、もちろん労働者の権利として転職することは可能です。
ただし、会社側からは快く受け止められない可能性もあります。会社や一緒に働く同僚たちの協力を得て、更に復帰することを前提に、給付金が払われていたことを忘れずに。しっかりと検討したうえで転職を決意した場合には、会社には退職日の2週間前までに伝えるようにしましょう(民法627条1項)。
育休明けの転職で、注意すべき点とは?
A:育休明けすぐの転職を検討する場合に知っておきたいのは、転職先での勤務のほうが「育児と勤務の両立が大変になるかもしれない」という点です。
育休取得後に利用可能な「時短勤務制度」は、多くの企業で入社後1年未満の社員を対象外としているからです。更に、有給休暇や時間単位で取得可能な「子の看護休暇」についても、勤続6カ月以上から付与される企業がほとんどです。応募先企業の制度をよく確認するようにしましょう。
育休明けにすぐ転職したら、育児休業給付金は返金が必要?
A:育児休業給付金は、育児休業の取得中に、給与の代わりに雇用保険から一定額の給付を受けられる制度です。育休取得後に転職することになった場合でも、受け取った給付金を返金する必要はありません。
ただし前述のとおり、育休に入る前に転職・退職が決まっていた場合には、そもそも給付金は受給できないことになっていますので留意しましょう。
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Q&A転職して入社1年未満だと、育休は取れない?
有給などの休暇制度は、多くの会社で勤続6カ月以上から取得することができます。育休に関しても、そのような規定はあるのでしょうか? 転職後すぐに育休を取る必要がある場合の疑問に答えていきます。
転職してすぐ、入社1年未満でも育休は取れる?
A:社員から育児休暇取得の申し出があった場合、原則的に企業は拒むことができないため、1年未満であっても育休取得は可能です。
ただし育休取得に関して労使協定によって、以下のような対象外の規定が定められている場合があります。当てはまる場合には対象外になる可能性があるため、注意しましょう。
- 入社1年未満の従業員
- 申し出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
雇用期間が1年未満で育休取得ができなくても、1年待てば取得は可能?
A:入社1年未満で育休の取得対象外となっても、入社後1年以上経過してから育休取得を申し出れば、取得することが可能です。原則として、申し出の1カ月後から子どもの1歳の誕生日の前々日まで、育休を取得することができます(入社1年未満かどうかは、育休の申出時点で判断する)。
ただし、これでは産休取得から育休取得の開始までに空白ができてしまい、いちばん育休を取りたい時期に休みが取れない、ということにもなり得ます。空白期間は休職・欠勤扱いになっても休みを取る、特例として育休を認めてもらう、といったことを勤め先の会社に相談・交渉してみても良いでしょう。
【まとめ】給付金や手当を活用し、安心して育休取得を
育児休業、育児休業取得金について、制度の内容や取得・受給における注意点などについて、全体像を理解できましたか?
「育休中は給料が出ない」など部分的な情報だけ得てしまうと、つい不安になってしまいがちですよね。落ち着いて制度全体について知っていけば、金銭的な助成制度が整っていることも理解でき、安心できるのではないでしょうか。
また育休を取得する際や取得後、転職・退職のタイミングが重なった場合には、会社に対して社会人マナーを守ったコミュニケーションをすることも忘れずに。仕事と育児を長く両立させていくためにも、適切に活用しましょう。
監修者
塚本 泰久
社会保険労務士
ツカモト労務管理事務所 代表
関西地区を中心に、地域に密着した親切丁寧な事務所を目指しています。会計事務所での経験から、企業の労務管理と財務状況とのバランスを重視した適切なアドバイスを行うことで、より良い企業の体制作りをサポートしています。
マイナビ転職 編集部
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