自己資本比率とは?業界別の目安・計算方法・安全性の見方を解説
掲載日:2024年08月26日
記事まとめ(要約)
- 自己資本比率とは、企業が借入などに頼らず、どれくらい自己資本(返済不要の資本)で事業を運営できているかを示す
- 自己資本比率が高いほど、財務的に安定している傾向にある
- ただし、自己資本比率の平均値は業種によって異なるため、一概に高い低いだけでは判断できない
- 自己資本比率に加えて、自己資本利益率(ROE)なども踏まえて分析する必要がある
- 転職先を選ぶ際は総合的な観点から考慮し、企業の財務状況を適切に判断することが大切
将来性のある企業を見極める際には「自己資本比率」の高さが判断材料の一つになります。
自己資本比率とは、企業が持っている資本(事業活動の資金・元手)のうち、返済不要の資本=自己資本がどれくらいの割合を占めるかを示したもので、企業の財務状況を判断するうえで重要な指標です。自己資本比率について正しく理解し、転職先選びに役立てていきましょう。
自己資本比率の意味や業界別の目安・計算方法のほか、安全性の見方について解説します。
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資本(自己資本と負債の合計額)における自己資本の割合を示す数値です。自己資本は、総資本から負債(返済する必要がある資本)を差し引いた額を指します。
例えば、企業に100万円の資金があり、そのうち20万円が銀行等からの借入金だった場合、自己資本に該当するのは80万円になります。この場合の自己資本比率は80%となります。
このように、自己資本比率は企業の財務状況を表すものであり、将来性や経営状態を判断するうえで重要な指標の一つです。割合を示すことから、パーセンテージ(%)で表されます。
自己資本比率が高いほど、企業は自前の資金で事業を営んでおり、「財務健全性が高い」と評価されます。財務健全性とは、企業の財務状況の健康状態を示すもので、資金借入金が少ないほど高く、将来にわたって安定した経営ができる企業といえます。
反対に、自己資本比率が低い企業は、借入金に依存した財務状況にあり、将来的な経営リスクがあると考えられます。
企業の経営状態を見極めるうえで、自己資本比率は欠かせない指標です。特に、転職先を選ぶ際は、企業情報として数値を確認しておくと良いでしょう。
自己資本の意味
自己資本とは、企業の資金のうち、返済の必要がない、自社が持つ純粋な資本のことを指します。貸借対照表上では、自己資本は「純資産」に該当します。
<貸借対照表>
【資産】 | 【負債】 (返済する必要がある 企業の資産) |
---|---|
【純資産】 (返済する必要がない 企業の資産) |
貸借対照表は、企業の財務状況を示す表(財務諸表)です。上記のように、左右に並べて示されており、右列と左列の合計は同じになります(資産=負債+純資産)。
「資産」は企業が保有するすべての経済的資源をまとめたもので、その内訳として、資金がどこから調達されたかを示す「負債」「純資産」に分けられます。
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自己資本比率の調査方法
自己資本比率を確認したい場合には、公開されている「貸借対照表」から読み取ることができます。
上場企業の場合、貸借対照表を含む財務情報を開示する義務があるため、企業のホームページ等で公開されています。投資家向け情報(IR情報)のページから「有価証券報告書」や「決算短信」などの資料を入手し、その中にある貸借対照表の数値を確認してみましょう。
また、上場企業の財務諸表が閲覧できるWebサイト「EDINET(金融庁運営)」や、投資情報誌「会社四季報」にも、上場企業の財務データが掲載されています。
非上場企業の場合は、財務情報を公開する義務がないため、確認できないことがあります。ただし、一部の企業は自主的に決算などを公開しているため、気になる企業のホームページ等を確認してみましょう。
自己資本比率の計算方法
自己資本比率は、以下の計算式で求められます。
自己資本比率
=自己資本÷総資本(※)×100
- 総資本:負債と自己資本の合計で、資産(貸借対照表の左側)に該当する
例えば、貸借対照表で以下の数値が示されている場合、計算式に当てはめると「自己資本555万円÷総資本1,000万円×100=55.5%」となり、自己資本比率は55.5%であることが分かります。
<貸借対照表>
【資産】 1,000万円 |
【負債】 445万円 |
---|---|
【純資産】 555万円 |
一般的に、自己資本比率が50%を超えていれば、健全な財務体質であるといわれています。この例では、自己資本比率が55.5%と高水準の企業であり、財務的に安定していることが分かります。
自己資本比率と自己資本利益率の関係
自己資本比率と似た言葉に「自己資本利益率(ROE)」があります。
自己資本利益率とは、企業が自己資本を活用して、どれだけの利益を上げているかを示す指標で、パーセンテージ(%)で表されます。
自己資本利益率の計算式は以下のとおりです。
自己資本利益率(ROE)
=当期純利益(※)÷自己資本×100
- 当期純利益:該当する会計期間(1年間)の利益から経費や法人税などを差し引いた後、最終的に株主にもたらされた利益
自己資本利益率が高いほど、自己資本を使って効率よく、多くの利益を上げているといえます。逆に、低い場合には、自己資本をうまく使えずに利益を上げにくい状態、つまり、企業として稼ぐ能力が低いといえます。
自己資本比率と自己資本利益率は、いずれも企業の財務状況を判断するのに役立ちますが、それぞれの数値は相反する傾向がみられます。
自己資本比率が高い企業は財務的に安定しているものの、自己資本利益率が低ければ、利益を上げにくい状態にあるかもしれません。反対に、自己資本比率が低くても自己資本利益率が高い企業は、リスクを取りながら高い収益を上げていると考えられるでしょう。
そのため、自己資本比率と自己資本利益率のバランスを考えつつ、業種特性を踏まえて自己資本利益率の水準を評価することが、企業の財務健全性と収益性を正しく理解するためのポイントといえるでしょう。
ただし、自己資本利益率の評価には、業種ごとに平均的な数値の差があります。単に、両指標の数値を見るだけでなく、自己資本利益率を業界平均と比較したうえで、相対的に評価するようにしましょう。
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【業界別】自己資本比率の平均・目安
自己資本比率は、企業の財務健全性を示す重要な指標ですが、その平均値は業種によって大きく異なります。例えば、在庫を抱える必要のない情報通信業(IT企業など)は、自己資本比率が高い傾向にあります。
一方で、固定資産(設備や建物などの資産)の割合が高い業種では20%以上、流動資産(短期で現金化できる原材料や商品などの資産)の割合が高い業種では15%以上が目安といわれています。企業の安定性を測るには、同じ業界の平均と比較してみましょう。
業種別の自己資本比率の平均をまとめました。
業種 | 自己資本比率の平均 |
---|---|
情報通信業 | 56.98% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 53.77% |
製造業 | 44.30% |
建設業 | 43.05% |
卸売業 | 39.62% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 37.73% |
小売業 | 36.64% |
サービス業(他に分類されないもの) | 35.88% |
不動産業・物品賃貸業 | 35.18% |
運輸業・郵便業 | 33.88% |
宿泊業・飲食サービス業 | 13.93% |
参照:中小企業実態基本調査報告書(令和3年度決算実績)|中小企業庁
情報通信業や専門・技術サービス業などのITを活用する領域の広い業種では自己資本比率の平均が高く、宿泊業・飲食サービス業や運輸業・郵便業などの人の手を介する業務が大部分の業種では自己資本比率の平均が低いことが分かります。
ただし、あくまで業種別の平均値であり、企業個々の自己資本比率は、業界内でもばらつきがあります。そのため、自己資本比率の評価には、業界平均との比較だけでなく、同業他社との比較や、その企業の過去の推移なども併せて分析することが重要です。
転職希望者が自己資本比率を見ることが重要な理由
転職先候補を検討する際は、できるだけ経営が安定し、長く働きやすい企業を希望する人が多いのではないでしょうか。そうした優良企業を見極めるうえで、自己資本比率の分析が役立ちます。
例えば、自己資本比率が高い企業は以下のような特徴があります。
- 不況においても、自己回復力が強い
- 借入金の返済負担が少ないため、経営が安定している
- 金融機関からの融資が受けやすい
できるだけ自己資本比率が高い企業を選ぶことで、安定した収入の確保やキャリアアップが期待できるでしょう。ただし、業界によって平均が異なる点や、企業ごとに異なる自己資本比率の背景まで確認しておくことが大切です。
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企業の経営状態における安全性を見る際の判断基準
「自己資本比率」は企業の財務状況を知ることができますが、上述したように、適正な値は業種によって異なります。そのため、健全性を判断するという点ですべての企業で共通するような基準を作ることはできません。とはいえ、漠然としたままでは、どう判断して良いのか困ってしまうでしょう。
そこで、一般的な目安として示される基準をもとに、自己資本比率から企業の健全性を判断する方法を紹介します。
自己資本比率が40%前後であれば安全性が高い
一般的に、自己資本比率が30%以上、特に40%前後であれば、企業の財政が厳しくなる リスクは比較的低いと考えられています。社会的に大きな不況を迎えたとしても、自社の資金で耐えうる可能性が高く、安定的な経営を続けられる企業といえます。
ただし、自己資本比率は高ければ高いほど良い、というわけではありません。自己資本比率が極端に高い企業は、自己資本が多くても、効果的に活用できていない可能性が考えられます。
企業が成長するためには、新しい事業に挑戦したり、設備に投資したりする必要があります。そのためにはある程度、外部資金が必要になるものです。自己資本ばかりに頼る経営手法では、成長のチャンスを逃してしまうかもしれません。
自己資本比率が高すぎるのは良くない場合がある
自己資本比率が50%を超えていれば優良企業といわれ、財務状況としては安定しているとされています。しかし、自己資本比率が極端に高すぎる場合には、注意が必要です。
先にもお伝えしたとおり、自己資本比率が高すぎると、企業が自己資本を効果的に活用できていない可能性があります。借入をしてでも企業を成長させていくという意向が感じられず、保守的な経営方針に対して投資家からの信頼度が薄れ、今後の資金調達が困難になることもあります。
また、自己資本比率が高くても、投資などが多く、現金預金などの流動性が高い資産の割合が低ければ、予期せぬ支出が発生した時に対応できないことがあります。
自己資本比率が高ければ、一般的には金融機関から借入しやすい状態であると考えられます。一方で、金融機関からの融資実績が少ない場合、金融機関と信頼関係を構築する機会があまりないことを意味します。
つまり、経営が安定した状態での融資は受け入れてもらえても、将来的に事業が傾いた時、信頼関係がないために資金の調達が難しくなるといったリスクも抱えています。
過去に融資を受けていたり、融資以外の取引を行っていたりすれば、金融機関からの信頼を得ている安定企業である可能性が高いといえます。
自己資本比率が業種平均を大幅に下回る場合は注意
自己資本比率が業種平均を大幅に下回っている企業は、資金の多くを借入に頼っていることから財務状況にやや不安がある可能性があります。自己資本が少ないなかで、中長期的に経営を安定させるには、収益力を高め、高い利益を出せるような経営体制づくりが不可欠です。
また、自己資本比率が低い企業は、社会的に不景気になったり、不測の事態が起こったりした時に対応できる自己資本がありません。万が一への備えが不十分で、突然、財務的に困難な状況に陥るリスクがあります。
もし、自己資本比率がマイナスの場合、債務超過の状態にあります。債務超過とは、企業が持っている資産よりも、借入金などの負債の額が上回っている状況を指します。債務超過に陥った企業は、事業の継続が難しくなり、最悪の場合、倒産に至ることもあるでしょう。
ただし、立ち上げ直後のベンチャー企業などは、自己資本比率が低いながらも、将来の利益を見越している場合があります。状況を踏まえて検討しましょう。
自己資本比率は企業の財務健全性を判断する際に役立ちますが、その数字だけに頼って転職先を決めてしまうのは賢明ではありません。いずれの場合でも、自己資本比率を参考にしつつ、企業の収益と費用を示す損益計算書などの財務指標や企業の成長性、経営方針なども総合的に評価することが大切です。
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転職希望者が自己資本比率を見る際のポイント・注意点
自己資本比率の目安をお伝えしてきましたが、そのほか、以下のポイントもチェックしておきましょう。
業種別の平均自己資本比率と比較する
自己資本比率は業種によって大きく異なります。業種平均や競合他社と比較したうえで、参考にしましょう。
例えば、IT業界では設備投資の負担が少ないため、比較的高い自己資本比率を維持しやすい一方、宿泊・飲食サービス業では業種の特性上、自己資本比率が低くなる傾向にあります。
業種別平均と差異がある場合には、原因をチェックする
自己資本比率が業種平均より低い場合、設備投資のために借入金が増えている、収益が下がっているといった原因が考えられます。また、業種平均より高い場合でも、自己資本を効果的に活用できず利益が少ない可能性もあります。企業の収支バランスを考えて判断する必要があります。
財務状況の変化を見る
ある年だけの結果を見るのではなく、過去からの変化も確認しておきましょう。例えば、設備投資のために一時的に自己資本比率が低くなっているのであれば経営への影響も少ないと考えられますが、過去から10%以下の状態が継続している場合には注意が必要です。
一時的な増減なのか、借入金に依存した経営で資金繰りが厳しい状況を示唆しているのかを見極めましょう。自己資本比率の高低だけでなく、企業の成長ステージや収益性なども併せて確認し、総合的に企業の財務状況を確認することが大切です。
まとめ
自己資本比率とは、総資本のうち、借入に頼っていない自己資本の割合を指します。企業が財務上、健全かどうかを判断するための材料の一つであり、転職先を選ぶ際にもチェックしておきたいポイントです。
基本的に、自己資本比率が高いと財務的に安定している傾向があります。しかし、極端に高すぎる場合には、効果的な経営が行われていない可能性もあるため、ほかの要素も含め判断しなければいけません。
企業の将来性を判断する際には、自己資本比率だけでなく、業界平均や自己資本利益率(ROE)なども総合的に考慮したうえで検討しましょう。さまざまな資料から、多角的な視点を持って、転職先候補を選ぶことが大切です。
監修者
谷所 健一郎(ヤドケン)
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)
有限会社キャリアドメイン 代表取締役
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例」(マイナビ出版)、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。
マイナビ転職 編集部
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