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給与明細とは?見方や保管が必要な理由、保管期間についても解説

掲載日:2024年09月26日

給与明細とは?見方や保管が必要な理由、保管期間についても解説
服部 大

監修者服部 大

税理士・中小企業診断士/服部大税理士事務所

記事まとめ(要約)
  • 給与明細には、会社から給与として受け取るお金だけでなく、税金など自分が負担する金額も記載されている
  • 勤怠・支給・控除欄を確認し、給与の計算過程や差し引かれた金額が正しいか確認する
  • 給与明細は、各種申請時に必要な場合があるため、5年間程度保管しておくと安心
  • 転職先の会社から、前職の給与明細の提出を求められることがある

給与明細は、収入の証明にもなるものです。転職時に、前職の給与明細の提出が求められる場合もあるため、保管が必要です。給与明細を受け取った際に確認しておきたい内容や、保管期間について解説します。

目次

    給与明細とは

    給与明細とは

    給与明細とは、会社から渡される給与の支払いについての内訳が記載されたものです。

    労働時間や、各種手当を入れた給与の額面、差し引かれた税金、社会保険料などの金額が分かる書類になっています。

    給与計算に直結する労働時間や、出勤日数などの勤怠情報も記載されており、実際に働いた時間などが分かります。住宅ローンの申請時などに用いられることのある給与明細は重要な書類で、その内容について正しく理解しておくことが大切です。

    また、給与に関するトラブルが発生した場合の証拠となるため、適切に保管しておくと安心です。

    なお、雇用主には、法律で定められているように、給与明細を発行する義務があります。

    正社員はもちろん、パートやアルバイトを含む全従業員が給与明細を受け取ることが可能です。派遣社員の場合は、派遣先の会社からではなく、派遣会社(派遣元)から受け取ります。

    給与明細の種類

    給与明細は、紙もしくは電子版で交付され、基本的に記載されている内容はどちらも同じです。

    近年では、給与明細の電子交付が進んでいます。用紙や印刷代がかからず、封筒に入れるといった手間も省けることから、業務効率化やコスト削減を目的に取り入れる会社も増えてきました。

    テレワークが進んでいる昨今の状況を踏まえると、今後も電子交付を行う会社が増えると予想されます。

    給与明細を確認・管理するためにも、届いたタイミングで閲覧することを習慣づけましょう。

    なお、電子化しても従業員が希望すれば、前述した所得税法第231条により、これまでどおり、書面での給与明細が発行されます。

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    給与明細の基本構成

    給与明細の基本構成

    給与明細の基本構成は、主に以下の4つです。

    1. 基本情報:社員番号や氏名、給与支給日など
    2. 勤怠(きんたい):勤務実態を表す。出勤日数や時間外労働時間、遅刻回数、欠勤日数、有休日数など
    3. 支給:基本給に役職手当や家族手当、住居手当などを加えた総支給額。額面(がくめん)
    4. 控除(こうじょ):給与から差し引かれる所得税や住民税、社会保険料など
    給与明細のサンプル画像

    給与明細には、総支給額から税金や社会保険料などが差し引かれた金額が、差引支給額(手取り)として記載されています。

    給与明細の見方

    給与明細の見方

    給与明細の記載項目は、法律等で定められたものではありません。そのため、会社によって記載方法や記載項目は異なります。

    給与明細に誤りがあると、差引支給額も間違っている可能性があるため、内容を確認しておきましょう。以下で、確認すべきポイントを解説します。

    勤怠

    勤怠とは、給与計算の基となる勤務状況のことです。会社ごとに給与の締め日が異なるため注意が必要です。

    給与計算の区切りとなる日(締め日)が15日で、給与支払い日が25日の場合、前月の16日から当月の15日までの働いた状況に応じて給与が支払われます。

    確認しておきたいのは、遅刻回数や欠勤日数です。会社によっては、回数や日数に応じて基本給などが減額になる可能性があります。

    また、残業時間が正しく反映されていないなど、記載間違いの可能性もあるため、実際の勤務状況と合っているか確認してください。

    支給

    支給額として記載されているのは、基本給に各種手当を含めた金額です。額面といわれ、この金額の12カ月分に賞与を加えたものが年収となります。

    支給額は税金や社会保険料などが差し引かれていないため、自分の手元に入る金額(手取り額)ではありません。

    総合的な金額だけではなく、各項目についても適切に手当が反映されているのか確認が必要です。

    会社によって手当の内容や金額はさまざまで、自分の会社でどのような手当が支給されるのか、どの程度の金額になるのかを知っておく必要があるでしょう。

    以下は、一般的な手当の一例です。

    • 住居手当:家賃や住宅ローンなどの補助が目的の手当
    • 通勤手当:通勤に必要な公共交通機関の費用やガソリン代などの手当
    • 役職手当:役職に就いている人への手当
    • 資格手当:特定の資格を保有している人への手当
    • 家族手当:配偶者や子ども、両親などの扶養家族がいる人への手当
    • 皆勤手当:無遅刻無欠勤の場合の手当
    • 出張手当:出張に行った場合の手当
    • 残業手当(時間外手当):法定労働時間を超えて勤務した場合の手当
    • 深夜手当:22時から翌5時(厚生労働大臣が必要であると認めた場合の地域や期間では、23時から翌6時)に労働した場合の手当
    • 休日手当:労働者に必ず与えられる法定休日に労働を行った場合の手当

    通勤手当や住居手当は、新居の購入や引っ越しなどによって金額が変わるケースもありますし、役職に就いた後や資格取得後などで、これまでなかった手当が支給されることもあります。

    このように手当が支払われる条件が変わった際には、正しく反映されているかどうか、特に注意して見ておきましょう。

    なお、残業手当については、時間外労働や深夜労働、法定休日における労働のいずれかに該当する場合、それぞれの割増率で計算した割増賃金を支払うように、労働基準法の第37条に規定されています。労働時間に見合った正しい金額が支給されているか確認することが大切です。

    控除

    総支給額からある一定の金額を差し引くことを控除といい、具体的には以下のようなものがあります。

    • 健康保険料:病院を受診した時などに利用する、公的医療保険制度に加入するために支払う保険料
    • 介護保険料:40歳以上の人が納付対象で、介護保険制度に利用されるもの
    • 厚生年金保険料:公的年金制度の一つで、一定の要件を満たす会社員などが納めるもの
    • 雇用保険料:失業した時に給付される基本手当(失業手当)や再就職の支援サービスに利用するためのもの
    • 所得税:社会保険料等控除後の給与や扶養人数に基づいて徴収される税金
    • 住民税:前年度に課税所得のある人が1月1日時点における居住地の都道府県や市区町村に納める税金

    控除される金額は、個人の状況によって異なります。

    個人の所得に応じた所得税や住民税、居住地によって納付額が異なる健康保険料や介護保険料など、それぞれの内容を知り、以前の給与明細と比較するなど確認してください。

    そのほか、会社によっては労働組合費や積立金など、所定の費用が差し引かれる場合もあります。どのような控除があるのか、金額や内容についても理解しておきましょう。

    差引支給額

    総支給額から、社会保険料や税金を差し引いた金額を表す差引支給額は、いわゆる「手取り」といわれるものです。

    ここに記載された金額は、直接手渡しよりも、銀行口座に振り込まれるケースがほとんどでしょう。

    控除額や手当額の入力ミスなどで支給額が少ない場合もあるため、給与明細だけでなく、振り込み後の金額も確認しておくことをおすすめします。

    なお、差引支給額はプラスの値になるのが通常ですが、長期欠勤による基本給の減額などで、控除額のほうが多くなるとマイナスで表示されます。こうした場合は、差額を会社に支払わなくてはいけません。

    期間限定の「定額減税」

    政府が実施している期間限定の「定額減税」とは、個人の所得税や住民税が減額される制度で、給与所得者の場合、手取り額が一時的に増加します。

    この制度は、物価高騰による家計の負担を軽減し、景気回復につなげるために2024年6月から実施されました。

    対象は日本国内に住んでいる納税者で、2024年(令和6年)の所得税にかかる年間の合計所得金額が1,805万円(退職金等を含む)以下の人です。

    具体的には、年間一人当たり3万円の所得税と1万円の住民税が減税されることで、差引支給額が増加します。

    2024年6月以降の給与や賞与から順次税金から控除されるこの内容は、給与明細への記載が義務づけられているため、減税額は給与明細で確認できます。

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    給与明細を保管する必要があるのはなぜ?

    給与明細を保管する必要があるのはなぜ?

    給与明細は、実際に受け取った金額の確認や、税金として徴収された金額の証明になるだけでなく、さまざまな手続きの資料としても重要なものです。

    また、転職先の会社から給与明細の提出を求められる場合もあるため、保管しておきましょう。なぜ、給与明細が必要となるのか解説します。

    トラブル時の証拠となる

    給与明細は、給与の未払いや労働条件の違反など、問題が発生した場合の証明書になります。

    残念なことではありますが、残業代の未払いや、給与計算のミス、控除額の誤りなどが起こることもあります。

    こうしたトラブルが起きた場合に、保管しておいた給与明細を提示することで問題が特定でき、適切な対応を会社側に求めることができます。

    収入証明書として必要なシーンがある

    収入証明書には、年収を把握できる源泉徴収票を使用するケースがほとんどです。しかし、源泉徴収票がない時の代用として、給与明細を使用することがあります。

    また源泉徴収票と給与明細を併せての提出が求められるケースもあります。

    月ごとの収入金額が記載されている給与明細は、賃貸物件を借りる場合や、住宅・自動車などのローン、クレジットカード作成の申し込みなどに収入証明として使用が可能です。

    クレジットカード申請時は2カ月分、住宅ローンは3カ月分など、数カ月分の明細が必要な場合もあり、申し込みの内容によって異なります。加えて、賞与明細が必要な場合もあります。

    また、保育園の申し込みを行う際にも、収入証明として給与明細が使用できる場合があります。

    雇用保険の申請時に役立つケースもある

    日本には労働者の生活や雇用の安定を図るための、雇用保険制度があります。労働者を雇用する事業所は、原則として雇用保険の加入手続きが必要です。

    雇用保険に加入が必要な条件は以下のとおりです。

    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    • 31日以上の雇用見込みがあること

    これらの条件に当てはまる人は、雇用保険の被保険者として、毎月の給与から雇用保険料が徴収されることになります。

    雇用保険料を支払い、条件を満たした人は、離職後に「失業手当」と呼ばれる基本手当を受け取ることができます。この手続きには会社から発行される「離職票」が必要で、その内容を確認する際に、給与明細が役立ちます。

    また、会社が雇用保険の加入手続きを失念していたというトラブルが発生した場合には、給与明細などを通じて雇用保険料が給与から天引きされていた事実を確認できるかどうかによって、さかのぼって加入できる年数が異なります。

    転職時に提出を求められる場合がある

    転職先候補となる会社から、給与明細や源泉徴収票の提出を求められる場合があります。

    これは、個人の経験やスキルに応じた適切な給与額を決定するために使用されるものです。

    給与明細は、求職者が実際に働いていたことの証明であり、転職先に前職の勤務状況を正しく伝えるものです。前職の給与明細を提出することで、自分の市場価値を明確に示すこともでき、適切な給与を得られる可能性が高まります。

    提出するタイミングとしては、最終面接時などの内定前に求められることが多いでしょう。提出が困難な場合は、正当な理由を説明する必要があります。

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    給与明細はどれくらいの期間、保管すべき?

    給与明細はどれくらいの期間、保管すべき?

    給与明細は、給与額を確認するだけのものではなく、労働の証拠にもなる重要な資料です。

    収入証明として使用することもあるので、突発的に必要になるかもしれません。とはいえ、いつまで保管しておけば良いのか迷うことでしょう。

    どれくらいの期間、保管すると良いのかお伝えします。

    5年間保管しておくと良い

    給与明細の提出は、求められる内容によって保管期間が変わります。

    少なくとも2年以上、可能であれば5年間は保管しておくのが理想です。その理由として、以下のような点が挙げられます。

    • 勤務先の手続き漏れなどにより、雇用保険の未加入が判明した場合、原則として2年前までさかのぼって加入手続きが可能。しかし、給与明細で雇用保険料が天引きされていることが分かれば、2年を超えて遡及(ソキュウ)加入が可能となる
    • 未払い分の給与を請求できる期間が5年で時効になる(労働基準法第115条)
    • 確定申告で還付が発生する場合は過去5年までさかのぼって行える

    このことから、給与明細は5年間保管しておくのが理想です。

    とはいえ、毎月の給与明細が数年分となると保管も大変で、保管方法にも工夫が必要です。保管方法については後述します。

    会社側に給与明細の保管や再発行の義務はないため注意が必要

    法律上、会社・個人双方に給与明細を保管する義務はありません。

    そのため、受け取った個人が給与明細を処分しても問題にはなりません。

    また、会社に保管義務のある書類としては源泉徴収簿(保管期間7年)、労働者のタイムカードなどの書類(3年)、雇用保険に関する書類(2年)などで、給与明細は含まれません。

    会社側に保管義務はなくても、管理上、数年程度は保管されている可能性があり、給与明細の再発行をお願いできるかもしれません。

    しかし、再発行の義務は法律で規定されていないため、確実とはいえません。再発行を求めた際の対応は会社によって異なります。

    給与明細の保管方法

    給与明細の保管方法

    紙で発行された給与明細は、数年分となると収納方法に困るかもしれません。紙で交付された場合に給与明細を保管する方法として、以下のような例があります。

    • バインダーを利用してとじる
    • 仕切りのついたファイルやファイルケースに分類して保管
    • 複数枚とじることが可能なダブルクリップではさむ
    • 写真撮影をしてデジタル化し、画像として保管する
    • スキャンアプリを使用してPDF化し、自身のパソコンやスマートフォンに保管する

    PDFファイルに変換して保管しておくと、必要な時に印刷して使用できます。

    ただし、給与明細の原本が必要になる可能性があります。基本的には5年間の原本保管を想定して扱いに注意をはらっておきましょう。

    また、電子交付の場合は、データを自身のパソコンやUSBメモリなどに保存しておきましょう。勤務先の備品であるパソコンに保存してしまうと、取り出せなくなる可能性があります。

    保存時には必要な時に該当ファイルを見つけやすくなるように、年度や月ごとにまとめておくと良いでしょう。

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    Q&A給与明細に関する疑問

    給与明細に関する疑問

    ここからは、給与明細に関する疑問について、Q&A方式で解説します。

    給与明細の内容が間違っていたら?

    A. 速やかに担当者に報告しましょう。

    各種手当は、労働条件が変わったタイミングで確認が必要です。資格手当に該当する資格を取得した、役職に就いたといった場合に手当が加算されているか見ておきましょう。

    残業をしても正しい時間で計上されていないケースもあります。実際の勤務状況を把握しておくことが大切です。

    また、控除額は、個人の置かれている状況で変わるため、誤りに気づきにくい項目です。

    例えば住民税は、前年度の課税所得に応じて徴収額が決まります。社会人1年目の人は住民税がゼロの場合も多いですが、2年目以降になると徴収が始まり、控除額が増える傾向にあります。

    一方で、給与の過払いがあった場合も、必ず申告してください。給与を受け取った人が、過払いの事実を知っていたにもかかわらず放置した場合、利息をつけて返還することを求められることがあります。

    給与明細がもらえません

    A. 給与明細の発行は、会社の義務です。発行をお願いしましょう。

    所得税法において、会社側は、給与明細の発行を行うように定められています。

    パートやアルバイト勤務も含め、すべての従業員は受け取る権利があることを知っておきましょう。

    前述したように、給与明細が電子交付の場合でも、従業員が希望すれば書面で発行されます。

    なお、会社側が対応を受け付けてくれない場合は、外部に相談するのも一案です。税務署や労働基準監督署のほか、厚生労働省が管理している労働条件相談「ほっとライン」などがあります。お困りの方は各種サービスを利用してみましょう。

    まとめ

    給与明細は、手取り額だけでなく、税金として徴収された金額や、実際に働いた時間も記載された、労働の証明となる書類です。

    基本情報・勤怠・支給・控除の4つの項目が記載されているため、ポイントを踏まえて誤りがないか確認しましょう。

    また、給与明細はローンやクレジットカードの申し込みなどに使用したり、転職先の会社で提出が求められたりすることがあります。証明書として重要な役割を果たす給与明細は、2年~5年程度保管しておくと安心です。

    監修者
    服部 大

    服部 大

    税理士・中小企業診断士
    服部大税理士事務所

    2020年2月、30歳で名古屋市内にて税理士事務所を開業。
    平均年齢が60歳を超える税理士業界内で数少ない若手税理士として、同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘。

    単発の税務相談や執筆活動も承っており、「分かりにくい税金の世界」を分かりやすく伝えられる専門家を志しています。

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