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退職金の相場はいくら?企業規模や勤続年数別の平均、税金や計算方法も解説

更新日:2025年12月04日 退職金の相場はいくら?企業規模や勤続年数別の平均、税金や計算方法も解説

松田 聡子

監修者松田 聡子

ファイナンシャルプランナー/群馬FP事務所 代表

記事まとめ(要約)

  • 退職金には主に4つの種類がある
  • 勤続20年以上で定年退職を迎えた場合、平均額は1,896万円
  • 退職事由、企業規模、勤続年数などによって相場は変わる(退職金相場・平均額一覧あり)
  • 退職金がない会社もある

退職を考えた場合、「退職金はもらえるの?」「もらえるなら、いくらぐらい?」と、気になるのではないでしょうか?

退職金の有無や採用している制度の内容は企業により異なります。また、給付額の相場は、退職理由や企業規模、勤続年数などさまざまな算定要因により上下します。

自身が受け取れる退職金がどのくらいなのか、また損をしないためにも、退職金制度について正しい知識を身に付けましょう。

目次

    退職金とは?

    退職金とは、退職時に従業員に支払われるお金のことです。退職金は法律で定められた制度ではないため、支給時期や金額などは企業ごとに異なります。

    例えば、退職金の算出方法には「成果報酬型」や「ポイント制退職金制度」などがあります。支給方法には「退職一時金制度」と「企業年金制度」があり、各企業によってさまざまです。

    また、退職金制度の導入の有無も企業ごとに異なり、企業規模が大きいほど採用率が高いという以下のような調査結果が報告されています。

    企業規模 退職金制度の採用率
    1,000人以上 90.1%
    300人〜999人 88.8%
    100人〜299人 84.7%
    30人〜99人 70.1%

    退職金は従業員の通常の給与または賞与に加えて別途積み立てが必要となるため、上記の調査結果のとおり、導入できる企業は規模が大きく経営が安定している傾向があります。

    退職金制度が福利厚生に含まれているかどうかも、企業を判断する材料の一つとなるでしょう。

    退職金の相場や平均額とは?

    退職金の相場や平均額とは?

    法律ではなく、企業の就業規則によって定められる退職金ですが、その相場はいくらぐらいなのでしょうか。

    厚生労働省が発表している2023年『就労条件総合調査 結果の概況』によると、大学・大学院卒で管理・事務・技術職を担う人が、勤続20年以上で定年退職を迎えた場合の退職金平均額は「1,896万円」でした。

    ただし、実際には退職事由、企業規模、勤続年数など、さまざまな要因によって退職金の相場は変わります。退職金額に影響する要因ごとに、詳細を見ていきましょう。

    大企業と中小企業の退職金相場・平均額

    企業規模ごとに退職金の相場を見ていきましょう。

    以下の表は、厚生労働省が発表している2023年『就労条件総合調査 結果の概況』から、勤続年数20年以上かつ45歳以上の退職者における退職金平均額を、企業規模ごとに比較したものです。

    従業員数退職金平均額
     大学・大学院卒
    (管理・事務・技術職)
    高校卒
    (管理・事務・技術職)
    1,000人
    以上
    2,007 1,899
    300~
    999人
    1,618 1,232
    100~
    299人
    1,295 985
    30~
    99人
    1,162 731
    • 単位:万円
    • 退職一時金制度のみを採用する企業が対象

    傾向としては、企業規模が大きくなるほど退職金の平均額も上がっていることが分かります。

    業種別の退職金相場・平均額

    業種による退職金額の傾向を見てみましょう。

    以下の表は、先述の出典『就労条件総合調査 結果の概要』より、従業員1,000人以上の企業(介護企業は100人以上)を対象に、2021年・2023年に中央労働委員会が実施した賃金事情等総合調査の結果です。

    調査結果から、大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)・定年時・会社都合退職の退職金平均額を業種別にまとめています。

    業種大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)の
    退職金平均額(定年時・会社都合退職)
    2021年2023年
    繊維 5,659 5,878
    化学 2,070 2,231
    石油 2,606 4,457
    機械 2,173 2,021
    電気機器 1,974 1,884
    車輌・自動車 2,631 データなし
    建設 2,564 2,436
    銀行・保険 4,529 4,529
    私鉄・バス 1,477 3,381
    海運・倉庫 2,440 2,562
    商事 2,852 データなし
    新聞・放送 2,643 3,004
    ホテル・旅行 データなし 2,202
    • 単位:万円
    • 退職一時金制度のある企業が対象

    この調査では調査対象が固定されており、回答が得られた企業の情報のみを単純集計しているため、ばらつきが大きくなっています。業種ごとの退職金事情については、参考程度にとどめておくと良いでしょう。

    勤続年数別の退職金相場・平均額

    勤続年数でも、退職金額に違いが出てきます。従業員1,000人以上の企業(介護企業は100人以上)を対象に、2023年に中央労働委員会が実施した「賃金事情等総合調査の結果」から、大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)の退職金平均額を勤続年数ごとに並べると、以下のようになります。

     
    勤続年数大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)の
    退職金平均額
    自己都合
    退職
    会社都合
    退職
    勤続3年(25歳) 34 69
    勤続5年(27歳) 63 121
    勤続10年(32歳) 182 305
    勤続15年(37歳) 402 585
    勤続20年(42歳) 761 1,021
    勤続25年(47歳) 1,186 1,487
    勤続30年(52歳) 1,771 2,054
    勤続35年(57歳) 2,303 2,359
    勤続38年(60歳) 2,380 2,650
    定年 データなし 2,858
    • 単位:万円
    • 退職一時金制度のある企業が対象

    表より、勤続年数が増えるほど、退職金額も増えていく傾向にあることが分かります。また、自己都合退職と会社都合退職の金額差は、勤続年数が増えると若干縮小する傾向にあります。

    退職金の種類と計算方法

    退職金の種類は主に以下の4つの種類があります。

    • 退職一時金制度
    • 確定給付企業年金(DB)
    • 企業型確定拠出年金(DC)
    • 退職金共済

    それぞれの退職金について詳しく見ていきましょう。

    退職一時金制度

    退職一時金
    制度
    概要
    支給方法
    • 退職一時金
    計算方法 例)退職時の基本給×勤続年数など
    • 企業ごとに計算方法が異なる
    算定要因
    • 勤続年数
    • 役職
    • 基本給
    • 退職事由(定年退職、自己都合など)
    対象者 例)勤続年数3年以上など
    • 企業ごとに定め方が異なる

    退職一時金制度とは、企業ごとに定められた一時金を退職時に一括で受給する退職金制度のことです。退職金は企業で積み立てられた内部留保または外部機関での積立から従業員へ支払われます。

    退職一時金制度は退職金の一定額の保全措置が努力義務とされているため、企業が計画的に資金を積み立てられていない場合、十分な金額が支払われない可能性があるので注意が必要です。

    ただし、企業の内部留保に不足が生じたとしても、従業員に対する退職金の支払い義務を免れるわけではありません。

    確定給付企業年金(DB)

    確定給付年金
    (DB)
    概要
    支給方法
    • 退職一時金
    • 退職年金
    • 退職一時金・年金の併用
    • 企業ごとの規約により異なる
    計算方法
    • 加入者期間別定額方式や退職時給与比例方式など、制度ごとに異なる
    算定要因
    • 企業年金規約に定める算定方式による
    対象者
    • 厚生年金保険の被保険者(「勤続3年以上」など規約で一定の資格を定められる)

    確定給付企業年金(DB)とは、給付額があらかじめ約束されている退職金制度のことです。「規約型」と「基金型」の2種類があります。

    規約型では企業が信託銀行・生命保険会社などと契約を結び、これらの金融機関が年金資産を管理・運用して年金給付を行います。基金型では企業年金基金を設立し、基金が年金資産を管理・運用して年金給付を行います。

    確定給付企業年金(DB)は最も多く採用されている退職金制度です。退職金を「一時金」だけではなく「年金」で受け取ることも可能で、退職所得控除や公的年金等控除の対象になるメリットがあります。

    また、運用により退職時の給付額に満たない場合でも、企業が不足額を補填(ほてん)するので安心です。

    確定拠出年金(DC)

    確定拠出年金
    (DC)
    概要
    支給方法
    • 退職一時金
    • 退職年金
    • 退職一時金・年金の併用
    • 企業ごとに条件が異なる
    計算方法 掛け金×納付月数+運用結果
    • 掛け金は企業ごとに異なる
    算定要因
    • 掛け金の額
    • 勤続年数
    • 運用方法
    対象者 例)勤続年数3年以上など
    • 企業ごとに定められ方が異なる

    確定拠出年金(DC)とは、企業が毎月拠出する掛け金を従業員自身で運用する退職金制度のことです。運用結果により給付額が異なるため、あらかじめ退職金額は確定していません。

    運用した年金資産は、原則60歳以降に「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」で受け取ることができ、退職所得控除や公的年金等控除の対象になるメリットがあります。また、運用益が非課税であることもメリットの一つです。

    しかし、運用による価格変動リスクを従業員本人が負うため、運用に関する知識を身に付ける必要があります。

    退職金共済

    退職金共済 概要
    ※  中退共の場合
    支給方法
    • 退職一時金
    • ※分割払い(5年間・10年間)
    • ※併用払い
    • 条件を満たす場合は可能
    計算方法
    • 基本退職金+付加退職金
    算定要因
    • 掛け金の額
    • 勤続年数
    対象者 従業員は原則として全員加入だが、短時間労働者などは加入させなくてもよい

    退職金共済制度とは、企業が外部の共済機関に掛け金を積み立て、従業員の退職時に共済機関から直接退職金が支払われる制度のことです。代表的なものに、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する中小企業退職金共済制度があります。

    企業が毎月の掛け金を納付することにより、従業員は退職時に共済機関から退職金を受け取ることができます。掛け金が外部に積み立てられているため、企業が倒産したとしても、従業員は退職金を受け取ることが可能です。

    特に、中小企業向けの「中小企業退職金共済制度」は、国から掛け金の一部を助成してもらえるなどのサポートを受けられるメリットがあるため、多くの企業が採用しています。

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    退職金の仕組み

    退職金の制度は、大きく分けると「退職一時金制度」と「企業年金制度」の2種類です。そのほかに「前払い制度」を導入する企業もあります。

    「退職一時金制度」とは

    退職一時金制度とは、退職時に退職金が一括して、会社から支払われる制度を指します。退職金規定に沿って支払われ、企業には法的な支払い義務が発生しますが、財政状況によっては支払いが困難になるリスクもあります。

    また、退職金規定は一定の条件下で変更される可能性があります。退職一時金制度から、確定給付企業年金などの制度へ移行する企業もあります。

    「企業年金制度」とは

    企業年金制度とは、企業が退職後の従業員の生活を保障するために、公的年金に上乗せして支給する私的年金のことです。

    一般的に、厚生年金が年金の「2階部分」であるのに対して、私的年金(企業年金)は「3階部分」と称されます。

    企業年金制度は大きく以下の4種類に分けられます。

    • 確定給付企業年金(DB)
    • 確定拠出年金(DC・401k)
    • 厚生年金基金
    • 中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度

    企業年金は「年金」と「一時金」の2つの受給方法があり、従業員はどちらかの方法を選択できます。しかし、企業年金制度の種類や企業規定により、受け取れる条件が異なるので注意が必要です。

    一時金として受給する場合は退職所得控除、年金として受給する場合は公的年金等控除が適用され、どちらの受給方法でも税制優遇を受けることができます。

    「前払い制度」とは

    退職金前払い制度とは、本来であれば退職時に支給する退職金を、従業員の在職期間中に毎月の給与や賞与に上乗せして分割支給する制度です。

    前払いされた退職金は給与所得として扱われるため、通常の退職金制度とは税制上の取り扱いが異なります。

    退職金がない会社もある

    退職金は法律で定められた制度ではなく、会社ごとに規則が設けられている制度です。そのため、原則的に就業規則で規定がなければ、会社は退職金を支払わなくても違法にはなりません。

    退職金は、長年企業に勤めた功労をねぎらう意味で支給される給付制度であり、定年退職した社員がもらうイメージが強いかもしれません。しかし、若いうちに会社を退社した場合でも退職金が出ることもあります。

    ただし「退職金を受け取れるかどうか」「いくら支払われるのか」は会社の就業規則に記載されている内容によって変わってきます。

    退職金額は自己都合退職か会社都合退職で変わる

    退職金の給付額は自己都合による退職か会社都合による退職かで変わります。

    退職事由別の平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上)

    退職事由退職金平均額
      高校卒
    (現業職)
    高校卒
    (管理・事務・技術職)
    大学・大学院卒
    (管理・事務・技術職)
    定年退職 1,183 1,682 1,896
    会社都合退職 737 1,385 1,738
    自己都合退職 921 1,280 1,441
    早期優遇退職 2,146 2,432 2,266

    上記は、退職金(一時金・年金)の平均給付額をまとめたものです。すべての学歴において、自己都合による退職の場合が最も退職金の給付額が少ないことが分かります。

    そのため、転職など自己都合による退職の場合、会社都合による退職と比べると退職金の給付額が少なくなってしまいます。

    また、受給条件が「勤続年数3年以上」のような就業規則が設けられている場合は、条件を満たさずに退職金が支給されないこともあります。

    転職や退職を考えている場合は、就業規則の内容を必ず確認しましょう。

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    退職金はいつもらえる?

    退職金がもらえる時期は、企業の就業規則に基づいて決まります。

    一般的には、退職後1カ月から2カ月程度で退職金が給付されるケースが多いようです。

    まずは、自社の就業規則で退職金の支払日を確認しましょう。就業規則に退職金に関する規定がない、または退職金の支払日が明記されていない場合は、人事・総務担当者に相談をしてみてください。

    自社の退職金制度を調べる方法はある?

    自社の退職金制度を調べる方法は以下のようなものがあります。

    • 自社の就業規則を確認
    • 自身の給与明細を確認
    • 人事・総務担当者に確認

    まずは、自社の就業規則などに記載されている退職金規定を確認することです。退職金規定には、退職金の給付金額や支払日などが記載されています。

    退職金規定は企業の経営状況や社会情勢により、内容が変更されることもあるので注意が必要です。入社時から退職金規定の内容変更が行われていないか、定期的に確認しましょう。

    また、自身の給与明細を確認することで自社の退職金制度を調べられることがあります。従業員負担がある退職金制度を導入している企業の場合は、給与明細に「企業年金掛金」「退職金掛金」「確定給付掛金」などの欄が設けられている可能性があります。

    それでも、自社の退職金制度を調べられない場合は、人事・総務担当者に確認をしてみましょう。

    退職金制度にもトレンドがある?

    退職金制度は、勤続年数に比例する「年功型」と呼ばれる算出方法から、会社に貢献した実績によって算出する「成果報酬型」を取り入れるように変わってきています。

    また、「ポイント制退職金制度」や「別テーブル制退職金制度」という方法を導入する会社も出てきました。それぞれの制度について、どのような仕組みなのかを解説します。

    成果報酬型

    成果報酬型とは、将来の退職金を確定せず、その時の役職や職能等級によって会社側が掛け金を設定し、毎月積み立てていく制度です。

    職能等級とは、個人の肩書にとらわれず、個人の価値観や能力・実績に応じて変化する等級です。つまり、単に長く会社にいれば多くの退職金がもらえるわけではなく、個人の成果も評価に加わります。

    成果報酬型のメリットは、長年勤めずに退職をしても自分が会社に貢献していれば、それ相応の退職金をもらえる可能性があることです。

    デメリットとしては、長く会社に勤めていても実績がなければ、もらえる退職金の金額が少なくなってしまうことが挙げられます。

    ポイント制退職金制度

    成果報酬型の一つとして、「ポイント制退職金制度」という方法があります。

    これは勤続年数・職能等級・役職など会社が定める要素にポイントを設定し、ポイント数に応じて退職金が算出される制度です。ポイント制退職金制度は企業への貢献面を見る成果主義に加え、勤続年数を評価する面も見られます。

    ポイント制退職金制度のメリットとしては、実績と勤続年数の両方の評価なので、どちらかが優れた評価ならばある程度の退職金が保証されるところです。

    そのほか最近では、企業年金の「企業型確定拠出年金制度(401k)」の導入が年々増加しています。将来の給付額がおおよそ決まっている「確定給付年金」などに対し、「企業型確定拠出年金制度」は、企業が掛金を拠出し、それを加入者(従業員)が運用し、運用成果に応じた給付を受ける制度です。

    別テーブル制退職金制度

    別テーブル制退職金制度は、基本給とは独立した退職金額のテーブルを設定する方式です。給与制度とは切り離し、勤続年数に応じた基準額と役職・等級ごとの係数を組み合わせて退職金を算出します。

    この制度の主なメリットは、基本給改定の影響を受けにくく、将来の退職金コストの予測が比較的容易である点です。一方、評価の対象が勤続年数と退職時の役職や等級に限定されるため、在職期間全体の貢献度が反映されにくいといったデメリットもあります。

    転職しても利用できる退職金・年金制度

    転職活動が一般的になった昨今、転職先でも利用できる退職金制度や年金制度が整備され始めています。

    中小企業退職金共済制度・特定業種退職金共済制度・特定退職金共済制度

    転職前・転職後の企業がどちらも「中小企業退職金共済制度」に加入している場合、退職金を引き継ぐことが可能です。

    同種の制度として、建設業・清酒製造業・林業向けの「特定業種退職金共済制度」、市町村・商工会議所の委託を受けて保険会社が運営する「特定退職金共済制度」があり、それらとの間でも引き継ぎができます。

    ただし、引き継ぎには条件があるため、人事担当者などに事前に確認しておきましょう。

    企業型確定拠出年金(DC)

    転職先にも「企業型確定拠出年金(DC)」の制度がある場合、転職前の企業型確定拠出年金(DC)を移動する手続き(移換)が可能です。

    転職先に企業型確定拠出年金(DC)の制度がない場合は、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の口座を開き、そこに企業型確定拠出年金(DC)の資産を移換できます。場合によっては、転職先の「確定給付企業年金(DB)」への移換も可能です。

    確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金

    「確定給付企業年金(DB)」のある企業から「企業型確定拠出年金(DC)」か「厚生年金基金」のある企業に転職する、または「厚生年金基金」のある企業から「企業型確定拠出年金(DC)」か「確定給付企業年金(DB)」のある企業に転職する際、転職前の年金制度で支給される脱退一時金を、転職先の年金制度に移換できる場合があります。

    転職先企業の制度に移換できない場合も、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」への移換が可能です。

    早めに転職して年収を上げたほうが生涯賃金が上がることも

    退職金は生涯の中でも特に大きな収入です。「今の時点で辞めると退職金が少なくなるかもしれない」という思いから、転職に踏み出せない人もいるでしょう。

    しかし、長い目で見ると、早めに転職して年収を上げたほうが、結果的に生涯賃金が上がる場合もあるのです。

    以下のケースでは、現職で働き続けた場合の生涯賃金よりも、転職して年収が上がった場合の生涯賃金のほうが高くなっています。

    [現職(平均年収400万円)で40年働き続けた場合]
    400万円×40年+退職金2,000万円=1億8,000万円

    [勤続15年で転職し、平均年収が600万円になった場合]
    400万円×15年+600万円×25年+退職金1,000万円=2億2,000万円

    • 分かりやすさのため、転職による空白期間や賞与の減少、税制などは考慮していません

    転職する時期、転職先での年収、退職金の規定など、さまざまな要因で生涯賃金は変わります。いくつかの条件で概算してみると、「転職すべきか」「いつ転職するのが良いか」が明確になるでしょう。

    もちろん、収入以外にも転職のメリット・デメリットはあるため、判断基準の一つとしてください。

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    受け取った退職金には税金がかかる?

    退職金のなかでも、退職一時金はまとまった金額になりますが、税制上は税負担が軽減されるような配慮がされています。その配慮の一つが「退職所得控除」です。

    勤続年数に応じて一定額が所得から差し引かれるため、課税対象となる金額が大きく減少します。また、退職一時金は給与などの他の所得とは分けて計算される「分離課税」の対象となるため、税率が高くなりすぎない仕組みになっています。

    • 確定拠出年金などの場合、毎月の掛け金が所得控除の対象となり、所得税、住民税が軽減されることがあります。ただし、前払い制度の退職金は、毎月の給与と同様に所得税が課せられ、社会保険料も負担することになります。

    退職所得控除を受けるには?

    退職所得控除とは、退職所得の税額の計算において勤続年数に応じて一定の金額が給付額から差し引ける制度です。

    退職所得控除を受けるためには、所得税法第203条1項各号に定められている「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する必要があります。

    書類を提出すれば、勤務先で手続きをしてもらえますが、万が一「退職所得の受給に関する申告書」を提出し忘れた場合は確定申告をして退職所得控除を受けましょう。

    控除額の基本計算方法

    勤続20年以下の人は
    『40万円×勤続年数』

    勤続20年超の人は
    『800万円+70万円×(勤続年数-20年)』

    そして退職金から控除額を引いて2分の1をした金額が課税対象になります。

    例えば、勤続30年で3,000万円の退職金をもらう場合は?

    会社側に申請を行うと退職金の控除額は
    『800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円』
    つまり、退職金は1,500万円までは税金がかかりません。
    また、課税対象になる金額は
    (3,000万円-1,500万円)×1/2=750万円となります。

    更に手取り額を計算すると

    源泉徴収税額は(750万円×税率23%-控除額63.6万円)×復興特別所得税102.1%=111万1,869円となります。

    更に住民税として750万円×住民税率10%=75万円

    そのため、退職金手取り額は3,000万円-111万1,869円-75万円=2,813万8,131円となります。

    退職所得控除の際の注意点

    退職所得の受給に関する申告書を提出しない場合は、退職所得控除を受けることができません。

    そのため、受給した退職手当などのすべてが課税対象になり、その金額に20.42%を掛けた所得税(復興特別所得税を含む)が源泉徴収されます。

    つまり、先述の例で計算すると、3,000万円×所得税20.42%=612.6万円が源泉徴収され、退職金の手取り額は2,387.4万円となります。退職所得控除を受ける場合と比較して、400万円以上も手取り額が減少してしまうことになるので注意しましょう。

    退職金の受け取りで確定申告は必要?

    退職金を受け取る際の確定申告の必要性は、受け取り方法によって異なります。一時金として一括で受け取る場合と年金として分割で受け取る場合では、税制上の取り扱いや手続きが変わるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

    退職金を一時金で受け取る場合

    退職金を一時金として一括で受け取る場合、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、原則として確定申告は不要です。この申告書を提出すると退職所得控除が適用され、適正な税額で源泉徴収が行われます。

    ただし、申告書を提出しなかった場合は、退職金の20.42%が一律で源泉徴収されるため、確定申告による還付手続きが必要となります。また、医療費控除やふるさと納税などの適用を受けるために確定申告をする場合は、同時に退職金の申告も必要です。

    退職金を年金で受け取る場合

    退職金を年金形式で受け取る場合、税法上は「公的年金等に係る雑所得」として扱われます。これは公的年金(国民年金・厚生年金)と同じ区分であり、他の所得と合算して総合課税の対象となります。

    雑所得の金額は、受け取る退職金の年金と公的年金の合計額から「公的年金等控除額」を差し引いて計算されます。この控除により、65歳未満で年間60万円以下、65歳以上で年間110万円以下の年金収入であれば税金はかかりません。

    確定申告は、公的年金等収入の合計が年間400万円を超える場合や、公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円を超える場合に必要となります。

    公的年金と退職金の年金は受け取り時にそれぞれ源泉徴収されますが、これはあくまで概算であり、各種控除が考慮されていないため、最終的な税額とは異なる場合があります。

    そのため、申告不要のケースでも確定申告によって各種控除を適用し、払い過ぎた税金の還付を受けられる可能性があります。

    まとめ

    退職金は企業ごとに定められている制度であり、退職金規定により給付額が決まります。自社がどの退職金制度を採用しているかを確認し、勤務年数や実績が加味されるのかなどを把握しておきましょう。

    なかにはポイント制退職金制度や確定拠出年金制度のように、退職金の額が個人では算出しにくいものもあります。

    退職金で気になることがあれば、総務や人事に質問をして解決しておきましょう。もし回答を避けられてしまうようなら、労働基準監督署などに相談するのも一つの手段です。

    退職金は、転職をする時や、退職して新しい生活をスタートする時の大切な資金源になります。退職金の有無や金額はどのくらいかを知っておくことで、安心して転職活動や今後の計画を立てられるので、退職を検討する前にしっかり調べておきましょう。

    もし、現職での退職金を理由に転職を迷っている場合は、転職の有無により生涯賃金がどれくらい変わるか、数パターン概算したうえで判断するのがおすすめです。

    監修者

    松田 聡子

    松田 聡子

    ファイナンシャルプランナー
    行群馬FP事務所 代表

    金融系ソフトウエア開発、国内生保法人営業を経て2009年に独立系FPとして開業。法人・個人へのFP相談業務のほか、企業型確定拠出年金の導入企業への研修講師、FP受験講座の講師業務などを幅広く経験。

    現在は金融商品を販売しないFPとして中立な立場での相談活動のほか、中小企業への確定拠出年金を中心とした退職金制度導入支援や、大手金融メディアなどで金融記事の執筆・監修業務も行う。

    マイナビ転職 編集部

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